お蕎麦屋の店主が私に教えてくれたこと
家から少し車で走ったところにお蕎麦屋さんがあります。住宅街にあって、そんなに便のいいところでもないのですが、気品と、いかにも美味しそうな雰囲気の漂っている、車で前を通るたびに目で追ってしまうくらいオーラのあるお店です。(オーラは私には見えないけど。)実際、いつも車がいっぱいで人気店のようです。
先日、初めて行ってみました。
平日のお昼時でしたが、駐車場も満車でしたので車が1台出るのを待って中に入りました。店内も満席でしたので、少しフロントで待機。
お得意の観察タイムが始まります。
スーツ姿のサラリーマンを見ては『この辺に営業で来てはるんかな。午後からも頑張って〜。それにしても、サラリーマンの昼食にしては高すぎへん?ひとりやねんやったらチェーン店の安いうどんでいいんちゃうん。』←完全にイメージ。ほっといたって。
レジには芸人さんが来店された時の写真が。その中には霜降り明星のせいやさんが。サインの日付をみると2018年●月●日。『ということは、M1グランプリ取る前やな。私この時知らんかったから会ってもわからんかったな〜。』←なんの話。
そんなくだらないことばっかり。
そんな時にも、如何にも美味しそうなお蕎麦と天ぷらのセットみたいなものが次々とテーブルに運ばれていきます。
オープンキッチン風な調理場を見てみると、店主らしき人が黙々と調理しています。背中からなにかが醸しでています。こだわりがありそう。こりゃ益々期待が膨らみます。
順番が来て、私も蕎麦と天ぷらのセットを注文しました。待っている間、蕎麦菓子を頂きながらまた観察が始まります。
この店はどうやら、常連さんが多いようです。
お会計の時にレジの女性とお客さんが気さくに会話をしていたり、お客さん同志でもたまたま会ったのか、会話されたりしていました。背中から何かを醸し出していた店主も、ちょくちょくお客さんとの会話を楽しまれたりしていて、意外とアットホーム。いい意味で予想外でした。私も帰りに店主とお話できるのかな、とか思ったりして。
「あ〜素敵なお店だな〜」って素直に思いました。そういえば、このお店すごく居心地がいい。
そうこうしているうちに、お蕎麦と天ぷらセットがやってきました。
お蕎麦は独特の手打ち感、コシがあり香りもあってとても私好みな感じ。天ぷらもとてもボリュームがあって美味しかったです。(私はあまりグルメではありませんので食レポが下手で、ズッコケた方がいればすみません。)
お腹いっぱいで食事も終わり、気づけばランチタイム終了間際、店内には私たちだけになっていました。
主人がお会計を済ましている間、店内を見渡しますが店主はいません。
「ごちそうさまでした」とだけでもご挨拶がしたいと思っていたので、少し残念。
後ろ髪ひかれながら駐車場へ向かうと、店の裏口となる、そこに店主がいました。
「ありがとうございました!」『ごちそうさまでした〜!』
ご挨拶ができてよかった。もう少しお話したい気もしましたが、少し私たちと店主の間に距離があったのでやめておき、車に乗りこみました。
車を出そうとした瞬間、店主が車の少し側によってきたので、主人は窓を開けました。
『10月頃から新そばになるので、よかったらまた来てください。駐車場はね、混みやすいので、土日であれば●●の駐車場も使ってもらって構いませんので。』
ズキュン。
この言動に私は心を奪われてしまいました。
しかも、この人、私たちが初めて来たってわかってる。
そこには、お蕎麦への愛と、私たちへの愛も感じられたんです。
なぜか涙が出そうになったんです。
一見たわいもない、営業に聞こえそうなフレーズも、伝える側の心のあり方で相手への伝わり方は180度変わるんだ、そんなことはわかっていたつもりだったけど、その店主の綺麗な心なのでしょうか、鳥肌がたちました。
え?そんなことで?と思うかもしれませんが、とにかく私はめっちゃ感動したんです。
計算のない純粋な心や謙虚な気持ちは、人の心を動かし綺麗にする力があるんだと。
うちのスタジオもあんな蕎麦屋さんのようなところにしたいなぁ。
しがらみのない、心が自然と開けるような人や空間。
そう心に想ったのです。
どこへ行き、誰と会い、何をするのか。小さな選択の連続が人生を大きく左右します。しかも、それは波長で引き寄せ合います。
10月になったら絶対行くし、なんならそれまででも行く勢い。
店を出てから30分は感動が冷めやらず、主人に「いつまで言うてんの?」と言われながら、次の場所へと向かいました。
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