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『真夜中のメロスたち』TRANS Kyushu RELAY

カヤックにラン バイク 夜を徹して走る九州横断250kmに及ぶリレー
勝海舟が率い坂本龍馬たちが駆けた道 苛酷に違いないこのレースは一体、
と頁をめくれば 驚くべき九州の姿と輝ける青春があった

巨大なシマを人力のみで渡っていた頃 曽ての行程を再現するTKRチーム
水のなかは常に気を配る環境 潜り獲り捌き 観て撮って記録して
漂うように見え 風や波 潮目を読み 陸と海の境界をゆく人

ひとりひとりの夜 森や港 町を遠く眺めるときの皮膚感覚
阿蘇の風変わりな地形 生きた火山を複数有する九州
みずからの表現と身体感覚 痺れるような焦燥
悶えた先に開ける歓喜 寄せては引き 唐突に昇り詰め
すべてのアートは言葉を超える 絵も踊りも ミュヂックも
ふうと浮かぶ至福に熱情 目と目が 振動がつたわり拡大していく
躰の奥底から喜びが満ちるとき 言葉に依らないものが行き交って

色々の局面でも絶えず選択を重ねてきた人 リスクはどこにも何にも
変化を生まないものはない 動き続ける人間のパワー
ふくらんでは砕ける水面を 一緒に進むような臨場感

肚への意識の向け方ひとつ 能の謡に鼓 伸びやかなイタリア民謡
声を出し 波動をつたえると 海もよろこぶ気がして
生命の源へのアクセス 大いなる胎動とつながり
ゆらめきも凪も すべてのうつくしい繰り返しと一つになってゆく

海辺で食べるおにぎりに卵焼き 塩気をふくむ風の旨み とんびが高くを舞う
会う人びとは心にすいと入り込み 温かな印象を残しゆく

緩急を味方に 深い呼吸に導かる生のあらたな頁
海は神秘のおおもと 受け入れうみ出す朗らな萌し
創造は自由への扉 歩みを止めぬ人の魂に触れてみよう
  
『真夜中のメロスたち』(編著:葉山耕司/撮影:浅川浩二、前田貴仁・’20・ジーエークレアス キンコーズ)
Photo: TKRチーム


Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛