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【企業からNPOに転職をしたい人にオススメ求人】京都大学 iPS 細胞研究財団 寄付・賛助会員制度担当部署職員

ファンドレイザーを目指す人にチャレンジして欲しい求人

2020年4月から公益財団化された京都大学 iPS 細胞研究財団が職員募集をしていますのでご紹介いたします。この求人はファンドレイザーとして幅広い知識やスキルが求められるので、とても成長できる職だと思います。ここで経験を積むことができたら、どこの団体でもいける力をつけることができます。また、京都の鴨川沿いのオフィスに通えるのも魅力の一つです。

(写真をクリックすると求人情報が記載されたPDFが開きます)

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収入面も各種条件ありますが、30歳代~40歳代で400万円~450万円あり、各種手当もあることから、企業からNPOに転職する上で申し分ないかなと思います。きっと多くの申し込みがあろうかと思います。このnoteの読者で応募したい!と思った方が、採用担当者に一目置かれるためにまとめていきます。

団体と職務内容の確認

この財団の理事長は山中伸弥教授です。財団の設立経緯については以下動画でご説明されています。

ホームページ:https://www.cira-foundation.or.jp/j/index.html

職務内容は以下です。

【職務内容】
・寄付者、賛助会員やご支援をお考えの個人・法人とのコミュニケーション
(メール、電話、郵送、webミーティング、対面、プレゼンテーション等)
・ご支援の受入れのためのインフラ整備・改善
(契約書の確認、情報システムの改善、webコンテンツ執筆、効果測定等)
・ご支援者の満足度向上のための各種施策
(イベント企画・実施、ご支援者への報告テキスト・動画等の作成、メール配信等)
・寄付募集活動の効果・効率を向上するための各種施策
(アクセス解析、webサイト改善、広告クリエイティブ改善、マーケティングオートメーションの管理、予算管理等)

ここまで詳細までファンドレイジングの様々な業務を明文化して記載されているケースはないので、かなりファンドレイジングに精通していて、すでに戦略をたてたり、計画をしていることがわかります。

一般的な寄付担当や広報の範疇ではないこの求人のポイント解説

この職で求められているのは、寄付に関して幅広くカバーするマーケティング職です。一般的な寄付担当や広報の範疇ではありません。以前noteでマーケティングに関するまとめをおこないましたので、それを参考にこの求人のポイントをみていきます。

マーケティングの全体像を以下の7つとして見ていきましょう。

戦略の7構造とポイント
➀ポジショニング論 :「違い」
➁ブランド論 :「らしさ」
➂アカウントプランニング論 :「深層心理」
④ダイレクト論:「反応」
⑤IMC論:「接点」
⑥エンゲージメント論:「関与」
⑦クチコミ論「情報の人づて」

京都大学 iPS 細胞研究財団では、➀の他団体の違いは明確です。団体の理念である「最適なiPS細胞技術を良心的な価格で届ける」ことで難病の治療法が確立されたり、薬ができたります。これが社会に役立つことは多くの人が理解しやすいものでありますし、それを提供できる機関も少ないことから、他団体の差別化は大きなものになります。そして➁ブランドとしては、iPS細胞といえば山中伸弥教授で理事長としてしっかりとメッセージされていることもあり、これも明確です。多くの団体との差別化要因となる➀「違い」➁「ブランド」をしっかり持っているといえます。

そして、➂④⑤の支援者の向き合い方としては職務内容に記載されている「寄付募集活動の効果・効率を向上するための各種施策(アクセス解析、webサイト改善、広告クリエイティブ改善、マーケティングオートメーションの管理、予算管理等)」とあるように、すでに財団内で様々なマーケティング施策やシステムを運用していることが想定されます。

ホームページや求人を見る限り、あまり見えてこないのは⑥のエンゲージメントと⑦のクチコミです。なので、この部分をアピールすると好印象につながるはずです。

エンゲージメントについて先ほど紹介したnoteの記事を抜粋します。

エンゲージメントは「SNSにおけるユーザーの反応」「イベントへの参加」「愛着」「つながり」といった意味が含まれます。インターネット上でインタラクティブなやりとりができる時代になってから生まれた概念でです。「エンゲージメントとは、お客さんが能動的に関与することで生まれる、心理的なつながり」(P239から抜粋)で、ポイントは能動的な関与です。インターネットの普及に伴って、情報量が多くなり意識的・無意識的にスルーされるようになりました。その中でコンテンツやプラットフォームの形で情報を届け、受け手による自発的な関与を引き出す手法です。

これまで寄付したことがない人に対して、財団のことを知ってもらい、関与してもらえるイベントやセミナーの実施をしたり、中長期的に寄付を促すはたらきかけをすることになろうかと思います。

⑦の口コミについてもnoteの抜粋をご紹介します。

ソーシャルメディアの発達により、「情報の量」「情報の信頼性」「情報に接触する順番」が大きく変わることでクチコミの重要性が大きく変わってきました。現代の人は、企業から発信された情報よりも、人を介して得た情報の方が信頼できると思い、様々なニュースや新商品情報、CMなどをソーシャルメディア経由で得ているのです。

寄付に関するインフルエンサーと関わりを持って、財団への寄付体験がよりよいものであることを、多くの人に伝えていくことを積極的にしていくことが求められていくはずです。

提出書類のレポートでみられているポイント

今回の求人でおもしろい取り組みはA4  1枚~2枚のレポートを提出することです。お題は「これまでiPS細胞研究に寄付したことのない方々に財団への毎月のご寄付をしていただくためのターゲティング、ポジショニング、コミュニケーション」です。

求人内容の応募資格を確認すると以下の記載があります。

【望ましい方】
・デジタルマーケティング、遺贈・高額寄付者対応の経験を有する方。
・新しい知識を学ぶ意欲が高く、問題を客観的に考察でき、改善策を提案できる方。

つまり、ここでは、先に挙げたマーケティング論➀~⑤について理解していることを示した上で財団の取り組みや強みを述べた上で、遺贈・高額寄付者の新規寄付者を増やすための⑥⑦の視点で語ることに重きを置くと、採用担当者に好印象を与えることができます。

遺贈や高額寄付者に対するアプローチはどの団体も知りたくてもなかなかキモがわからない領域です。最近の動きでは遺贈寄付を増やしていきたい団体同士が連携をして相続・遺贈のセミナーを開催したり、新聞の広告を出したりといったことをしています。

こうした個々の活動だけでなく、社会的に遺贈寄付をしていく機運を高める運動も盛んになってきました。今年日本で初めて開催される「遺贈寄付ウィーク2020」がよい例です。遺贈寄付ウィークは2020年9月5日~9月14日の期間中に様々なキャンペーンを実施します。

9月13日は International Legacy Giving Day,国際遺贈寄付の日。10年近く前から、英国をはじめとする海外ではこの国際遺贈寄付の日の周辺で、遺贈寄付をより知ってもらい、理解を深めてもらい、そして遺贈寄付の準備を推奨するキャンペーンを実施してきています。(HPより抜粋)

このサイトで見ていただきたいのは以下のページです。遺贈寄付を集めることに注力している団体が協賛パートナーとして名を連ねています。このいわば遺贈寄付集めているコミュニティにしっかり入っていくことがインフルエンサーにつながる道です。

(クリックすると遺贈寄付ウィーク2020のページにとびます)

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また、遺贈寄付をするには、弁護士・税理士・司法書士と相続の専門家が関わることが多いです。そうした窓口となる士業は寄付希望者とのつながりはありますが、寄付先のNPOや公益法人とはつながりが薄いです。そうした遺贈寄付に取り組む士業を増やす協会団体に関与していくことも重要になります。

加えて、これも地味に大切なのですが、遺贈寄付はいきなりとることはできません。仮に寄付者の遺言書に遺贈寄付の記載をしてもらったとしても実際にお金が入るのは数年先となります。この遺贈寄付の特性をきちんと理解していることを示した上で、遺贈寄付に至る前段の生前のご寄付や継続寄付を獲得していく流れも考慮にいれておくとトレンドの理解だけでなく、全体像を見えていて地に足のついた活動ができる人の印象を持ってもらえると思います。

さいごに

ファンドレイザーの役割は団体によってまちまちですが、今回の求人では王道のスキルセットを得る経験ができる内容になっています。収入もしっかりありますので、企業からNPOに転職をしたいと思っている人の多くにチャレンジしてもらいたいです。

また、今回提出書類としてレポートがありましたが、これは求人側から見ると、採用活動を通じて気付かなかったアイデアや企画を得る機会になっているので、人となりも見れるしアイデアも得られる一挙両得の策でとても感心しました。ケーススタディとして多くの人と勉強会したいくらいのテーマです。

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