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梅雨空に 高熱

ひと月弱遅れて 慌ただしくやって来た梅雨
乾き切った田畑を 続々とうるおし
濃い土の香が 立ち込めた
2年振りの発熱で 珍しく続いた予定をすべてふいにし
起き上がれないまま ぼうと流れる思考の波間を漂っていた

気が付けば20年を超えて 憧れていたバンド
久方振りに 画面越しのパフォーマンスを
力みなく観ていることに 狼狽えた
以前なら 思わず襟を正し正座をしていた場面
熱狂に 終焉がくるのかと
信じ難い気持ちで 見つめ

そして 9年踊ってきた踊りを
退く気持ちが 一段濃くなった 
昨年衣装を整理した 着る頻度も
週から年単位へと移り 手作りの風合いが 
触れられずに 褪せていく過程が
バレエ 牛深ハイヤ節 御神楽 ベリーダンス フラメンコ ラオス舞踊 ポップ
色々の機会や出会いがあり 踊ることで深まってきた
社交ダンスのシューズは まだ置いていない
運動は苦手だけれど 体を動かすことは好きで
ダンスは 何より楽しい
ここ3年は 移動先でひとり練習
仲間と踊る 時間も喜びもかけがえがない
時々教えながら 舞台に立って
あこがれの存在や 指導者を持てないまま 
今の踊りを続ける歓びを 見出しにくくなり 
着替えも 誰かの手を煩わせる部分があり
微細なことへの引っ掛かりを 鈍っていく感覚を
押し留められなくなってきて

あたらしい曲は 躰の隅々に染み渡るまで聴かずにおれなくて
仕事中 早々に切り上げた食事のあと
練習しに外へ出て 周囲とは踊ってきた年数が違い
数曲を並行して覚え 舞台に出ると
深い充足感に つつまれた
いつかセンターで踊りたいと 夢中だった
指導役を勧められたチャンスも 背を押した
ダンスのお蔭で 女性性を受けいれられ
身体で表現する喜びに出逢い 多くの人々に支えられた
気付きや感謝が尽きなかったからこそ 執着を外しにくいのかもしれない
彼のアーティストは 今も力強く世界を飛び回って 
飽くなき探求心 新たなチャレンジを続ける姿勢に
触発される またステージを観られるか

踊りは人生 ステップはやまぬ 
手を開き 耳を傾けさえすれば 
音は やって来る 
時空の変わり目で 一体となる

歳月を 解りやすい何かに置き換えたいのかもしれない
大抵のことは 別の形で結晶化されていることも
流れは 止められない
人もものも すべてはうつろいゆく
だからこそ儚く うつくしさを覚えることもあって
それは 誰かが願ってどうなるものではなく
掴めそうで さらりとすり抜ける
追うなんて 以ての外の

空いたスペースに 何が飛び込むか
うまれるものが あるのか否か 
怖れを解き放ち 見てみようぢゃないか

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛