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投資家の文句と投資家保護

クレディ・スイスのAT1債が問題になっている。
株は債権に劣後するという大原則は、特約より優先されるのかという法的論争については、別に議論を譲るとして、私はこの問題等にも関わる投資家保護一般に関する論点について議論したい。

まず、大前提として、投資家の文句というのは、損をしたときにしか出てこない。投資を通じてリターンが得られたときに、人は文句を言わない。
適切に説明を受けていれば、人はリスクを理解して投資をしているはずであるが、損が出たときに限って、過去の自分の意思決定を脇におき、文句を言う人が一定数いる。
もちろん、金融機関が相手の無知を利用し、十分な資力がない顧客に売っていた場合は問題だと思う。
ただ、ある程度の資力を有し、リターンに目がくらんで投資をした人物が、損が出た瞬間に、やれ「こんな商品を売るべきでない」というのは、商品の多様性・選択の自由を奪うことに繋がりかねず、慎重に対応すべきだと思う。

今回のクレディ・スイスのAT1債にしても、そもそも個社の債権はデフォルトリスクがついて回るものであり、さらに普通債権より劣後する債権を選んでいるのだから、リスクはついて回る。
特約も(膨大な説明の一つであるかもしれないが)説明資料には含まれていたはずである。
クレディ・スイスの業績悪化は何も突然起こったわけではなく、昨年秋ごろから報じられていたところ、損切りするタイミングは確実にあった。
こうした中、救済のタイミングまでクレディ・スイスのAT1債を所有している人の大半は、
・価格が下がった段階でそのリスクを踏まえつつ、リターンを狙った投資家か、
・投資商品が一つが無価値になろうが、資力にさして影響を与えないため、放置していた投資家
であるように思われ、そうした投資家をどこまで救済すべきかは慎重に考えるべきと思う。

繰り返しになるが、リスクを許容できないような資力しかない、相場に明るくない顧客に、手数料稼ぎのために売り付けていたのであれば問題である。

ただ、国が規制・保護する領域が増えるということは、我々自身が自己責任の下、意思決定できる領域が減ることになりかねないという点は、十分理解の上で、こうした政策については議論したほうがいいように思うのである。

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