第17回

第17回 カワイイの基準

 久々に会った女の子が、整形手術を受けたらしく、すっかり垢抜けて可愛くなっていた。手術費は20万ほどだという。なんと彼女の通う大学では、すでに多数の子が整形済みのようで、
「整形したことを周りにアピールしてる子ってダサい。そんなの個性でもなんでもないよ」
 と言っていたのには驚いた。
「私は整形することを、いちいち人に話したりしない」
 のだそうだ。
 私の時代には考えられないことだが、美容整形はすでに「周りにバレないようにコッソリやるもの」から、「SNSなどでアピールするもの」に変わり、「いちいち主張するのはダサい」にまで進んでいたらしい。

 彼女は、男子からチヤホヤされることでやっかむ女子を「努力が足らない」と一蹴する。痩せるとか、肌の調子を整えるとか、可愛い服を着るとか、そういう努力の中に「整形する」が入ってきているということなのか。

 私は整形している女性に会う機会が比較的多いが、彼女たちから「美は力だ」という言葉をよく聞く。美しくなることで初めて「スタートラインに立てる」と言った子もいた。仕事も恋愛も人間関係も、女性の幸福にはまず「美人」という土台が必要で、「美人じゃない」ことには、スタートラインにすら立てないという意味らしい。
 もちろんこれは個々の考え方で、私としては整形する女性ほど「元が可愛い」という印象を受ける。ある程度、手ごたえがなければ「美しさ」を武器に、上のステージに行こうとは思わないだろうとも思う。
 女性活躍の時代と言われても、相変わらず「女は見た目」で、さらに「美」のハードルは上がっているのかもしれない。

 随分前の話だが、仕事で水商売の女性を撮ることになったとき、あらかじめ見せてもらったプロフィール写真が、現実離れした顔の美人だったことがあった。私は不安になって、
「この写真、そうとうフォトショップで加工してるみたいだけど、実物は全然違うと思うよ」
 と編集の人と話していた。ところが現れた女性は、写真そのものの姿だった。目は大きく、鼻はツンとして、顎は細く、肌は真っ白で、ストレートのロングヘアは毛先まで垂直。表情はワンパターンで、脚が細すぎるせいか動くと関節がカクカクしている。フォトショップで作られた人間が、モニターから飛び出して現実に現れたみたいだった。彼女はつまり、フォトショップで加工した顔に近づける整形をし、スタイルも細くしているのだろう。第一印象は、「綺麗」より先に「凄い」がきてしまう。完璧過ぎる美は、自然とは遠いということなのかもしれない。

 最近は、携帯のアプリで、可愛く加工された写真が簡単に撮れてしまう。知人から聞いた話によると、インスタ界隈では、アプリで撮った顔に近づける整形が流行っているらしい。自撮り写真をアップするのが目的なため、正面から見た顔が大事で、横顔などは度外視されるのだという。
 現実よりも、ネット上の自分の写真に比重を置くというのは、私には信じられないことだ。けれど、美の感覚はそれだけ環境に影響されるということなのだろう。

 思い起こすと、私の高校時代にも過激なダイエットで、フラフラになるぐらい痩せている子が何人かいた。華奢であることが「カワイイ」の基準だったのだ。思春期の一番太りやすい時期に、枝のように細い足をしている子はとにかく目立っていた。

 今、私は健康のためにピラティスをやっているので、美しさの基準はその頃とは全然違う。女性インストラクターたちは、みんなガッシリした太ももに、キュッと締まったウエスト、ピンと上がったヒップに、スクっと真っすぐ立っている。いわゆる「ピラティスをやっている人の体型」は、健康的で強く美しくカッコイイ。しなやかに動かせる身体こそ、今の私の理想だ。

 「綺麗になりたい」という気持ちは、女性の本能だと思うが、影響を受けるものには慎重にならないと危険なのだろうと思う。

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1980年、東京都生まれ。写真家、ノンフィクションライター。写真集に『やっぱ月帰るわ、私。』『理想の猫じゃない』『ふあふあの隙間①②③』、著書に『ノーモア立川明日香』(共著)、『のらねこ風俗嬢-なぜ彼女は旅して全国の風俗店で働くのか?』など。@kaworikawori
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