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【放射線の話】『放射線』ってなんなのだろうか?

放射線』という単語はどうもヒトを気持ちよくさせることは少ないように思う。

放射線に関する知識に差はあれど、「『放射線』は怖い、被ばくが心配」という感覚はかなり多くの人が共有しているのではないだろうか。

放射線』は完全に安全なエネルギーではないし、「怖い」という感情を否定するつもりはない。

ただ、全く『放射線』のことを知らないのと、ある程度その素性を理解しているのとでは、感じる恐怖の種類が少し違うんじゃないかな、と思い、『放射線』の話をします。


そもそも『放射線』ってなんなのだろうか?

放散する熱、LEDからの目にしみる白色光、太陽から容赦なく降り注ぐ紫外線、声を遠くに伝えられるラジオ波。

これらはすべて放射線の一種である。

更に言うと、電場と磁場が互いに交わりながら波打って進んでいく、電気と磁気の波、電磁波だ。

(以下は電磁波のイメージ)

それぞれ、赤外線、可視光線、紫外線、電波などと、違った名前が付いているものの、根本的には同じ放射線であり、電磁波ファミリーだ。

じゃあ違いはというと、波と波の間の長さ、波長である。

目に見える光は400-780nm(ナノメートル)、細菌くらいの波長であるのに対して、電波は波と波の間が1km以上になることもある。

波長が短ければ短いほどエネルギーは高く、それによって物体との相互作用も変わる。

人類はこの電磁波の持つエネルギーの違いをうまく使いながら、文明を発展させてきたのだ。


さて、これが電磁波という放射線の話であるが、「目に見える光も放射線」と言われても全くピンと来ない。

「『放射線』は怖い」というときの『放射線』とは一体何なのだろうか。


僕たちが普段『放射線』と言うと、それは「原子の構成要素である電子を吹き飛ばすエネルギーを持った放射線」を指すことがほとんどだ。

例えば、紫外線よりはるかに波長の短い電磁波であるX線は、体の奥深くまで突き抜けていって、あるところで電子にぶち当たってそれを吹き飛ばす(電離といいます)。

この「電子を吹き飛ばすほどのエネルギー」ってのが少々厄介。

というのも、世の中の物質は原子という、ある種の最小単位が寄せ集まって構成されているわけだが、その殆どの原子は電子の数と陽子の数のバランスが取れた安定した状態で存在している。

その落ち着いてる原子に『放射線』が当たり、電子が吹き飛ばされてしまうと、電荷のバランスが崩れ不安定な状態になる。

細胞の中に不安定な状態の原子が出来ると、そいつが周りの原子から電子を奪い取ったり無理やりくっ付いたりして周囲の分子構造を変えてしまい、ひいてはタンパク質の破壊につながったりする。

『放射線』は時にタンパク質を壊す力を発揮する。


それが運悪く遺伝子(遺伝子を記録する染色体もタンパク質で出来ている)を壊してしまうと、細胞が死んでしまったり、将来的にがん細胞になってしまったりするのだ。

放射線』の特に電離という作用が怖いイメージの元なのだと思う。

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