なぜ紙パックにストローを刺すと美味しいのか?
沖縄の夏の昼下がり。
部活が終わると、友達と「今日はどこで遊ぶか?」と話しながら、コンビニに寄っていました。
紙パックのドリンク売り場の前で立ち止まり、冷気を浴びながら、ダラダラと喋りつづけ、各々好きなジュースを手に取ります。
手に取るのは、いずれも946mlサイズ。
沖縄には、946mlサイズの紙パック飲料が数多く売られており、その種類も多種多様。
アップルティー、レモンティー、乳酸菌飲料、カフェオレなど、選ぶだけで楽しい気持ちにさせてくれる紙パック飲料ばかりでした。
ストローを刺した946mlの紙パック飲料を片手に遊ぶのが、僕の青春の風景の一つになっています。
夏になると、毎年このことを思いだして再現したくなるのですが、東京には946mlの紙パック飲料が売られていないため、小さめのサイズを買って、仕事中に飲んでいます。
いつも通り、ストローを刺して飲もうとすると、店員の方が入れ忘れたのか、ストローが入っていませんでした。
今からストローだけを貰いにいくのも面倒くさいため、その日は、コップに注いで飲むことにしました。
しかし、いつも買っているお気に入りのジュースなのに、なんかしっくりこないのです。
味は変わらないはずなのに、なぜかいつもより美味しく感じない。
ストローを刺すか刺さないかで、なぜこんなに変わるのだろうか。
例えば、ペットボトルの水にストローを刺しても、大して美味しくなるわけじゃないし、缶のコーラにストローを刺せば、むしろ美味しさが損なわれる気がします。
この謎の違和感について、しばらく考えた結果、ある一つの答えが出ました。
ストローが、寂しさを感じさせないから、より美味しくなるのです。
紙パック飲料にストローを刺して飲むと、ジュースの量が減っていることを実感できなくなります。
コップに移して飲むと、残量がひと目で分かるし、ストローで吸うよりも多くの量を口内に含めるので、実際に飲みきるスピードも早くなります。
これがペットボトルの水なら、「味わう」というよりも、「水分補給」という意識が強いため、残量が減るのを見ても、そこまで寂しくはなりません。
炭酸飲料なら、一気に飲むことが難しいため、すぐに量を減らすことはできません。
紙パック飲料にとってストローは、楽しい時間を増やす魔法のアイテムなのです。
ストローのおかげで、時間を忘れられるし、終わりを気にしないでいられる。
しかし、日が暮れるのを寂しく感じた10代の頃の気持ちと似ていて、ストローを刺した紙パック飲料の終わりは、急に寂しくなります。
ズズズーッとストローを吸う音が響き渡り、急にお別れを告げられる。
そのちょっとした切なさが、また飲みたくさせるのです。
だから、紙パック飲料にストローを刺したいし、これからは忘れずにもらうようにしよう。
少しでも長く、寂しい終わりを忘れられるように。
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