見出し画像

恋は盲目、彼が私の全てだった

彼に映る私はいつも笑顔だった


眩しいくらい青々としていた木々の葉が
少しずつ枯葉に変わってきた頃

何となく彼との関係が終わりに近づいてることを感じていた
だけど私はそれを認めたくなかった

憧れの彼とやっと付き合えて
本当に毎日が幸せだった
ただ彼から愛されることばかり考えていた

デートに3時間遅刻されても
他の女の子との噂が立っても
私は笑顔で蓋をして何も言わなかった
彼にとって良い彼女でいたかった

そしてそんな私を彼はいつまでも
愛してくれると信じていたから

彼のいない世界なんて生きていけないと
本気で思っていた

最後まで本当のことは言えなかった

画像2

通り沿いの小さなカフェ

ランチで賑わう店内で
彼はテーブルを見つめながら黙り込んでいた

ひどく口を開きにくそうにしている      彼を見て嫌な予感がした
私はどうしていいのか分からず
同じようにテーブルを見つめた

「、、、別れよう。」

重い沈黙を破ったのは彼の言葉だった


「ん、、、とっ。」

いざこうして別れを告げられると
何も言葉が出てこなかった
いつかは来ると覚悟していた
この瞬間に頭の中が真っ白になり
何も考えられなかった

でも、私には「別れたくない」と
伝える勇気はなかった

今ここで別れたくないと泣き出したら
本当に終わってしまう気がした

「彼にだけは嫌われたくない」
そう思いながら
溢れ出しそうになる涙を必死に堪えて
私はテーブルを見つめたまま2回頷いた

「じゃあ、駅まで送るね。」

そう言って先に席を立ち上がった彼に
黙ったままついていった

カフェから出ると
ぽつぽつと雨が降り出していた

傘を持っていなかった私は
右手で頭を押さえていた

そんな私に彼が立ち止まって

「天気予報見てないんでしょ?また傘忘れてくると思ってたよ。」

と言って、彼は私に傘を渡してくれた

雨に濡れながらまっすぐ駅に向かう
彼の背中を見ながら、初めてのデートの日を思い出した

あの日も外は雨が降っていて
私達は1つの傘を分け合って歩いていた

お互いまだ慣れない距離に
少し緊張していて
ぎこちない会話をしていた

話す言葉、一つ一つに返事をしながら
彼の方を見上げると
彼の肩は雨で濡れていた

私が濡れないように
と傘を傾けて、気遣ってくれていた

今はこうして
傘を差して歩く私と
雨に濡れながら駅に向かう彼

少し前に彼はいるのに
2人の間にとてつもない距離を感じて
ただ彼の背中を追うことしか出来なかった


駅前の階段下で、人が行き交う中
彼が私の方を振り返った

「色々とごめん。一緒に居れて本当に楽しかった。これからも応援してるから幸せになってな。」

「うん、お互いにね。じゃあね。」

そう伝えることが精一杯で
彼の傘を持ったまま、顔も見ずに
私は急いで電車のホームに向かった


やっと溢れ出した彼の知らない涙

画像3


別れてから2年が経った日のこと
ふと彼との別れを思い出した

「関東では夕方以降雲に覆われ、一部で雨雲のかかるところがありそうです。」

ニュースから流れてきた声を思い出して
玄関で傘を取った

たまたま手に取った傘が
あの時、彼からもらった傘だった

彼と別れてから半年間、私は
何かある度に泣いていたことを思い出す

「こんな風に彼の前でいっぱい泣けたら楽になれたのにね。」
そう友達に慰められながら、目がパンパンに腫れ上がるまで毎日泣いていた

そして散々泣いて、涙が枯れ果てたある時
すっと心が軽くなった

「好きでいてほしい」
そう願っていたけど

いつの間にか
「嫌われたくない」
に変わっていた私が
すごく可哀想に思えたからだった

今となっては
最期まで優しさをくれた彼との恋に
勝手に自分で自分を苦しめていたんだな
と、やっと思えるようになった

「今日でこの傘ともお別れしなくちゃ」

なぜか捨てることができなかった彼の傘を
私はそっと握って歩き出した

「夏の記憶のようにあなたを忘れたい」

Seikeさんとスタジオに入って新曲を作っていたときに「こんな曲も作ったよ」と聴いた時に、大好きだった人との別れを思い出しました。

恋は盲目、今思えば私には彼しか見えていなかった。この恋が終わったら全てが終わると本気で思っていたからこそ、泣くことさえできない付き合い方をしていました。
きっとこんな恋愛した人も多いんじゃないかなと思います。

とっくに大泣きしていた自分の心に嘘をついて、彼の前では笑顔でいたあの頃の自分に歌うようにこの歌を歌っています。

良かったらあなたの中の忘れられない恋を思い出しながら聴いてほしいです。



・各種配信サイトへ

・3rd mini album「いまさら、君に」


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
saki(secondrate)

宜しければサポートお願いします。あなたのその想いで私は救われます。これからも紡ぐ言葉や音があなたの心に響いますように。

Thank you!
17
secondrateというバンドで歌をうたってます。 ここでは歌の元となったエッセイを公開中。 あなたの心に残りますように