「虫唾が走るわ!」と先生に叫んだ日。
本当の気持ちは、誰かに届けばいい。
僕は、どんなときも、そんな思いを持って言葉を発してきました。
ただ、日本人だからか人間だからか、僕らは「空気」を気にして生きてしまいます。
その空気を考慮して発言すると、本音を言うことは難しくなります。
特に僕は、空気を気にしすぎて、本音では思っていないことを、何度も言葉にしてきました。
今も、よく覚えているのが、高校1年生の保健体育の授業。
期末テストの答え合わせをしているときに、担任の先生が「はい。⑦の答えは『措置』ですね。次の冬季オリンピックは?」と、みんなに問いかけました。
おそらく、先生は「措置」と「ソチ」をかけて、ひと笑いとりたかったのだと思いますが、クラス全員が先生の問いかけを無視していたので、場が凍りついていました。
その瞬間、僕は「えっ。担任なのに、みんなこんなに冷たくする? あぁ、もう見てられない」と思い、先生に向かって、この言葉を叫びます。
「うわ~。虫唾が走るわ~!」
「措置」と「ソチ」をかけたことに対して、「虫唾が走るわ~!」というツッコミは、あまりにも強すぎるのですが、僕の一言で、クラスのみんなが笑ってくれました。
この言葉を聞いて、僕のことを面白いと思ってくれた人もいるでしょうが、それと同時に「稲福って、すごく失礼なヤツだな」「稲福って、生意気だな」と思った人もいるでしょう。
もちろん僕は、心の底から虫唾が走っているわけではありません。
「誰かが無視され続けるのを見てられない」「先生の勇気をちょっとでも称えたい」「みんなを笑わせたい」「この時間をちょっとでも楽しくしたい」といった気持ちが、「虫唾が走るわ~!」という言葉を生んだのです。
(他の言葉でも救えたはずなのに、高1のときの僕は、これしか思いつきませんでした笑)
ただ、そんなことを正直に言うと、みんなの笑った気持ちが冷めてしまうので、僕は生意気なふりを続けました。
それ以降も、僕は集団の中でこういう立ち回りをすることが多くなり、たびたび、先生やクラスメイトの勇気が無駄にならないように、言葉を発していきました。
しかし、この役割は、あまりにも損出が大きすぎます。
みんなから、人の発言になんでも噛みつくうるさいヤツと思われたり、怖くて話しかけにくいと思われたり、面倒くさいやつと思われます。
どれだけみんなのことを思っても、その気持ちは、すぐには届きません。
結局、バカで可愛げのある男子の方がみんなに話しかけられるし、何も言わずにクールぶっている男子の方がモテます。
とにかく、努力が報われないのが辛いです(笑)。
それでも僕が、この役割を続けてきたのは、こうした方が、みんなが楽しめると信じていたからです。
実際に、その時代に楽しかった記憶がある人は、今も僕に連絡をくれるし、会ったら会ったでいろんなことを話してくれるし、僕も、毎回とても楽しい時間が過ごせています。
幸せは遅れてやってきますが、勇気を出した人には、必ずやってきます。
今、努力が報われていないと感じる人は、このことを忘れないでください。
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