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本当に仕事がデキる人の品格(3156字)

どうも豚女です。

今回は、以前勤務していた職場での、あまりにも凡人とはかけ離れた『本当に仕事のデキるスマートな女性』に出会ったときのエピソードを披露したいと思う。間違った方向に意識高い系勘違いブス女よ(私のことだよ)、こういう人を真のスマートっていうもんだ。というか、色々真似できない、無理。

その職場は、とある超大手外資系企業の広告部門。その企業のサービスを使ったことがないという人を探すほうが難しいぐらい有名な企業である。私がそこで期間限定で働いていたときのこと。

日本の大手広告代理店で思い浮かべるのは、博報堂様、電通様、ADK様あたりがぱっと出るかと思うが、今回私が伝えたい方はそのうちのいずれかの出身である。仮称をAさんとする。

Aさんは年齢不詳だがおそらく40代に差し掛かるかどうかという年代。同年代の女性部署長がいるのにAさんは基本単独ムーブであり、彼女だから許されているような独特ポジで、基本デスクにはおらずいつも他部署の誰かと打ち合わせしており、何十階もあるフロアで作業スペースも多数あるため大体そのどこかにいる。何をやっているのかはよく分からない。身長は170cmあるかないかぐらい、髪の毛はハーフアップ、身の回りのものは全てハイブランドで服はセットアップ。靴は細い足に似合う折れそうなピンヒール。毎日違うピンヒールを履いてきて、同じ服を見たことがない。煙草も吸わない。必ず片手にテイクアウトのコーヒーを握って颯爽と現れる。Aさんが出社すると周囲の空気がちょっと変わる。たくさん稼いで会社にも利益をもたらして、その実績を買われて今ここにいることがすぐ分かる。スタスタ歩いてにこにこ、アハハとよく笑う。モテない訳が無い人生だろうな。

1ヶ月ぐらいが経ったある日、Aさんが私に仕事を手伝ってほしいとチャットを送ってきた。勿論大丈夫ですと返答し、たくさんあるミーティングルームのどこかを押さえて打ち合わせがなされた。メインは社内のwikiを色々変えたいというものだが、Aさんはマカーで、自身の端末で編集するとレイアウトが崩れる、編集できない、助けてぇというのが最初の依頼だった。使用している端末の差もあるが、退職者たちがイジった蓄積でよく分からないコードだらけという、パッと見では編集しにくい画面も多くあった。こんな大企業にも新卒まみれのパリピ会社みたいなミスがあるんだと思って意外だった。ただ、社内wikiだけでも何十種類、それぞれ日本語版と英語版があり、尋常でない容量ではあったので、それはそれで仕方ないのかもしれない。

以降、Aさんから呼ばれることが増えた。Aさんからの依頼はいつもクリアな説明で分かりやすく、納期の設定もきっちりしてくれる。仕事が山積みで終わらないよぉ~、●●(私)助かるありがとう~など、見た目に似合わず隙を見せるときがある。どうやら、Aさん主導で他の部署を巻き込んでの新広告プランを作成しているようで、私はその内容をwikiに落とし込むサポートをするというものだった。そのプランは数ある広告プランの中でも飛び抜けて超高額価格帯であった。サステナビリティ・ダイバーシティー・ジェンダーレスに必ず取り組んでいるような大手勝ち組企業しかターゲティングしてない感がびんびんに伝わる。一件一件の契約金額がとにかくでかい。美しい容姿からは想像できない大胆さであり、仕事に対してはかなり肉食。闘争心が全く見えないのにいつの間にか心臓取られちゃってるみたいな。巧妙で気持ちいいほどのマーダーセンス&ギャップがすごい。

話の流れで、『今度古巣(冒頭の超有名大手広告会社の一つ)で講師で呼ばれたから行ってくる。なんか昔の同僚の前で変な感じ(笑)』とのことで、某有名私立大学出身、仕事デキる、社内外から信頼されている、超絶美人、飾らない人柄、なんかもうすげえとしか言いようがなかった。

Aさんがとある部署共有ノートで書かれたことの一つで、ある本を紹介していた。なんとかの品格とかなんとかのマナーとかそんなタイトルの本だったが(読もうと思って忘れた)、営業に関してとても参考になる、どこどこに共感できるなどと感想を述べていた。また、Aさんは朝は誰よりも遅めに出社するけど、誰よりも遅くまで会社に残っていた。いつかの会話で聞こえてきたことによると、朝も自宅で仕事してから出社しているらしい。デキる人は、努力を怠らないのだなと、これもまた感心しきりだった。

とまぁ、これまでAさんとものすごく深く関わった訳ではない私が、なぜ彼女を紹介したいと思ったのかということだが、その理由は私の最終出社日にある。その日はやらなければいけない仕事も特になく、貸与品返却の事務作業のために出社したようなもので、定時より3時間早く退社だった。17時になり、では皆様これまでお世話になりました、ありがとうございましたと告げ帰ろうとすると、同じく契約社員で働いていた女性から隠してくれていた花束を渡され、他の部署員の方も立ち上がって私の方を向いてパチパチパチ~、サプラ~イズと温かい見送りが始まった。普段そういうことする雰囲気じゃないし、なんか全員から一斉に見られて気まずい。さっさと帰りたかった。

しかし、Aさんの姿はそこにはなかった。

ちょっと周りを見ると、Aさんはスタンディングの作業スペースでもくもくとMacbookに向かってタイピングしていた。いかにも忙しそうな雰囲気。だがさすがになんか行ったほうがいいのかなぐらいに思ったのか、パチパチパチ~の終わり頃に部署の人の群れにひょこっと合流し、手のひらをピンと張って拍手しても音でない感じのアレで5パチぐらいしてくれた。拍手が落ち着き、部署長が最後軽く私に話しかけてきたタイミングで、Aさんは一瞬ニコッとして瞬時に真顔に戻り、スッと消えてスタンディング席に戻っていった。

なぜそれが?と思うようなことだが、私にとっては強烈にプロフェッショナルを感じる出来事だったのだよ。元々私は期間限定であるということが分かっており、temporary hiredに長々と付き合っても何の意味もないのであって、今絶賛対応しているクライアントとのコミュニケーションの方が優先というのは逆の立場であればすごく理解できる。いい意味で仕事人間、いい意味でドライ。すごくかっこいい。こういう方の身につけるプラダやヴィトンはとてもサマになっている。安易にハイブランド物を身につけるなということではなく、自分で稼いだ金で身につけていて、それを下世話感を出さずに着るからかっこいいのである。なんだか服やバッグ達も喜んでいるように見える。

▼今回のサマリー

その後の就職先では、Aさんと関わった経験をかなり参考にさせていただいた。ビジネスマインド、持つべきスキルセット、カリスマ性、現場でのムーブ、同僚やクライアントへの気遣い、仕事へのモチベーションなどの部分で。本当に仕事がデキる人は、人間もデキていて、周りを自然に巻き込んでいく。それは一朝一夕にできる芸当ではなくて、そしてそういった人は人知れず努力していたりする。その経験値で以て自信やプライドも持ち合わせている。あんまりそこまで悩んでない。悩むとしても、明日の朝ごはん何にしようかな、とかそういうのばかり。

なんか、存在自体が、品格。

現場で、息を呑むほど尊敬に値する人に出会える確率なんてそこまで無いものだと思うので、特筆させていただいた。こんなスーパーワンダーウーマンには程遠いが、憧れだけならしてもいいっしょ。自分が仕事をする上では、Aさんならどうするかなと考えるようになった。スマートへの道は険しいが、難しい道ほどやり甲斐があるってもんで。

では。駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

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