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spica12.大好きな十冊の本

眠れぬ夜に本十冊をあげてみる。

1、下妻物語

自分のそれまでの価値観が覆された本。ライトノベルに近い文体なのかもしれない、今思えば。中学時代から今でも一番仲のいい友人が驚くほど繰り返し読んでいた本。同じく読み倒し、ページの殆どが頭に入っていて、恐らく一番読み込んだ本。

下妻に引っ越してきた、ロリータをこよなく愛する桃子と、なんだか時代を間違えているヤンキーのいちご。絶対に交わらないはずだった二人がいろいろな偶然で出会い、お互いが少しずつ変わっていく話。一応シリーズで2作出ている。どちらも優劣がつけ難いほど好き。

noteを初めた頃に読書感想も書いていたので興味のある方はよければこちらも。

https://note.mu/imyme030/m/maa3dd2490a06

強い女の子は好きだ。
特に精神的に強くあろうとする女の子。
そんな女の子の前では少し歪んだ理想も正当化されてしまう。けれど不快感はない。ただただ笑えて、ああギャグでひたすらいくのか、と思ったらシリーズ二冊目で泣かされる。大好きな作品。

映画版の音楽は菅野よう子。
おすすめは、she said.
悲しくなると必ず聴く曲の一つ。

2、夜は短し歩けよ乙女

世界観が素晴らしい。京都が大好きになる一冊。これもまた狂ったように読み倒した。森見作品は、太宰治の文体が明るかった時期(走れメロスなどの結婚してすぐの頃)の、あの書かずにはいられないから書いた、みたいなテンポの良い文体が魅力的だ。ペン(もしくは、タイピング)の疾走感が紙面いっぱいに伝わってくる。

この本に出会ってから、何故か好きな作家さんが京都に縁のある人が多いことに気づき、一時期「京都には何かあるに違いない」と、余計な考察を繰り広げた時期があった。下妻の嶽本野ばら、森見登美彦、綿矢りさ、万城目学、京都大学ミス研の綾辻行人や小野不由美、有栖川有栖…なんだか他にもいた気がするが、とにかく京都、何かある。と、思っていた。(今でも思っている。)

森見作品で、関西では大学生の学年を「〇回生」と言うことを初めて知った。

アニメ化された四畳半神話大系や有頂天家族、恋文の技術、太陽の塔、新訳走れメロス、ペンギンハイウェイ、宵山万華鏡など、とりあえず今までに出たすべての本が、単行本、文庫本両方とも、家にある。入浴剤のおまけについてきた短編も含めて。直接サイン会で名前を書いてもらった作家さんでもある。

とにかく黒髪の乙女が可愛い。適度にファンタジーなのも素晴らしい。電気ブランはあまり美味しくなかったので、偽電気ブランを何とかして飲みたいと思っている。「おもちろい」や「韋駄天炬燵」など独特の言葉たちがこまごまと光る。

3、神様のボート

江國作品は癖が強いので、合わない人には全く合わないと思う。私も作品によってわけがわからないこと、結構多かった。(ファンの方本当にすみません…個人的な見解です…)それでもつい読んでしまうのは、ある種の発掘作業に似ている。たった一つの宝石に出会うために膨大な時間掘り続ける、というように、本のどこかに必ず、たった一つの宝石のような言葉に出会えるのだ。

神様のボートで見つけた宝石は、

「一度出会ったら、人は人を失わない。」

という言葉だった。嵐のようにこの言葉に救われたことが、何度かある。そんなたった一つに出会いたくて読んでしまう不思議な本。
江國作品のおすすめは、ホテルカクタス、泣かない子ども、泣く大人、落下する夕方。この人はエッセイの方が好きかもしれない。中学時代にお風呂で本を読み出したのは、確実にこの人の影響だ。
「筆力」で本を売っているなぁと思う作家さんの一人。作者近影の、透明感のある写真も好き。

4、魔法の学校

ミヒャエルエンデ、最後の短編集。モモやはてしない物語の方が有名だけれど、実は一番好きなのはこれだ。学校の図書館にあって、一人で何度借りたかわからない。恐らく絶版本で、新品では探しても見当たらず、中古で手に入れた。

子どもたちがどんなものを求めているのか、何に世界を見い出しているのか、エンデは知っていたんじゃないかと思う。子どもを決して子ども扱いしていないことが、文章の端々に見て取れる。何が恐ろしくて、どんなことが素晴らしいのかを、これだけの世界観で描ける人はそういないだろうと思う。

ファンタジー好きには是非、一度読んでもらいたい一冊。

5、月は無慈悲な夜の女王

これより美しいタイトルに、未だに出会っていないと思う。ハインラインは日本では「夏への扉」が有名だけれど、海外の評価ではこちらの方が名が知れているらしい。夏への扉は高校時代の課題図書だった。そのあとにこの作品を知って、同じ作者だと気づいたのは大学に入ってから。

ヒューゴー賞受賞、ネビュラ賞ノミネート。どちらもSF小説では最高クラスの賞だ。ネビュラ賞の同年の受賞作がアルジャーノンとバベルだったことを考えると、タイミングの悪さを憂うしかない。

とにかく緻密に練られた世界観が凄まじい。読んだあとで、この人が作品を書く上で科学的考証を重ねに重ね、SF小説の質を上げた立役者であると知って、ひどく納得した。執念すら感じる本。

6、ビブリア古書堂の事件手帖

ラノベ調のイラストに侮るなかれ、本格的な古書ミステリーだ。とにかく本のことが山ほど作中に出ているので、本が好きで、本の知識も大好物だという人は必ずどハマリすると思う。本を読んだあとに、また、本が読みたくなるという凄い作品。

舞台は鎌倉。本の謎と、それにまつわる人々の謎が美人店主によって明かされていく。とにかく、面白い。本好きが読んで絶対に後悔しない作品の一つ。

ちなみに、このシリーズの三巻が初めて手にしたサイン本だった。書店でたまたま手にとって、そこからサイン本集めに嵌ったのだから、記念すべき一冊としての愛着がある。一番好きなのはーーー迷いに迷うけれど、4巻。江戸川乱歩が題材になっている。乱歩マニアは大喜びするだろう。押絵と旅する男や二銭銅貨、少年探偵団シリーズなどとにかく本のことが出てくる。書きながら読みたくなってきた。

7、ハリーポッターシリーズ

尊敬の意味も込めて。
これだけ人の息吹が感じられる、人の生活に近いファンタジーが発行された時代に生まれることが出来て幸運だったと思う。

何の調査かわからないけれど、世界で売れている本の1位が聖書、2位が毛沢東語録、3位がハリーポッターらしい。ハリーポッターを小学生の時に読んで、日本からこれだけの作品を生み出すために戦えるアイディアはなんだろう、と考えたことを思い出す。忍者や侍、巫女、舞妓さんあたりかなぁと幼ながらに思ったけれど、世界基準で人気を得ることは本当に容易ではないなと痛感した。

たった一人の女性の頭の中にこれだけの世界があること。これだけの世界を動かし続けたこと。言葉として形に残したこと。本当に、自分の語彙ではすごいとしか言い表せない。

8、9S

私の、恐らく初ラノベ作品。
とにかく全力のSF。女の子のビジュアルが優れていることを除けばラノベらしさはあまりないような気がする。0能者ミナトの方が有名かもしれない。

とにかく頭脳で行動することのかっこよさを知った作品の一つ。このイラストの女の子は、科学者である父の手で脳内を開発され、そのあまりの能力に地下深く幽閉される、というところから物語が始まる。光学迷彩やらリニアやら、とにかく近未来的な話が壮大なスケールで動くので、ハリウッドで映画化なんてしたら絵になるだろうなぁと思う。

9、凍りのくじら

辻村深月作品の一作目。メフィスト賞出身の作者はあれだけの分量を書けるせいか、謎の安定感があるなぁと思う。綾辻行人の大ファンで、ファンレターも送っていたそう。デビュー時にもその尊敬の念を込めて、「辻」の一文字を貰ったとか。

サイン会に足を運んだ作家さんの一人。穏やかな素敵な女性で、けれど気さくで、少しだけゲームの話をした。作家さんが思っていた印象そのままだと、やっぱりとても嬉しい。読者の勝手なエゴでしかないのだけれど。

いやなやつだな、と、思う人の部分がやんわりと描かれるのだけれど、ところどころに自分が映り込み、本の中にいつのまにか自分がいるような気持ちになった、不思議な本。

10、桐島、部活やめるってよ。

小説すばる新人賞。やっかみ半分で長いこと手にとっていなかった。作者が19歳の時から書いていた、なんて広告を見たら悔しくて、10代で何が書ける、なんて、本当に悔しくて、今となってはただただ嫉妬だったけれど。ようやく手にとって、認めることが出来た作品。

「レプリカの放課後」という小説を書いた時に、「学生の描写が良くかけている」と褒めていただいたのだけれど、それよりずっと先に、上手に、学生の描写を書いていたのはこの人だった。悔しさを乗り越えて読んだこの本に、圧倒的に敗北した。文章の中には、ちゃんと、思春期の子どもたちがいた。自分の武器だと思っていたことが、全然貧相なものだったことに気づいて悲しくなった。読む人には少しもの足りないのかもしれないけれど、書く人にとっては学ぶことの多い、気づきの多い本。

番外編、夜と霧

精神科医が見た、強制収容所。少しずつ感覚が麻痺して、人の死体の前で平然と食事できるようになったこと。生きるものと死ぬものの分かれ道。負の遺産の内部にいながら、こうした記録を残せたことは貴重だと思う。授業で強制的に読まされたけれど、読んで良かったなと感謝した本。

番外編、29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。

実話に限定した賞、日本感動大賞大賞作品。タイトルがすごいので興味本位で手にとって、立ち読みで全部読んでしまって、その後すぐにレジに持っていった本。読むのが早いので、内容だけ知りたい時、買うまでもないなぁというときは立ち読みで済ませてしまうこともあるのだけれど(本屋さんごめんなさい。本当にすみません。)この本は読み終わったあとに欲しくて買ってしまった。実話だとしたら本当に映画のような実話だ。女性が「変わる」様子を、この本一冊で垣間見ることができる。

恐らく手にとったのは、この女性と少なからず共通点があったからだ。学歴や、淋しさの描写が。

●その他好きな本
図書館戦争シリーズ、麦の海に沈む果実、マチルダは小さな大天才、ボクと未来屋の夏、夢水清志郎シリーズ、都会のトム&ソーヤ、ダヴィンチコード、アメリ、セカンドラブ、リピート、イニシエーションラブ、さいはての彼女、バブーシュカ、スウィートヒアアフター、もしもし下北沢、源氏物語、落窪物語、とりかへばや、勇気凛凛ルリの色、瓶詰の地獄、押絵と旅する男、フラニーとズーイ、闇桜、樋口一葉書簡集、そして誰もいなくなった、十角館の殺人、横道世之介、陽気なギャングが地球を回す、オーデュボンの祈り、サクラダリセット、キノの旅、キーリ、リリアとトレイズ、ゴーストハント、13階段、学校の怪談、レベル7、ぐるりのこと、一房の葡萄、銀河鉄道の夜、注文の多い料理店、星の王子さま、クローディアの秘密、数の悪魔、赤い蝋燭と人魚、真夜中の飴買い、舟を編む、世界の終わりとハートボイルドワンダーランド、不思議の国のアリス、鏡の国のアリスetc…

絶対に何か忘れている気がするけれど、書けば書くほどその感覚に囚われそうなのでこの辺で。

本、大好きです。

〈了〉

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