見出し画像

海辺の文豪と画伯と、歌うたい

海のそばに住む猫好きな小説家に拾われて
彼のバンドで歌うことになった。
奥様が我が家での「英語の寺子屋」に通っていたご縁で。

夫のバンドで歌ってみませんか、これが課題曲です、と連絡が来た時
その曲を家のシャワーボックスで前日、熱唱していたこと
すごい偶然、と興奮してタクヤに言ったのを覚えている。
課題曲はDebbie GibsonのLost in your eyes、
タクヤは当時10日ほど北鎌倉の我が家に来ていた
高校時代、私に担任された人。

オーディションは、いつもバンドが使う逗子のスタジオにて。
ギター男子、ベース男子、そしてドラムが猫好き小説家・・・
面倒なので名前を使う。喜多嶋氏。

歌って、と言われて演奏が始まるも、
歌えない。固まる。
カラオケはじめ、人前で歌うことに抵抗があった。
何度試しても声が出ず、ついには壁を向いて歌ったら歌えた。

全く同じことが、高校演劇部でもあった。
音響係だったのに急に主役に抜擢され、セリフを、
と言われても声が出ず、後ろを向いてボソボソ言った。

その時と同じく、なぜか採用され
以後数年にわたって私はこのバンドで歌い、
録音されたCDが喜多嶋氏のファンに届くことになる。
私の鼻歌の定番が何度も課題曲になり、盗聴されてる疑惑で笑ったり。

芸名を、と言われて演劇部時代のあだ名を挙げ
以後彼も、彼の友人の画家・鈴木英人氏も私をナンシーと呼んだ。
喜多嶋氏と英人氏はお互いを「文豪」「画伯」とふざけて呼び合う。

六本木でフォルクスワーゲンのパーティーあるけど
英語できない、どうしよう、と言う英人氏の通訳を引き受けた。
3万円オファーされた通訳料、1万円でいいですと値切ったら
ナンシーらしいと喜多嶋氏に言われた。

この日の引き出物(笑)

喜多嶋氏の小説に、親近感の湧く主人公が時々出てきた。
何かの能力はあるけど独自の価値観で生きていて、社会的に不器用。
一日300円で生活していると言ったら、それが小説に使われた。
祝・初の小説モデル!


この本、誰かに貸したきり。
お友だちの皆さん、心当たりありませんか?

当時私は、書くことを重視していなかった。
国立環境研究所にいた時にさほど環境に興味がなかったのと同じく
書く人になりたい、と思ったのは、
「文豪」率いるバンドから離れた何年も後、
精神年齢5才のドラマー↓と結婚したあたりだった。
https://note.com/inaho829/n/n5d1a5821b8f3

夫のバンド(夕焼け楽団)が演奏したライブを昔、
喜多嶋氏が見ていたなど、不思議なつながりは細く続き

ご実家から発見されたチケット。1976年=46年前!

今年の誕生日、喜多嶋氏から気まぐれに(推測)
おめでとうのメッセージをもらった。
「全然書いてません。海のそばに住む小説家でもネタにしようかな」
と返事をした数日後にひらめいた。

それ、採用!(←今ココ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?