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『みらいおにぎり』 お料理の本

棚の前を すっと通りすぎたのだが
なんとはなしに 白い表紙の一冊が気になり歩を戻して
タイトルにはおにぎりの文字 おむすびはご飯にもおやつにもなる
作者はガス会社のコマーシャルに出ている おにぎりの方という認識で
開いてすぐ面白さに引き込まれた 必要なとき必要な一冊に出逢う不思議

食事の用意に 楽しくかかるときももちろんあるが
ああ支度をせねばと 憂鬱になることもしばしばあって
毎日のことであり 多ければ三度やって来る食への興味が
何故高まらないかなと 未だ億劫になりがちなテーマである

アフロヘアな稲垣えみ子のおかげで 肩の力が抜けると同時に
希望の灯がともった 食へのハードルはずいぶん低くなり
3年程前から何でも天日に干し始め 野菜はさらに好ましくなり
鍋炊きごはんも復活し ずっと食べたく思っているぬか漬けを始めなきゃと
壇一雄や『美味しんぼ』 アマゾン料理人にも奮い立たされ
毎日の食事は 今日のあしたの未来の自分に直結する

お勝手の土間は家の中だけど むき出しの土だから草履を履いて
薪を燃やして竈でお米を炊いて 七輪の炭で魚を焼いた
食材を冷やすのは 氷屋さんの大きな氷
父母やきょうだい 住み込みのねえやん(お手伝いさん)に
どこからかやって来たおじさんも 一緒に食卓を囲む大所帯
佐藤愛子の『血脈』に出てくる 人間模様が重なって
大勢が揃いし食卓の豊かさ おおきな括りの中
誰も彼も ともにごはんを食べるうちに繋がっていく部分
多様な人生模様が繰り広げられた 佐藤家の賑やかな風景

タミさんの 困ったことがあったらとりあえず寝てしまう
全体に流れる 前向きなエネルギーに触れるだけで浄化が進むようで
興味を持ったことには いくらでも向き合っていられる新鮮な感覚を思う
寄り道していた市場で 飽かず眺めたかつお節削り
長くついて習った先生から そのかつお節を褒められたよろこびと
料理の楽しさに しあわせのかたまりのような気分だったことだろう
年数を経て 思わぬ形で叶う夢もある

   “昔の人たちは、自分の暮らす国の気候と文化と歴史の中で
    どんなときもしっかり食べて力強く生き抜く知恵をみがいている”

ものがあふれた国の「ほしいほしい病」 長く大事にする使い方への回帰
地元のものを食べることは 健康面でも栄養価でも
未来の限りある地球エネルギーを考えても 理に適っていて 

   “それぞれの地域の食材は、その地域に住む人たちの
     からだの状態をいい方向に調節するようにできている”

じぶんの畑から穫れたものなら 尚のこと
新鮮さやみずみずしい美味しさを 全身であじわいたい

外のごはんは買うごはんで 安くつくり長く販売し
おいしそうにみえるよう工夫してある 添加物も多く
まとめて一度にたくさんつくって トラックで運んだり
温め直して出したりと 新鮮さやオージャスは乏しくなって
家族のためにつくったごはんは 誰が作り何が入っているかがわかり
安心して食べられる いつの世にもどこの地でも
ほんとうのごちそうは家のごはん 飾らない普段のままを食べたくて
旅に出る 台所には家庭の色と味が滲み
壁や床まで親密な気配 すてきな気分を体感させてくれる場
美味しい記憶が出来上がっていく様に 魅せられている

仕事に追われ 買うことを自分に許すと
余計なごみを出すことになり 栄養面も気になってと
やはり忙しくても 自分の手でつくると気が楽だと落ち着く
就寝時間が押すようなときには 外の手も頼りつつ
身体をつくる食をより身近に捉え 真剣にたべようと気合を入れた

『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』
(稲垣えみ子・’17・マガジンハウス)
『アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所』
(太田哲雄・’18・講談社)ユニークな青年の、素晴らしい行動力。発見に満ち、思考を辿るようで面白い。環境と食の関わりを鮮やかに伝えてくれる。
『食べる。』(中村安希・’11・集英社)圧巻の一冊。おなじみエチオピアのインジェラやスリランカのサンボル、スーダンの水など。

『みらいおにぎり』(檜山タミ・’19・文藝春秋)

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛