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「泣く人の傍にただ居て六月尽」ほか自作俳句6句(『松の花』9月号「翠嶺集」掲載+α)

『松の花』9月号 同人「翠嶺集」掲載5句

2021年6月25日〆切分ですが、編集長の寛大さに甘えて7月になってから投句しました……。

昼寝せる鼾(いびき)と見たる悲劇かな
信長の暴虐を読む外は雹
(ひょう)
亡き夫(つま)を九十の夏に綴る人
落雷や命は道理外のもの
泣く人の傍にただ居て六月尽

信長の暴虐を読む外は雹(ひょう)→主宰している吉祥寺古典を読む会で、太田牛一『信長公記』を読みました。天正二年の正月、朝倉義景・浅井久政・浅井長政の首を並べて肴とした――そんな恐ろしい話を読んでいたとき、外には雹。偶然ながら、背筋のぞっとするような体験でした。

亡き夫(つま)を九十(くじゅう)の夏に綴る人→市川NHK学園で、エッセイ教室を担当しています。そこで、ほぼ90歳という参加者の方が、20年ほど前に亡くされた旦那さまとの思い出を綴ってくださいました。そのエピソード自体は約半世紀前のことだそうですが、今でもありありと甦ってくるとのこと。その楽しい日々の記憶がエッセイとして結晶化されたのは何よりのことでした。

泣く人の傍にただ居て六月尽→気のきいたことなど言えない、ただ隣にいることしかできない、というときってありますよね。こちらとしては非常にもどかしいけれど、傍にいるということ自体に意味があると信じて、時間を過ごしました。

翠嶺集に投句するも、掲載から漏れた句

救ひなき家族劇見て夏霞

シアターコクーンで上演された、ユージン・オニール作、フィリップ・ブリーン演出の「夜への長い旅路」を観劇しました。

モルヒネ中毒に冒されて常に精神が不安定な母メアリーに大竹しのぶ、アルコールに溺れ、父親の脛をかじって放蕩を繰り返す長男ジェイミーに大倉忠義、結核を患っている次男エドマンドに杉野遥亮、アイルランド系移民で、金銭に対して異常な執着を持つ俳優の父ジェイムズ・タイロンに池田成志、その一家に仕える女中キャスリンに土居志央梨。

このキャスト紹介を見るだけで、気分が重くなってくるような本作。家族とのつながりを痛切に求めながらも、傷付け合うしかなくなっている袋小路の家族の物語でした。

そんな息詰まる会話劇のなか、隣の女性が爆睡していたのを詠んだのが、掲載句の〈昼寝せる鼾と見たる悲劇かな〉です(笑)

さて、掲載句・非掲載句どちらでも、気に入った句などあればお聞かせいただけたら嬉しいです。

句会を始めます

2021年11月18日から、第1もしくは第3木曜日の午前中、三鷹駅前にて句会を始めます(以下、12/2・1/6・2/3・3/3・4/7・5/19……)。お気軽にご参加ください。


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