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The last day それは夢のような(帝国ホテルライフ)


ほんとうに最後の朝が来た。
いつもどおり、7時に起きて共用スペースにパンを焼きに行く。
これを「いつもどおり」と言えるのも、ありがたいことだったな。

共用スペースの扉の前に人がいる。
その女性がカードキーで扉を開けて、後ろについて一緒に入る。

ほぼ同時に、2台のトースターがパンを焼き始めた。
それにしても昨晩といい、最後になってここでよく人に会う。
宿泊日のスタートが人によって少し違うんだろうけど、たいていみんな30泊だろうから、あたしが最初にいたころとは住人がだんだんとすべて入れ替わって、共用スペースを使う人々が今は多いっていう事なのだろうか。

共用スペースには、透明のビニール袋に4つのパンが1セットに入れられたものが置いてあって、それを焼くんだけど。
平日は4つだと少し多くて、ここ最近は焼くのは3つにして、残りの一つは触らないように袋に残して、会社に持っていって部内のメンバーにあげたりしてたんだけど、今日はせっかくだから全部食べよう。

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昨日の夜食べきれずに半分残してしまったタコの冷菜(蛸のトマト煮込みとカポナータ ジェノバ風/1,100円)を食べながら、昨晩の豪華ディナーを思い返して。
まあ お総菜とはいえ、結果 豪華ディナーだったよなあ。
それでも同じ品をルームサービスで頼むよりは断然安いはずなんだよ。そう考えると、うまくやったよなあ。

肝心のカポナータ(野菜の煮込み、という意味らしい)は、なんていうの、本格的な上級の味がする。

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(手前のバターはday19で朝のルームサービスを頼んだ時についてきた)
トマトが濃く出ていて、お米のような形の細かいパスタ自体もおいしくできてて、それにトマト煮込みの濃い味が絡んで、そして片手に入るこの大きさで、食べると結構ボリュームがあるのだ。
グラス1つで1,000円するだけあるし、正直言うと朝に合う味じゃないんだけど、「朝に合う味じゃない」っていう評価自体が、この料理がいかにディナーに出される1品としてのレベルが高いかっていうのを表してるっていうか。

で、よく見るとこのグラス、帝国ホテルのロゴが刻印されてるのよ。

昨日の夜、友人とこれがプラカップじゃなくてちゃんとしたグラスであることに感心しながら食べてたら、途中であれっ、と気づいて。
最終日に、自分のためのいいお土産ができたなと思ってすごい嬉しくて!
これはあとで洗って持って帰ろう。
昨日の友人も自分のぶんは大事に持って帰ってたよ。

パン4つとカポナータもあって、いつもよりちょい量多めな朝ごはんを終えて身支度にとりかかる。今日は帝国ホテルのフロントにいて恥ずかしくないように、持ってきた服の中でちゃんとしたものを選んだ。
着替えと身支度を終えたら、次は荷造りだ。チェックアウトは12時。それまでに、部屋に残されたすべてをまとめなきゃいけない。

最終日だからと会社のみんなが気を遣ってくれて、今日は午後入りにしてくれた。まあそんなに時間はかからないだろうけど、ゆっくりお昼でも食べてから会社行くことにさせてもらお。

なんて考えてたんだけど。
あれ、結構持って帰らなきゃいけない量があるぞ?
一昨日トランクを家に持っていってもらって以降の、今日までの3日間、天気が読めなくて服と靴のパターンを多めに残したのが、大きな敗因の一つなのは間違いない。特に靴がかさばる。

あと洗面器ね。お風呂で使うために家から持ってきて、最後の夜まで使いたかったから手元に残しておいたんだけど、トランクケースくらいの大きさなら洋服の間にうまく入れちゃえればたいして実質的な嵩がないと思って軽く考えてた。1泊旅行とかに使うサイズのボストンバッグに入れるにはうまいことやってもかさばる。

しかも、荷物まとめる時間もそれなりかかる。仕事は昼からだからと甘く見てて、午前中いっぱいあるからと思ってたけど、作業始めてみたら時間がそこまである訳でもない。
いやもうほんと、会社を午後からにしてもらって良かった。

で、荷物は最終的に5つになってしまった。5つ…!
最初から予定してたのが、さっきの「1泊旅行くらいのボストンバッグ」と「通勤バッグ」。当初のイメージではこの2つだけだったから、会社の最寄り駅まで行ったらボストンバッグは駅のロッカーに預けて、帰りに両方持って帰ればいいなんて計画だったけど、荷造りしてみたら、それ以外に紙袋が3つ増えた。それだと多いからまとめたいけど、紙袋も、これまでの1か月の生活でもらったものを取っておいたやつなので、まあまあの大きさの袋しかないんだよなあ。

さすがに合計5つの荷物を持って会社に行くのが厳しいので、送るはずじゃなかったけどこの中で一番大きいボストンバッグは宅配で送ることにした。
帝国ホテルの住人として、スカートで大荷物しょってる姿でエントランスを出るのは美しくないな、って思ったのも、送ろうと思った理由の中には少しだけ入っている。

ようやくまとめ終えて時計を見ると、刻限の12時まではあと20分ほど残っていた。
フロントまで5分は見ておくとして、残った15分でいくつか記念写真を撮れそうだ。

さっき食べた冷菜のカポナータのグラスに、
1か月暮らした帝国ホテルからの眺めを閉じ込めてみました。

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うん、なかなか綺麗に撮れた。
でもね、東京タワーの時(day22)みたく、実はこれ撮るのに何っ度も撮り直してるからね…。採用しなかった同じアングルの写真があと11枚あるよ。

ああ、そろそろ時間だ。
忘れ物がないかチェックして、最後に扉の前で振り返り、お部屋に、
「ありがとうございました。お世話になりました 楽しかったです!」
って言った。

やばい、ちょっと泣きそうじゃねえかあたし。
自分の言った言葉で、やたらと感傷的になっている自分に気づく。
ああ、最後なんだなー…。

さあ、フロントに行こう。
エレベータを下りて、サービスアパートメントのゲートを出た。
1か月前、ここのゲートを最初に見たときに、おおー!と思ったことを思い出して、せっかくだからここでも写真を撮ろうとケイタイを出したら、ホテルマンの方が荷物を台車に載せて通りかかってくれたので、写真をお願いする。
ホテルの廊下で写真を撮っていいかどうかわからなかったので、ここでは写真はちょっと、って言われるかもと思ったけど、今日が最終日で自分の記念に、とお願いしたら快く受けてくださった。



バッグは家に送ることにしたんだけど、フロントまでの道中である今現在は、5つの荷物を全部持ってる状態だ。
両肩にそれぞれボストンバッグと通勤用のかごバッグ。両手には紙袋3つを分けて持っている。
だからこの格好で中央の大階段を下りるのはちょっと気が引けたけど、最後だし申し訳ないなと思いながら通っちゃう。

フロントで女性スタッフの方にチェックアウトの手続きをしてもらいながら、楽しい1か月でした、と声をかけたら、「どうでしたか?」とさらに聞かれたので、ほんとうに夢のような生活でした。と告げたら、すごく嬉しそうに、「ぜひまたいらしてください」とにこやかに答えてくれた。

荷物を送りたいと伝えると、20mほど先に見える配送受付まで、バッグを台車に載せて運んで行ってくれるという。このくらいの距離なら自分で、とも思うけど、ここは大人しく受けておくのがスマートだ。受付までの移動の間も、「部屋に飽きませんでしたか?」と訊いてくれて、部屋には飽きなかったけど、ご飯のサブスク取らなかったのでテイクアウトに疲れました、と言ったら笑ってました。


荷物を送り終えたら、さてお昼はどうしようか…緊急事態宣言中の館内営業時間変更の一覧がまとめられたボードの前で検討する。
17階のバイキングとかね…いやあ、8,000円は今日は払えないなあ…庶民だし。
バイキングは1人で行かなくてもいいかなって感じだし、ここはやはりパークサイドダイナーで行こう。

数組待って、前に深谷ねぎカレーを食べた、1階の「パークサイドダイナー」の席に着く。

今日もねぎカレーを頼もうかどうしようか、メニューを端から端まで見て迷う。迷ったのは、”たっぷりケールとヘーゼルナッツのサラダ 小松菜のチキンナンを添えて(2,000円)”と”インペリアルパンケーキ いちご添え(1,800円)”。値段もカレーよりお手頃だし…

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いや! でもここはネギカレーで行くぜ。
ねぎカレー、今回わたくしリピーターですよ。

食べものの場合とくに、初回の感動(day15)って絶対と言っていいほど越えられないから、あの美しい記憶のまま留めて置こうかとも思ったけど、このカレー期間限定なのよね。今月いっぱいの。
それ改めて見た時に、やっぱりもう一度食べておこうと思った。

ドリンクはなしで。
コストの問題もあるけど、目の前におススメされてるノンアルコールスパークリングワインが、前回と変わってて今回はあたしの琴線に触れなかったからというのもある。

そして来ました。
「深谷ねぎカレー ~初代会長 渋沢栄一にオマージュを込めて~」(2,900円)

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うわあ、やっぱり美味しいー!!!
心ゆくまで堪能する。
たしかに初回の感動は超えられないかもしれないけど、これを頼んで正解だった、という思いが強い。
またこのルーの、グリーンカレーとそうじゃない部分のバランスが絶妙なんだよ。あと、これに焼きライム添えようと思ったシェフ天才だと思う。
で、この緑のごはんが、これ単体でびっくりするほど爽やかで美味しいの。

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ゆっくりとゆっくりと、大事に食べ終えたら、30泊のサービスアパートメントの時間は本当に終わりだ。

静かに左手の腕時計を見る。
13:10。
カレーを食べ終えた。ああ…終わってしまった…。

1か月、なんか毎日毎日楽しかったな…。
ふう…会社に行くとするか…。
ひとりでセンチメンタルに浸っていると、スタッフの女性が皿を下げながら「カレーのお味はいかがでしたか?」と訊いてきた。
さっきといい、今日は女性スタッフに話しかけられる縁があるらしい。
答えようとして、あ、と気づいて内心ビビる。
いま声を出すとうっかり涙声になりそうだ…!

いやいや、こんなところで泣きそうになっててどうする。
持ち直して、すごく美味しかったです!と答えた。
わたしここのカレー、今日リピーターなんですよ。この前食べたらすごい美味しかったので、もう1回食べたいなと思って。
そう言うと、にっこりと喜んでくれた。
「そうでしたか、ありがとうございます。このカレーは人気ですぐ売り切れてしまうんですよ。毎日売り切れてて、土日も2時くらいには売り切れで注文が受けられなくなるんです」

そうだったんだ、じゃあ初回も食べられたのはラッキーだったんだな。
なんか売れてないのかと勝手に思ってて、もっと話題になればいいのになんて心配してたよ。いらない心配だったわ。

最後にスタッフの方と少しお話しできたのはいいおまけだった。うれしかったな。ごちそうさまでした。
心の整理もついたので(荷物の整理はついてなくて紙袋3つあるけど)、会社に行くことにします。

ということで。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!!!

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                           おわり!

(読んでくださった皆様に感謝をお伝えしたいのですが、顔を出す勇気がなくてですねえ、暗めに加工しちゃいましたが、このあたりにさせてください。)

あと何日か、今回の反省会編を書こうと思っていますので、ご興味持っていただいてる方々には、あと数日分おつきあいください。

それと、ハートボタン(「スキ」ボタン)やコメントをくださった方々、本当にうれしかったです。ありがとうございました。コメントの返し方が長い間わかっていなくて、どうしたらいいんだ、と思ってましたが最近分かったので今度お返事しに行こうと思っています。

では、ブログにおつきあい頂いて ありがとうございました★