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褒め方・叱り方-1|子どもを強く叱っても悪循環:「叱る」から「伝える」へ

1. 子どもを叱った後の親の気持ち

子育てをしているとついつい強く叱ってしまうこともあると思います。
教育現場などでは「おこる」と「叱る」の違いについて共有されることもありますが、この「叱る」という言葉も人によっては受け取り方が異なると思います。たとえば、子どもが危険な行動をした時には「叱る」ということも必要だと感じる方は多いと思います。「このような状況でもなお、『叱らないで、話し合うべきだと思う』という発言をされる方がいたとしたらどうですか?」という質問を子育て中のお母さん方が集まる学習会などで質問することがあります。「綺麗事きれいごとばかり言ってて、子育てやってない人なんだろうね」という批判的な回答をうかがうこともあります。しかし、そのような批判的な回答をされている方の多くは、「子どもを強く叱ったあとは言いすぎたと反省することも多いから難しい」という気持ちも語っていただけます。この記事では、「話し合う」というところまでいけないまでも、どうやったら伝わるかという視点から、そのコツを紹介したいと思います。

2. 強く叱ることから始まる悪循環の仕組み

子どもを強く叱った後に「気持ちがスッとした」ということがあれば、これは「おこる」に近いアプローチです。このようなスッとした経験が何回も繰り返されると、親のストレスで子どもを叱ってしまいやすいため、どうしても避けたいアプローチの1つです。子どもの目線からみると、「いつもは許されているのに・・」となり、行動の善悪を考えて行動するのではなく、親の顔色をみて行動するようになってしまします*。

子育てをしていると、子どもに期待する気持ち強くなっていき、ついつい「なんでわかってくれないの・・」という様々な気持ち(不安・悲しみ・怒り・落胆など)がわいてくるものです。ここでポイントとしたいのは、親の気持ちを中心に伝えるのではなく、子どもの行動に焦点をあてて伝えることが大切だということについてです。

強く叱るというモードの時:親の気持ちを中心にしていることが多い
伝えるというモードの時:子どもの行動に焦点をあてていることが多い

叱る

上のスライドは、強く叱るというモードの時に生じる悪循環あくじゅんかんについて表したものです。悪循環あくじゅんかんの軸になるのは、「罰が強くなる ー 罰に慣れる」という関係性です。たとえば、大きな声で叱った時に、子どもが騒がしくするのをやめてくれたとします。この時の「大きな声で叱る」は、子どもにとっては罰として働いていますが、毎回大きな声で叱り続けた場合は「罰」に慣れていきます(もはや、罰の働きはなくなっています)。しかし、近くの物を叩いたり、おどすような内容の言葉を言うなど、罰の内容を強くしたら子どもが再び騒がしくすることをやめてくれるかもしれません。しかし、もうお分かりの通り、この方法は「罰が強くなる ー 罰に慣れる」の循環から抜けられなくなる予兆であって、望まない結果を引き起こすことにつながります。
この循環じゅんかんから子ども自身が抜け出すこともあります。それは、「行動を隠す」というパターンです。しかし、子どもが隠れて行動したとしても大体は明るみになります。そこで強く叱ったとすれば、子どもは隠れて行動するのが巧妙になり、巧妙になれば、大人(親)は子どもを疑うという別の悪循環が生まれてしまいます。他にも様々な子どもの反応についてスライドには表現していますが、それらをみていると、「叱る」ということよりも「心配になってしまう」というようなものが多いことに気づきます*。

3. 上手に伝えるコツ

強く叱ることは、子どもの成長にとっても、叱っている親にとっても、双方にメリットはないことは分かっていただけたと思います。それでも、強く叱ってしまう・怒ってしまうという場合は、「親のストレス状態」や「やりきれない様々な感情」を緩和する方法も大切になっていきます*。ここでは、子どもに伝える方法として4つのアプローチにしぼってご紹介します。

短く伝える(長々と叱らない)
長く叱っているうちに、子どもに伝えたい論点がずれていきます。小さなお子さんの場合は、叱られている状態で多くの情報を処理できるまで発達していないため、真面目に聞くほど混乱してしまうかもしれません。

交換条件で脅かさない
「次やったら、ゲームは無しね!」というたぐいの脅し文句の効果はあるでしょうか?良い行動にご褒美がある方が双方にとって気分がいいと思います。

謝ったらすぐ元通り(引きづらない)
謝ったら許すということが大切だと思います。謝らせるだけ謝らせて引きづるのはフェアーな関係ではありません。もし、叱りすぎり怒りすぎたりした場合は、大人も謝りましょう。

今回のことだけで伝える(他のエピソードと連結しない)
強く叱る時にやりがちなのは、「この前だって・・」と過去のエピソードを持ち出すパターンです。その都度、状況や理由は必ず違いますので、今回のことに限定してその都度伝えていきましょう。

子育てをしていると、ついつい強く叱ってしまうこともあります。もし、強く叱ってしまったな・・と感じたら、子どもに「強く言いすぎちゃったね、ごめんね」と謝ってみるのといいと思います。きっと、子どもも許してくれると思います。その時、大人の「感情」ではなくて、伝えたかった「内容」についても考えてくれるかもしれません。子どもはどんどん発達していきますが、一回で学べるわけではありません。子どもの素晴らしい行動を褒めるという視点も取り入れつつ、そして、強く叱ってしまった自分の心もケアしつつ、子育てを一緒にしていきましょう。

備考
文章中にある「*」の部分は、別の記事で詳細に解説していたり、解説する予定のものです(Twitterなどでは公表しないで、noteを通して随時お知らせいたします)。

心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。