駆け出し百人一首(40)恋ひ死なん後も心の変はらずはこの世ならでも物や思はん(従二位為子)

恋(こ)ひ死(し)なん後(のち)も心(こころ)の変(か)はらずはこの世(よ)ならでも物(もの)や思(おも)はん

新続古今和歌集、恋二、1153番

あなたに逢いたいあまりの焦がれ死にをした後も、私の心が入れ替わらないなら、この世以外、つまり、あの世でも、私の悩みの日々は続くのだろうか。

If I cannot change myself even after my death from longing for you, I may think about you painfully in the other world.


詠んだ従二位為子は京極為教の娘で、藤原定家のひ孫に当たります。
女の人ですが、この歌は男の立場になって詠んだものだと見られます。垣間見なり、噂なりで、男がある女に惹かれるものの、手紙の返信をもらうこともままならず、逢瀬などまだまだ叶わなさそうな時期の歌だと捉えてください。
こういう時期の歌はとにかくテンションが高いです。顔もほぼ知らない相手に対し、とにかく情熱的な言葉で口説きます。


文法事項

恋ひ死なん後も:「ん」は後ろに体言が来ており、文中の連体形になるので、婉曲・仮定。
変はらずは:「ず」を打消の助動詞の未然形と取れば、その下の「は」に濁点を補い、未然形+ば(仮定条件)の形で解釈ができる。
この世ならでも:断定の助動詞「なり」が未然形であり、未然形+で。〜ないで。
物や思はん:係助詞「や」は推量の助動詞「ん」にかかる。疑問。


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