父親が私につけた名前は不倫していた女性と同じ名前だった

あなたならどのように感じるだろうか？
　

「名前の由来？それはね・・・・父さんがつけた名前なんだけどね・・・・言いにくんだけど、父さんが昔浮気していた相手と、ね。同じ名前なの・・・・」もし、あなたの名前の由来がこのような事実だったらどう思いますか？父親に対して「今すぐ視界から消えろ、このクソ野郎」と怒り狂うだろうか？それとも、その事実を知っておきながら、娘に別の名前を付けなくちゃ！と、父親と戦わなかった母親を軽蔑するだろうか？？私は「えっっっ、、、マジでか。。。。うっ、うん、うん、奴（父親）ならやりそうなことだなぁぁ〜〜。うん、わかったよ」とはじめは驚き、秒後に納得するだろう。いや、納得するも何も、どうでもいいことだなと関心が無くなるだろう。　

　これは全て私の名前の由来を知ったときの実話である。いやぁ、なんて懐かしい。久しぶりに思い出したなぁ〜。この話をすると１００%相手は苦笑い、もしくは絶句して黙ってしまう。当事者である私がヘラヘラと話すから、余計に不気味なのか？触れてはいけないと思って別の話題を振る人が多い。なぜ私は名前の由来が父親の浮気相手の名前から来ているにも関わらず、特にショックも受けずにヘラヘラしたのだろうか、順を追って話していこうと思う。

　なお私がこのnoteで活動している名前は「院子（いんこ）」である。もちろんこれは本名ではなくペンネームだ。本名での私の名前は、漢字ではなく平仮名で表記されたものである。このペンネームを使った場合だと「いんこ」という名前になる。以下、私の名前を仮に「いんこ」として、名前の由来を説明する。

名前の由来を知った背景
　

　あれは私が大人に対して冷めた目で見ていた中学１年生のころ。ゆとり教育が本格的にスタートし、土曜日の授業が無くなり、休みが増えて喜んでいた１３歳だった私。総合学習という授業の中で、「自分史」を１年かけて作ることになった。「自分史」とは、いわゆる生まれてから１３歳当時までの私の歴史である。自分が覚えている範囲で印象に残っている出来事や、家族や自分と関わってきた人々にインタビューを実施し、詳細な「私の歴史年表」を作るという授業だった。その中で当時の科目担当教師から「親から自分の名前の由来を聞いてくること」という宿題が出た（こんなことで１年もかける必要があるのか？？と当時も現在も疑問に思う私）。先ほども述べたが、私の名前は漢字で表記せず、平仮名で表記される名前だ。

「いんこ」

　なんとも簡単な名前。周りのクラスメイトは「美紀」「夏樹」「由美子」など、漢字がついていた。それがとても羨ましかった。「見た目がカッコいいな！」「漢字の意味を通して表現される友達」が羨ましかった。私なんて、平仮名の名前でなんとも味気ない。これが漢字で表現されていたら、まだ良かったなと１３歳なりに思っていた。たま〜に、自分の名前を漢字で表現するとしたらどんな漢字がいいか、当て字にでもするか・・・と1人で遊んでいたことがあったな〜〜。
そんなことはどうでもよくて、そう！そう！名前の由来！教師から出た宿題をさっそく母に聞いてみた。すると母は何だか困ったような顔をして、重い口を開いた。そのとき母が言ったことが冒頭の言葉である。

【母】「名前の由来？それはね・・・・父さんがつけた名前なんだけどね・・・・言いにくんだけど、父さんが昔浮気していた相手と同じ名前なの・・・・」

　そして、その言葉を聞いた私の反応は次の通り。

【いんこ】「えっっっ、、、マジでか。。。。うっ、うん、うん、奴（父親）ならやりそうなことだなぁぁ〜〜。うん、わかったよ」

　我ながら泣きもせず、意外に冷静に受け止めていたなと思う。母の言葉を聞いた後は、「宿題が１つ終わったぜ！ラッキー！！牛乳とポテチを食べなら、録画していた犬夜叉でもみ〜よぉおっと！」とウキウキだったから。頭の中はアニメと炭水化物を摂取することでいっぱいだった１３歳。そりゃ〜、太るよ（苦笑）

　話を戻そう。母が衝撃？の告白をした後、静かにこう続けた。

【母】：「やー（沖縄の言葉で『あなた』）、覚えているねぇ？５歳ぐらいの頃に女の人が突然家に来て、その後に父さんと母さんが激しく喧嘩したこと？」

　私の脳内が一気にフラッシュバック。

【いんこ】：「あー、覚えているよぉ。なんか、女の人が急に来て、泣き叫んでいたっけ！自分、そのとき机の上でチャゲアス（CHAGE&ASKA）ごっこしていたら、急に母さんが女の人に突き飛ばされて、自分のところに倒れてきて、下敷きになったよね（笑）びっくりして、泣きながら、兄ちゃんの部屋に逃げたよ」

【母】：「そのときの女の人ね、父さんがやー（あなた）が生まれるぐらいに浮気していた人だったんだよ。母さん、娘と浮気相手の人の名前が同じ事実を知って、あのハゲ親父を問い詰めたら、浮気相手の人からとった名前だったことがわかったのよ。唯一違うところは、相手の女性は漢字で表現されていること。もう本当にこの男を殺したい気持ちになったのよ。それでハゲ親父と口論していたら、急に女の人がタックルするもんだからびっくりよ。ごめんね、嫌な思いさせてしまって」

【いんこ】：「そうだったんだ。別にいいよ。昔のことだし。奴（父親）ならやりそうなことだから、いちいち気にすることもないし」

【母】：「本当にごめんね。母さんは別の名前にしたかったんだけど。ほら、上のお兄ちゃん、2人ともクソ親父が名前を勝手につけていたから、今度こそ、娘の名前は私がつける！！と決心していたのに、クソ親父とその親族の圧力がすごくて。必死に抵抗したんだけど、気がついたらクソ親父が『いんこ』って名前で役所に勝手に出して、しばらくショックだったんだよ。」

はいっ、回想おわり。

　そういうことで、わたくし、いんこ、自分の名前の由来を知ったのでした。

チャンチャン♫

（↑自分の名前の意味も知らずに無邪気に兄のクローゼットの中で遊ぶ０歳の私）
　

　まぁ、おそらく多くの人にとって自分の名前の由来が、父親が浮気していた女性と同じ名前をつけるなんて考えられないと思う。きっと私も奴（父親）の数々の奇行を経験してなかったら、そのように感じていたと思う。
　私は法的にも、世間的にも父親と呼ばれる奴に対しての態度は、人生で初めて出会った大人で、家にいる「赤の他人」だと思っている。おそらく１１歳ぐらいから、そう思い始めた。そのおかげでずいぶん気が楽になったことを覚えている。
　奴について思い出すことは、とにかく「こいつ本当に物事を考えているのか？馬鹿なのか？？」と思うことばかりだ。

例えば・・・・
○初めて会った人に頼まれて連帯保証人になる（結構な数の保証人になったらし　い）
○浮気相手にお金を援助するために、兄たちがコツコツと働いて貯めたお金を盗む（あっ、私も盗まれたことがあったな）
○飲酒運転で警察のお世話になったことが私が知る限り３回
○動物園へ遊びに行った時に、急に消えて浮気相手とデートしていた（そして私と母と鉢合わせ）
○私が７歳の頃、運動会の帰りに私と母を車に残して（約５時間）、会社の同僚と野球をしていた
○祖母（奴の母親）からお金を盗み、それを母のせいにした
○１２歳の頃、私の名義で勝手に携帯電話を購入していた
○私がお風呂に入っていると、いきなり扉を開けて水をかけて、ケラケラ笑う

その他、警察沙汰の事件も多数。まぁ、こんな人間と小さい頃から過ごしていると、奴が何をしてもそんなに驚かなくなった。だから、名前の由来を知った時も対して驚かなかった。きっと、奴のせいでズタズタにされる日々が続いたため、自分なりに奴との関係をひたすら考えた結果「初めて出会った他人」と結論づけたせいだと思う。本当にめちゃくちゃ泣いた。クラスメイトの父親と自分の父親の違いに苦しみ、何度もここから逃げ出したい、なんでこんな奴が父親なんだろうと思った。母にも何度も離婚して欲しいとお願いした。母も本当は離婚したいと言っていた。だけど、「自分にも３人の子どもを育てられる経済力がないから、離婚できないの。ごめんね」と涙を堪えて言った。自分の傷ついた心が、さらに傷つかないようにするためにどうすればいいのか、小さく人生経験も短い小学生の私なりに必死に考えた。その結論が、「生まれて初めて出会った赤の他人」だ。赤の他人に付けられた名前に支配されてたまるか！と強く思ったことも事実だ。唯一の救いは名前が漢字ではなく、平仮名であることだ。

漢字の意味に支配されない平仮名の名前
　

　私が漢字を習い始めた７歳の頃、1人のクラスメイトの女の子が「この漢字、『優希』、私の名前なんだ！」と自慢げに見せてくれた。私はなんだか羨ましくて、その日の夜、母に「私の名前は、漢字でどう書くの？」と聞いたことがある。すると母は「やー（あなた）の名前には漢字がないの。平仮名で『いんこ』。これが名前だよぉー」と教えてくれた。「えええええーーーーっ、漢字じゃないの？」と言うと母は「平仮名の名前は素敵なんだよ。漢字の名前だと、その漢字の意味に縛られる感じがするから。平仮名だったら、漢字の意味に縛られることなんてないんだよ。自由なんだからね！」と７歳の子どもには抽象的過ぎて、よくわからなかったことを覚えている。ただ、母はよく私に対して「平仮名の名前は自由に生きることができる、素敵な名前」と言っていた。ただ、年齢を重ね、今は何となくだけど、母に言われたことが少しだけ分かった気がする。何となくだけど、平仮名表記の名前で良かったなと思うことがある。それは以下の２つだ。

① 色んな私に変っっっ身！とぉーー！！
　大学院生として学会で研究を発表する時、海外の方々と研究活動する時、初めての方とおしゃべりする時、知り合いのお子さんと遊ぶ時、大学の各手続き関係で事務の方と揉める時、隣の部屋の住人（おっさん）に対して「夜中に爆音でAV見てんじゃねーよ。うるさくて寝れんわ、ボケ！」と苦情を言う時・・・・・・・・・・・・。私はそのときの状況に応じて、勝手に自分の中で「いんこ」という名前に当て字で様々な漢字を当てはめては、「自信たっぷりの私」や「売られた喧嘩は倍額で買ってやる私」などになっている。まぁ、大体が私に理不尽なことを押し付けてくる相手に対して、舐められないようにする時に漢字の意味を借りているんだけどね。おかげで、私自身も知らなかった私に出会えて、面白い。「未知なる私、ようこそ！」
平仮名表記の名前だからできる、漢字の意味の力を借りると言う荒技？？珍技？？？
　　
② 海外の友達にすぐに覚えてもらえる
　私は英語が好きで、今一生懸命勉強中だ。その一環としてSNS上で世界中の人とお喋りをしている。その時に私の名前が平仮名なので、日本語を勉強している方がすぐ覚えてくれる。また、①で述べたが普段漢字の意味を借りて色んな私に変身しているからか、当て字で色んな名前を表現することが上手い（うん、ここは自分を持って上手いと言っておこう）。そのため、様々な国籍・年齢・性別の方々から自分の名前を漢字で表現して欲しいと依頼を受けることがある。そのやりとりを通して、英語が勉強できるし、相手のことを知ることもできる。これこそ一石二鳥じゃないか！

平仮名表記の名前は私を自由にする
　

　以上が私の名前の由来である。このnoteを読んでいるあなたには不快な内容だっただろうか？面白いと思っただろうか？父親に対して、初めて出会った「赤の他人」として受け止めている私を変な奴だと思っているだろうか？受け止め方は人それぞれ。私の中では、意外に話のネタになることなので、そんなに深く受け止めていない。むしろ、漢字の意味を借りて色んな自分を表現できる平仮名表記の名前が気にいっているぐらいだ。これは「平仮名の名前は漢字の意味に左右されない、自由な名前」であることを教えてくれた母に感謝している。

平仮名の名前は、自由に私を表現できる素敵な名前だ！！

※もし私が人の親になったら、名前は漢字で表現したいと強く思ってなんか・・・いないよ・・・・・

たぶん、ねσ(^_^;)