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テントの中で人生が変わった

 土砂降りの音と蝉の大合唱が交互に聞こえて来る、不思議な天気だった。ところで、天気のことを迂闊に発言すると地域が特定されるから気をつけた方がいい。私の住んでいる所では赤い雹が降り続いています。 

 2023年まで生きていないといけない理由が発生した。

 シルク・ドゥ・ソレイユ、好きなんです。と言っても生で観たのは2018年のKURIOSが初めてで、それを機にファンになってしまった。つい2日前の記事で「芸術作品を見ても大して感情が動かない気がする」と書いたが、人生でただ一度だけ猛烈に感動した作品がKURIOSである。いや、「ただ一度だけ」というのは嘘だった。2回行ったから。

 KURIOSはもちろんどのプログラムも素晴らしいのだが、特に好きなのが「シアター・オブ・ハンズ」という演目。
 その名の通りアーティストが「手」でキャラクターを演じる寸劇のようなもので、初期のサトシみたいな帽子を被った「手」が冒険する様子をリアルタイムの映像で観るという、なかなか変わった演目だ。空中ブランコやらアクロバットやらが続く中で突然静かになったかと思えばスクリーンに「手」が映るので、初めはなんじゃこりゃと思った。
 物語半ばで「手」はステージを飛び出し、最終的には客席にいる適当な観客の頭の上かなんかで幕を閉じる。選ばれた観客は照れ笑いし、周囲でも笑いが起きる。
 
 私はこのシーンでなぜだか物凄く感動してしまった。この集団は「人を楽しませること」だけのために存在しているのだと思った。エンタメというものがこの世に存在するただ一つの理由を、そのとき目撃できた気がした。

 あれから4年経ってもこのときの感動を上手く言語化することができていない。もう一度生で観て確かめてみたいと思っていたけれど、新型なんたらウイルスのせいでなかなか叶わなかった。だから今回の来日は本当に本当に嬉しい。
 たとえどんなに仕事が辛くてもこのことを思うと、自分のやっていることもどこかの誰かを同じような気持ちにさせることができているんじゃないかという気になる。人の為に生きたり、人に生かされたりすることはあんまり得意じゃないけど、こういう気持ちを授受できる世界って楽しいかも、と思うときがある。

 舞浜で常設上演されていた頃に一度も観に行かなかったことが、今のところ人生最大の後悔だ。過去に戻って何か一つやり直せるのなら、迷わずここに戻る。

 シャチハタを買いたいのだけれど、百均に行くといつも自分の苗字だけが品切れになっている。そんなに多い苗字ではないのに。近所の同じ苗字の奴が買い占めているのか、もしくは同じ苗字の大家族がうちの街に引っ越してきたのか。

 なんなんだ。

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