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ジャック・アマノの“アメリカNOW” 第6回 民主党と共和党、州知事のCOVID-19対策と大統領選挙

自己検疫7日目が終わろうとしている。

 ルール通りに真面目に隔離生活をしていると、テレビを見る時間が長くなる。これまで右対左、共和党対民主党、親トランプ対反トランプの戦いを楽しんできた。でも、それらのチャンネルを行ったり来たりするにもそろそろ飽きてきた。それでローカル局もあれこれ見始めたら、驚くほど身近な、狭いエリアの話ばかり。これがアメリカってことなんでしょう。

 今日の海外ネタは、ロシアがアメリカ兵にかけた懸賞金の話だけ。アフガニスタンとロシアだから、かなり遠い国が絡んでいるんだけど、テレビ局が取り上げているのは、アメリカ兵の安否がかかっているから。最終的に国内ネタだということ。

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MSNBCのコメンテイター。アートが壁にいっぱいの、広〜いリヴィングらしい部屋からリモート出演。この人、飼っている超大型犬のグレート・デイン二頭も時々画面に登場させる

 一番の話題は、今日もCOVID-19。当たり前だ、テキサス州で8,000人以上も新規感染が出たんだから。2日続けて州の新記録、と状況は深刻。それでも州知事はマスク着用を義務付けたら? という提案を拒んだ。なぜ、そこまで意地を張る?
 カリフォルニア州は6,000人近くの感染増。テキサスとは対照的に、即座に19の郡でレストラン、ワイナリー、動物園や博物館などを制限の対象に逆戻りさせると発表。収束が近づいているかに見えていたニュー・ヨーク州も、こんな他州の状況悪化を見て方向を修正、”正常化”を慎重に進めることとなった。ブロードウェイは今年いっぱい再開されないそうだ。

 テキサス州知事=共和党。カリフォルニアとニュー・ヨークの知事=民主党。知事の所属政党でウィルス対策、経済対策は真逆。

 ヨーロッパ最初のホット・スポットになったイタリアは、3月下旬が感染のピークだった。惨憺たる状況は4月下旬まで続いたけれど、5月に入って事態は改善、6月の新感染者はずっと少ないままとなって、月末の増加は1日200人以下におさまっていた。スペイン、ドイツ、フランスはイタリアよりやや遅い4月前半がピーク。それでも、5月半ばから感染増は緩まり、6月末には500人以下という日が続いていた。
 4月前半から5月後半まで新感染者の多い日が長く続いたイギリスでさえ、現状はアメリカに比べたら断然マシだ。アメリカとスペインの感染増は、初期には結構状況が似通っていた。ところが、スペインで5月後半から新しい感染が減少したのに対して、アメリカは数字が高止まり続け、最初に甚大な被害を受けたニュー・ヨーク州とその周辺の州を除いてウィルス押さえ込みに失敗した。大きな犠牲を払ったニュー・ヨークという貴重な先例に学ばず、最悪の状況から抜け出せていないうちからビジネス再開など、縛りを緩める州が多くあったからだ。アメリカ人が持ち前の楽観主義と私欲の強さを発揮、ビジネス再開に勤しんだ結果、6月の真ん中辺りから感染者が再び増加。そして、4月のピークを6月下旬になって超えてしまう事態を招いた。

XBig House 2のコピー

シカゴのローカル局のスポーツ・コメンテイターは、白を基調にした小さめのリヴィング・ルームからの出演

 それでも、まだ反省していない人たちがいる。
 フロリダ州知事は今日、「ビジネス再開の段階的措置を逆戻りさせることはない」と宣言していた。事態がもっと深刻化する心配はしてないんだろうか?
8月に予定している大統領候補を指名する共和党全国大会が吹き飛んじゃうこと恐れてるんだろうけど。
 緊急事態宣言が出てからも外出禁止令を出さなかったのを誇りにしているサウス・ダコタの州知事は、そこまでしても忠誠を示したかった大統領が地元のマウント・ラシュモアにやってきてくれることに感激したのか、そのイヴェントではソーシャル・ディスタンスを要請はしないことにした。アメリカは合衆国で、州内のことは州が仕切るルールだけれど、国の保険機関の出している指示を真っ向否定しちゃうんだから驚くしかない。
 フロリダ、サウス・ダコタ、どちらも知事は、お察しの通り共和党。

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フォックス・ニュースで香港の問題について語っていたコメンテイターは、窓から湖の見える部屋のコーナーから放送していた

 州ごとに色々あるなぁ……なんて思っていたら、トランプ大統領が今日、突如としてアンチ・マスクの方針を180度転換させた。フォックス・ビジネスというチャンネルで、「これまでもマスク、私はつけてましたよ。たくさんの人と至近距離で一緒にいる時にはね」な〜んてコメントを平然としていた。
 彼の臆面のない変わり身は、すでに何度も見てきている。さすがの大統領も、自分の置かれたポジションが危ういと感じたってことだろうか。でも、それって”時すでに遅し”かも。2、3日前にマイク・ペンス副大統領が人前でマスクをつけ出して、着用を呼びかけることまで始めた、あの時点で共和党の上層部、沈む船から逃げ出すシナリオに舵を切ったと見られるから。まだ選挙までは4ヶ月もあるので、情勢がトランプ優位に変わるケースも考えられるってんで、バッサリ切り捨てはいないものの、「マスクをしましょう」と支持者たちに呼びかける共和党議員が突如として続出したのは、”筋書き二本に対応せよ”とのお触れがあったからじゃないのかな。ウィルスの死者数は12万人を優に越えているから、家族や大切な友人を失った人たちの支持、主に高い年齢層の有権者たちの票が、このままだと消えてなくなる恐れが出てきた、と。共和党支持のフォックス・ニュースでは、「マスクをして感染拡大を防ぎましょう」というメッセージ・ヴィデオが番組の間に流され始めた。

 それにしても、ニュース番組に自宅から出演してるコメンテイターたち、みんな大きな家に住んでる。ニュー・ヨークやワシントンDCであの広さは凄いなぁ。賃貸か持ち家か、一戸建てがコンドミニアムかは知る由もないけど、DCの一戸建てなら、2ベッドルームとかの超小さいのでも軽々100万ドル(=およそ1億2,000万円)越えのはず。


以上  7月2日 第6回 終了 

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