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今さら聞けない情シス向け!クラウドの基本的な話

ビジネスの様々シーンで利用が進む「クラウド」。いまや情シスにとってもクラウドの知識を身につけることは不可欠。しかし、今さら聞けないことがある…という方に向け、クラウドに関する基本的なキーワードを中心にまとめました。
なお、このnoteは主に中堅・中小企業の新任情シスや兼任情シス向けの内容です。

1. 「クラウド」とはそもそも何か?

1-1 「クラウド」の意味とは?

「クラウド」とは、「クラウドコンピューティング(Cloud Computing)」を略した呼び方で、インターネットなどのネットワークを経由して、コンピュータ資源やサービスが提供される仕組みを指します。その定義については諸説ありますが、NIST(米国国立標準技術研究所)による下記の内容が有力視されています。

クラウドコンピューティングは、共用の構成可能なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きまたはサービスプロバイダとのやりとりで速やかに割当てられ提供されるものである。

『NIST によるクラウドコンピューティングの定義』IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)翻訳

クラウドの登場によって、インターネットに接続できる環境さえあれば、場所や端末を選ばずにサービスが利用できるようになりました。はじめはコンシューマ市場への普及が先行していましたが、2010年頃からは企業システムにも少しずつ導入が進みます、今では多くの企業が利用するようになりました。

1-2 なぜ、クラウドの普及が進んでいるのか?そのメリットを探る

いま、多くの企業にクラウドが普及していますが、その理由としては様々なメリットがあることが挙げられます。ここでは、どのようなメリットがあるのか、「システム上のメリット」と、「費用面でのメリット」の2つの観点に分けて、オンプレミスとクラウドを比較しながら見てみましょう。

<システム上のメリット>
自社内にサーバ等のIT資産を「所有しない」のがクラウドのメリットです。ここでは、機器を持たないことにより、情シスにとってどのようなメリットがあるのかまとめました。

■導入時
オンプレミス:サーバ等の機器の導入・設定、ソフトウェアのインストールが必要。システム利用開始までに時間が必要。
クラウド:サーバ等の機器が不要。導入時の設定、ソフトウェアのインストール等が不要。簡単な設定ですぐに使い始められるものもある。

■運用時
オンプレミス:機器の運用に担当者の時間・手間が必要、障害発生時の対応に時間がかかる。
クラウド:運用や障害対応をクラウド事業者に任せることができる。

■システムの拡張・縮小
オンプレミス:システム拡張の際には追加でハードウェアの導入や再設定が必要となる。導入時に自社に必要なサイジングを行わなければ、リソースに過不足が生じてしまう。また、追加したいハードウェアがすでに製造中止になっている場合や、追加したハードウェアの設定がうまくいかずに時間がかかる場合もある。
クラウド:契約を変更することで容易にリソースの増減が行える場合が多い。担当者にとっての負担は少ない。

<費用面でのメリット>
サーバ等をIT資産として「所有」するのではなく、サービスとして「利用」することで、ITは経費として計上されるようになるという費用上のメリットがありますが、そのほかにどのようなメリットがあるのか下記で整理しました。

■導入時
オンプレミス:サーバ等の機器導入のための多額の初期コストが必要となる。一度購入してしまえば費用は発生しないが、設置場所に関する費用、空調施設等も含め利用するための電気料金等が必要となる。
クラウド:サーバ等の機器を購入しなくてよい。初期に多額の費用をかけることなく、システム利用を開始できる。利用料金は、使った分だけ支払う従量課金型
※オンプレミスからクラウドに移行する際に、データ量や通信量によって必ずしもクラウドの方が低コストになるわけではない。

■運用時
オンプレミス:情シスの運用や障害対応に関する工数が発生。これは“見えないコスト”と呼ばれる。サポート料金内で障害対応などは可能だが、この情シスの業務に関するコストも考える必要がある。
クラウド:運用や障害対応に関する工数をあまりかけずに済む。ただし、クラウドを利用する際には、月額〜年額等でオンプレミスの際にはかからなかった利用料金が発生するので、複数年間の利用を想定してTCO(Total Cost of Ownership:導入から運用工数・廃棄など、あらゆる支出を総計する)を比較する必要がある。

■システムの拡張・縮小
オンプレミス:拡張の際には追加機器の購入・設定などの費用が発生する。
クラウド:契約を変更することで、拡張・縮小しやすく、その分の費用は変動する。

ITを「所有から利用」に変えるクラウドにより、数多くのメリットが得られることがわかります。特に、システムの入れ替えなどによる作業や費用に関する負担が大きい中小企業にとって、クラウドは適したものと言えるでしょう。

また変化が激しい現在、クラウド化することにより、場所やデバイスを問わずに便利なしくみが簡単に使えるようになる点もまた、大きなメリットといえるでしょう。

1-3 官公庁や銀行もクラウドを推進している

2018年、日本政府は政府情報システムを「コスト削減や柔軟なリソースの増減等の観点から、クラウドサービスの採用をデフォルト(第一候補)」とする考え方を示しました※。これは、「クラウド・バイ・デフォルト原則」と呼ばれ、官公庁が主な対象でしたが、企業などにもその影響があったものと考えられます。
※出典:2018.6.7『政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針』

また、大手金融機関でもクラウドサービス採用が報道されたことなども、クラウド普及にとって追い風となりました。さらに昨今のテレワーク環境の普及やDX推進などの機運も影響し、クラウド移行を優先・前提とする環境が徐々に広まってきました。

2. クラウドの種類

これまで「クラウド」とまとめて呼んできましたが、クラウドと言ってもすべて同じではありません。まずはその配置による分類について紹介します。

2-1 パブリック、プライベート、ハイブリッド、マルチ…クラウドの違い

■パブリック・クラウド
複数の企業やユーザがインターネットを通じて共用するものをパブリック・クラウドと呼びます。当初、クラウドコンピューティングとはこのパブリック・クラウドの仕組みを指していましたが、自社専用で利用する「プライベート・クラウド」の登場で呼び分けられるようになりました。

■プライベート・クラウド
自社で所有する環境に専用線などで接続して用いるのが、プライベート・クラウドです。クラウド・コンピューティングの仕組みを、自社専用で用いるための方法です。

ハイブリッド・クラウド
パブリック・クラウドとプライベート・クラウド、双方を組み合わせて用いているのが「ハイブリッド・クラウド」と呼ばれます。

■マルチ・クラウド
ハイブリッド・クラウドと似た言葉に、「マルチ・クラウド」があります。これは、異なる複数のパブリック・クラウドを組み合わせて利用することを指します。

2-2 IaaS、PaaS、SaaSって何?

また、クラウドをどのように用いるか、サービスモデルが異なります。例えば、アプリケーションのみをクラウドで利用したい場合、インフラまで利用したい場合…などがあります。ここでは、代表的なクラウドのサービスモデルを紹介します。

①SaaS(Software as a Service)
インターネットでアプリケーションのみを利用するという、代表的なクラウドサービスです。PCにアプリケーションを入れなくても、アプリケーションが持つ機能を利用できます。メール、Web会議、チャットツールなど数多くのビジネスツールが提供されています。
代表例としては、下記のサービスが挙げられます。
・Microsoft 365:Office製品やメールなど
・サイボウズ:Garoonやkintoneなど
・Google Workspace:Gmail、チャット、スケジュールなど
その他にも、ワークフロー製品(X-point cloudなど)、CRM/SFA(Salesforceなど)、Web会議サービス(Zoomなど)、など、様々なSaaSがあります。このnoteもSaaS型のブログサービスです。

<関連リンク>

②PaaS(Platform as a Service)
OSやミドルウェアなどはクラウド側でサービス利用し、アプリケーションを開発・実行するためのツールや環境などが利用できるサービスです。
代表例:
・Microsoft Azure
・Amazon Web Services(AWS)
・Google App Engine (GCP)
・App Cloud (Salesforce)
・Oracle Cloud Platform
・Heroku

③IaaS(Infrastructure as a Service)
システム開発、システム構築に必要となるインフラを借りるためのサービスです。そのために、サーバやストレージ、ネットワークなどの機能が提供されます。

おわりに

このnoteでは新任情シス向けに、クラウドの基本的なキーワードについて平易な言葉で解説しました。クラウドを理解し、さらなる活用促進やステップアップのためにご活用ください。

<クラウド関連リンク>

Microsoft 情報局
Microsoft 365 をはじめ、Microsoft 製品の導入検討中、運用中、活用推進したい企業の情シスに向け、役立つ情報を発信しています。

また、ソフトクリエイトは「情シスレスキュー隊」にて、情シスに役立つ様々な情報を発信しています。こちらもぜひご覧いただき、情シス業務にお役立てください。

※ハイブリッド・クラウド、マルチ・クラウド、IaaS図版はネットコマース社作成図を元に一部改編

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