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この漫画が輝ける場所を求めて

「ここじゃないな」と思った。


今までの自分の人生の中で、何度かその後の運命を変える決断がいくつかあった。僕の経験上そういう強い直感というか、ひらめきみたいなものは突然やってくる。

突然やってきて、ズシッと胸に落ちる独特の感覚がある。日常生活の中で出会う小さなひらめきとは、まるで重さが違うからすぐにわかる。

久々にその感覚がやってきたのは去年、渋谷のクラブで一人SOMECITY(ストリートボールリーグ)を観ている時だった。



イエローコートを見つめながら

去年の5月のこと。とにかく僕は心労が重なっていて、息抜きを求めてバスケ観戦に行ったのだった。

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そのころちょうど、自分の初連載作であり、一番描きたかった女子バスケ漫画「BREAK THE BORDER」の1巻が出たばかりで、しかし売り上げが及ばず連載継続か打ち切りかわからない という何とも生きた心地のしない日々を送っていた。

(↓作品詳細はここに書いてあるので割愛✂︎✂︎)

試合が始まる。

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もちろん写真や映像で見ていたからSOMECITYがどんな雰囲気かは知っていたけど、現場はまるで地下のファイトクラブみたいな熱気だった。"ストリートボールリーグ"なだけに、体育館で観る5人制バスケとはまるで違う野生感。決して広くはない、それこそ普段はライブ会場として使われるような場所で、観客席スレスレで繰り広げられる野良っぽい男たちの試合は、血が騒ぐものがあった。試合というよりショーに近い。

イエローコートの上の彼らは眩しいほど輝いていた。彼らの多くは本業の仕事を持ちながら、こうして平日の夜に心から好きなこと──バスケに全力で打ち込んでいる。

そんな光景を観ているうちに、コートの中で輝いている彼らと、それを見ている自分との対比に、なんだか悲しくなってしまった。

「おれも一番好きで、一番やりたいことをやっているはずのに、なんでこんなに心が死んでるんだろう」


7年前、BREAK THE BORDERを描きたいがために上京してきた自分にとって、連載はやっとの想いでつかんだチャンスのはずだった。打ち切り間際の状況に絶望していたんじゃない。もっとそれ以前の問題だった。

担当編集さんだけは最後まで身を挺して作品を守ってくれたけど、関係者の中には明らかにこの作品をやりたがっていない人たちが居た。だったら何のために僕をデビューさせたのだろう。すぐに数字に繋がらない作品には用無し、といった感じだった。

この漫画を世に出すことで何かが変わるかもしれないとか、どんな人を助けられるかもとか、彼らにはどうでもいいことなのだ。作品への熱量の差は明らかだった。

「BREAK THE BORDERと自分が輝ける場所はここ(当時の出版社)じゃない。"この環境"でも"このやりかた"でもなかったんだ」

好きなものに楽しそうに打ち込んでいる選手たちを前にしたことで、堪えていた正直な思いが胸に降りてきた。自分の行くべき場所はもっと別のところにあると僕は確信した。

頭に思い浮かんだビジョン

試合を見ながら、どんどん思考は膨らんでいく。

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以前 短編版(ECHOES)も出ていたこともあり、まだ1巻しか出ていないのに熱い声援をくれる人たちがすでにたくさんいるのは事実だった。その多くは、やはりバスケが好きな人たち。

このSOMECITYの試合会場にいる選手や観客のように、バスケを愛する人も、その発展を願う人も、日本には沢山いる。僕もそのひとりだ。

バスケットボールをやることで人生を変えてもらった。だから計り知れない思い入れと、恩みたいなものがある。とくに漫画の題材にもしている女子バスケに関しては、この漫画を描くことで何か貢献できたらと思っていた。

もうひとつの要素として、主人公の青がトランスジェンダーであるように、どこかマイノリティ的な要素を持った人たち(セクシャリティなどに限らず)に元気を与えられる作品にしたいともずっと思っていた。

単に僕が読みたい・描きたい作品だから…というのが原動力ってわけではない。それだけでは実はたいしたパワーにならない。この強い執念の正体は、この漫画を届けるべき人が沢山いると直感的に感じるからだ。

自分の実力や身の程なんて知らんがな!自分でもよくわからない衝動に引っ張られて、ここまでやって来た。

ただ、ほんとにたくさん居るはずなのだ。バスケが好きで、その発展を願う人たちも、どこかにマイノリティ的な要素を持って生きている人たちも。

BREAK THE BORDERの構想がスタートしたのは僕が中3の頃(15年くらい前)なのだが、時は流れに流れて、なんだかこの漫画が世に出るのにぴったりな時代になってきたんじゃないかと、僕は勝手に思っている。

だってこんなに、バスケ界が盛り上がってる時代があったか?日本人選手がNBAドラフトで名前を呼ばれ、女子の日本代表は来年の東京オリンピックで金メダルを目指すほど強い。LGBTQの存在もだんだんと認知されてきた。

そんな時代に、この漫画を諦めるなんていう選択肢はない。絶対に受け取ってくれる人は居ると信じている。てかすでに居る。それこそ海の向こうにも。

うまい言い方が見当たらないのだけど、続きを望んでくれる人たちや、自分と"目指す世界が似ている人たち"の協力を仰いでこの漫画を描き続けたり、一緒にバスケ界を盛り上げていく。それが一番幸せな形なんじゃないか…?そんな光景がいくつも頭に浮かんだのだった。

そして、彼らと手を組んでいる未来の自分はとても楽しそうだった。

思い返してみれば、僕がもともと思い描いていた将来像って、自分で会社を作って、そこから作品を発信していくこと。やっぱり本当はそっちに行くべきなんじゃないのか?何より作品の運命は自分で決めたかった。



SOMECITYを観に行って、思いがけず蓋をしていた本当の気持ちに気づいてしまった。今思えばこの日が、クラウドファンディングに至るきっかけだったのかもしれない。

***

その約2ヶ月後、BREAK THE BORDERは打ち切りを言い渡された。

色々と疲れ果ててしまって、それから1年ほど活動休止することになるのだが、一人になっても絶対にこの漫画を描き続けるという意思だけは、ひとつも変わらなかった。

そしてクラウドファンディングへ

あれから1年半ほど経って、あの時見えたビジョンに今少しずつ近づいている。

今年の夏はひょんなことからWリーグさんとつながって、まさかのまさかで来年のオールスターゲームのキービジュアルも描かせていただいた。

去年、一昨年とただの観客だったんすけど…!?

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Wリーグさんと仕事をするのは夢の一つだった。でも正直、こういうのって漫画がヒットしてから声が掛かるものだと思っていたし、1度漫画を打ち切られた時点で社会的な信用はまた0からやり直しだ…と覚悟していただけに、嬉しいハプニングだった。

何よりバスケ界の発展を願う気持ちはお互いに同じなので、同じ志を持った人たちと繋がれたことが本当に嬉しい。自分の行きたい道を信じていいんだと思わせてくれた。


その勢いのまま、今度は再び漫画の続きを描くために動き出した。1巻の続きを描いていくために。

クラウドファンディングの開催が今になったのは、出版権が戻ってくるのが確定したのが今年の9月初旬だったからだ(さすがにそこが不透明なままでは動けない)。正式に手続きが終わっていて、来春僕の手元に出版権が戻ってくる。

確定後すぐにCAMPFIREのキュレーターさんに相談しに行き、しかしなぜかその翌々週がんが発覚するというアクシデントもありつつも(どういうタイミングやねん)、ようやくクラウドファンディング実行に至ったのだった。

11/18からスタートして、もう残すところあと8日を切ったところだ。バスケ好きやLGBTQの方たちはじめ、この作品に共感してくれた方たちが支援してくださっている。

こう言うとわりと胡散臭いのだが、SOMECITYを観に行った時に見えたあのビジョンが、いま現実になってきている。そしていつになく楽しい。

「成功したらいいなぁ」とか、そんな半端な気持ちじゃない。ここで達成することができたら、この成功は今後の大きなエネルギーになる。

時効なので色々書いてしまったけども、ここまでの全部が今の道に進むために必要なステップだったんだと思う。

この漫画が輝ける場所は、自分で作ります。次へ進むために、どうか力を貸してください。

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🏀女子バスケ漫画「BREAK THE BORDER」続刊制作プロジェクト画像1

📅開催期間:11/18(月)~12/24(火)🎄*あと8日!
🔥目標金額:900,000円(現在達成率73%)
🤝12/17現在までのパトロン数: 89名

↓とにかくまずはプロジェクトページを読んでみてください!

ということで、クラファンラストスパートSP、第1弾でした。

予定よりだいぶ出遅れてしまいましたが、ラストスパートSPとして、プロジェクトページに書ききれなかったあれこれを期間終了までの間IMAZINEでお届けしていきます。

この作品の続きが読みたいと思ってくれた皆さま、ぜひご支援や拡散にご協力よろしくお願いします!

第2弾へ続く…!!


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