デザイン思考とは何か?②デザインの民主化に貢献?

前回の投稿ではデザイン思考について、主に従来型の問題解決と対比しながら考察しました。

デザイン思考は一定の価値あり。ただ、何でもできる打ち出の小槌ではなく、フレームワークの一種であるため制約もあると述べました。

これに関連して、KESIKIさんのnoteにて、魂こもった素晴らしい内容が語られていました。ぜひ紹介させてください。

さよなら、「デザイン思考」|KESIKI

ただただ付箋を使ったり、ただただ拡散と収束を繰り返したりする、その「デザイン思考」とは、もう、おさらばしましょう。さよなら。さよなら。さよなら。
デザイン思考と「デザイン思考」。その一番の違いは、先ほどお話しした「人の気持ち」を考えているかどうかにあります。デザイン思考は、イノベーティブな「モノ」をデザインするためのメソッドではありません。心地いいとか、楽しいとか、ホッとするといった、「人の気持ち」をデザインするためのメソッドなのです。

このようにデザイン思考の本質が不在となった「デザイン思考」への歯がゆさが表現されています。

私の周りのデザイナーでも、「デザイン思考とは、デザイナー以外の人でもユーザーが抱える問題解決ができるようになる"と主張している"フレームワーク」と揶揄する人がいます。

デザイナーがトライ&エラーを繰り返して体得してきた本質的な部分(=「人の気持ち」を考える)が最重要で、フレームワークだけで簡単に再現できるわけないとのプライドからの揶揄だと思います。


前置きが長くなりましたが、今回は、「デザイン思考が世の中にもたらした本質的インパクトは何か?」について考えます。

さっそくこの問いに対する自身の考えを述べると、「デザイン思考は、デザインの民主化に寄与する」です。 

ここでの民主化とは、どこか掴みどころのないものが、普通の人達にも身近なものになっていくというような意味です。 

具体的に、近年大きく民主化したテクノロジーを具体例にしてみます。

例えば数十年前のテクノロジーを考えてみると、軍や企業だけにあるもので、一般家庭にはあまり馴染みのないものでした。

 

ちょっと極端な例を出すと、1969年にアポロ11号が打ち上げられた時には、テクノロジーは家庭には縁のないモノだった訳です。

ちょうど同じ頃にパーソナルコンピューターという言葉が使われはじめ、1990年代後半くらいからやっと一般家庭に浸透し始めてきました。

 そして今では、かなり多くの人々の日常生活にテクノロジーが入り込んでいます。

朝起きたらスマホをまず見て、寝る直前にスマホを見ますよね。(ちなみに、スマホのCPU性能は、アポロ11号打ち上げを管理したシステムの1000倍以上です!)

このようなスマホ、ウェアラブル、PC等のテクノロジーが身近になったことは当然として、言葉の世界でもテクノロジーの民主化が起こっています。

例えば、「◯◯がバグった」とか、「β版」、「"◯◯2.0""◯◯3.0"」等々は、全て元々テクノロジー用語です。

これだけテクノロジーが浸透しきった世の中だからこそ、皆がある程度テクノロジーを評価できる知識を得て、専門性がある人を正当に評価する。それは、テクノロジーの専門性を持っている人々が経済面をはじめ様々なメリットを得ることを意味します。

 

一方、デザインはどうか?まだまだ一般的に浸透しているとは言い切れません。

ここ数年、ブームが来ていて加熱気味ではありますが、多くの方の口から「デザインってアートでしょ?」「デザイン性は無いより合ったほうが良いよね」のようなコメントが聞かれる今日このごろです。

この前お話しを聞いたアニメーションデザイナーの方は、「とあるアニメに出てくるキャラクターの目を一瞬輝かせるためには100万円かかるんです。それを正直に言うと、ほとんどのお客さんが『え?そんな払えるわけないじゃん』と驚きます。目を輝かせるのは、ストーリー上どんなに重要でも理解されないのです。。」とおっしゃっていました。

 

このようにデザイン分野において、その価値や違いが認知されない限りは、どんなに優秀なデザイナーもそうでないデザイナーも、外から見たら同じ「デザイナー」でしかなく、その仕事の質が適切に評価されることも無いのです。

凄さが分からなければ、適切な対価が払われることもありません。現時点で、デザイナー業は経済的に良い職業とは言いにくく、各社の応募要項も誤解に満ち溢れたものになってしまいます。

こんなデザイン業界の状況を変えうるのが、デザイン思考です。前回投稿では、少し冷めた目でデザイン思考を考察しましたが、このデザイン思考によって、多くの方がデザインに興味を示し、知ろうとしています。

これをきっかけに、デザインってそもそも何だ?何が素晴らしいデザインを作り出すのか?等々に皆さんが触れるようになってくれば、デザインが民主化されていき、デザイナーが経済的・社会的に有利な職業になっていくでしょう。


ここまで見てきたように、

「デザイン思考は、デザインの民主化に寄与する」

これがデザイン思考が世の中にもたらした本質的インパクトだと考えます。

だから、デザイン思考にネガティブな方であっても、デザイン思考こそがデザインの裾野を広げ、デザイナーの価値適正化にも繋がると捉え、皆でプロモーションしていくべきです。

デザインの裾野が広がるにあたり、正しい理解をベースに広まることが重要です。これに超微力ながらも貢献したいので、このブログでも、引き続き噛み砕き投稿を続けていければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?