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さーよならなんかは、いーわせないー!

あたしがこの業界に足をつっこんだのは、もう7年半前の秋のこと。
右も左もわからない、ちんちくりんのいもねこがアシスタントについたのがセンセイだった。
先週の二次会で、あたしが愛人になった人だ。
(ものすごく語弊のある表現だなw)
いきさつはこちらの「金曜日」をご参照いただければ。


いつの間にか、あたしは本人の了承も得ずに20歳以上も年の離れたカレをセンセイと呼んで懐いた。

センセイは専門分野ではスペシャリストだと思う。
情に篤くて、 説明が分かりやすい。
人の心を掴むのが上手で面倒見がいい。
あの人じゃないとダメ、と何度言われただろう。
語り出すと長くて、時に何を言ってるのかわからなくなることもあるけどw

その代わり事務仕事はからきし苦手で。
いもねこごときにケツ叩かれながら事務仕事してた時期もあったよね、センセイ。

あの頃、あたしは「センセイの不在時の爆弾処理係」と呼ばれてた。
センセイの不在時に限って、内外問わず、問い合わせが入るのだ。
それがいつの間にか「爆弾」と呼ばれ。
誰かが「爆弾」を受け取ると、事務所内で「いもねこさーん」とお声がかかる。
下手すりゃ当時は別のフロアだった喫煙所にまで伝令が走ってくることも。

まず、センセイのデスクから目的のブツを捜索するのがあたしの第1任務。
決まった引き出し、もしくはデスクの上にあればまだいい方で。
机の下やら、センセイ用のキャビネットから、大捜索になることもしばしば。
そして、別の爆弾みつけちゃったりもしょっちゅう。
ブツが無事見つかって、あたしに判断と処理できるものであれば処理する。
出来なきゃ上司にポイッと投げる。
おかげで古巣で担当職をやる羽目になった時も、それほど困らなかったし、不在対応もお手の物だったので重宝していただけた。

で、センセイが出社したり帰社したら
「センセイ、こんなに大変だったんだから!」とセンセイはあたしに怒られるのだ。

でもセンセイはあたしのことをアシスタントと呼ばず、パートナーと呼んでくれた。
よく2人でおっそくまで残業しては、コバラか減ったからとなけなしのお小遣いでパンやアメリカンドッグをご馳走してくれた。
時にはこっそり缶ビール飲みながら残業したこともあるw
実家から何か送られてくると、こっそりおすそ分けしてくれた。
事務は丸投げだったけど、依頼の仕方が絶妙で
「またー???」と怒りながらも、センセイのアシスタントはヤダ!辞めてやる!とか担当変えて!と思ったことはなかった。
別にモノで釣られた訳じゃないよ?
それは一重にセンセイの人柄だと思う。

よく愚痴も聞いてもらった。
仕事のことも、家庭のことも。 
センセイは家庭をものすごく大事にする人だ。
恐妻家だとよくネタにするけれど。
言葉にはしないけれど、奥さんが、お子さんたちが、お孫さんたちが、故郷のご両親が、大好きで仕方がないのが会話の端々から伝わってくる。

古巣に移ってからも駅前の喫煙所で行き逢えば、仕事はどうだ?と心配してくれて、アドバイスを沢山してくれた。
古巣にもセンセイみたいな面倒見がいいスペシャリストがいたら、あたしは担当職をもうちょっと頑張れたかもしれない。

古巣を退職したとき、もうこの業界に戻ることはないと思ってた。
声をかけて上席に掛け合ってくれた可愛い同僚ちゃんにももちろん感謝してるけど、3年半のブランクから出戻ることを決めたのは、センセイがまだ在籍していたからだ、と言っても過言じゃない。
またセンセイと仕事がしたかったんだ。

いざ出戻ってみたら、センセイは担当職メインではなくなり、アシスタント制もなくなったので、センセイの事務処理をすることはほとんどなくなってしまった。
何より、センセイが自分で事務処理できるようになっててびっくりした。
泣くほど嬉しかった。
それでも相変わらず愚痴を聞いてもらい、時にはセンセイの愚痴を聞いた。

もうそれも残り2日だ。
センセイは来週から月末まで有休消化に入り、退職される。
これ書いてるだけで既に目から汗がでてくる。
今日、花粉すごい飛んでそうだったもんな。

あたし、月曜から誰に愚痴聞いてもらえばいいんだろ?
誰に相談したらいいんだろ?

「ねぇ、センセイ。月曜からも出勤するよね?4月からも馬車馬のように働くんだよね?」
2月の半ばから何度聞いて、何度「おうよ」と笑ってもらったんだろ。

そんなセンセイから月曜日にお手紙をいただいた。
「サヨナラとは言わない。故郷に帰ったら遊びにおいで」と。

だから、サヨナラは言わない。
またセンセイに会えるのを楽しみに、あたしはあたしの仕事を全うするね。
で、センセイの故郷にお邪魔するね。
なんなら、お嬢も連れて。

センセイ、大好きだよ。
今まで、本当に本当に、ありがとうございました。






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