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UXコンサルの価値って何?

今回は、UXデザイン領域を専門とするコンサルタントがクライアントに提供する価値は何か?について書いてみます。 

これを噛み砕いて書くことで、ぜひこの領域に興味のある学生の皆さんを始め、興味のある皆さんのイメージ具体化に繋がればと思います。

同じような仕事をしている方が10人いれば10通りの答えがあるような問いではありますが、自身の日頃の経験・実感をベースに3点に纏めます。

 

1. ユーザー起点で考え、既存のしがらみを乗り越える

既存のしがらみとは?ここでは、縦割組織です。

これは完全にフィクションですが、とある鉄道会社を例として、組織Aは券売機を担当、組織Bは改札機を担当しているとします。機械ごとの縦割担当です。

そうすると、組織Aのミッションはとにかく券売機を良くすること、つまりあらゆる問いが"券売機を"云々に固定化されてしまっています。

例えば0.1秒でお釣りが返ってくる所を、0.05秒にするにはどうすればよいかを考えます。

ただ、皆さん乗客目線で、駅についてから電車に乗るまでの全体の流れ・体験の中で、その0.05秒短縮はどれだけインパクトがあるでしょうか?

乗客の生活に影響を与えない、券売機の改善がなされるだけです。

 

習慣というのは恐ろしく、一般的に縦割組織の弊害はあちこちで指摘されていますが、実際に組織行動が変わっている例はごく僅かです。

この状況に対し、UXデザインという視点を持ち込み、長年変わっていなかった組織行動に一石を投じるのが提供すべき1つ目の価値です。

UXを良くするという共通の目的を掲げて組織に働きかけ、複数組織の人達が対等な立場で議論できる場ができると、「ユーザー視点だと、券売機はできれば使いたくないよね?」というような意見が出てきます。

近年スーパー/コンビニ業界で、レジ最適化(セルフレジ)の流れがありました。これは、オペレーション起点で考えていて、オペレーションは所与のものとして、店員でなくてお客さんにさせて、店員の負担軽減・効率化を狙おうという発想です。一方、Amazonは顧客体験を起点にレジ自体をスキップするという取り組みを始めています。このような視点の転換です(下記参照)。

AmazonGo体験記。AI時代のリテールUX。 - Scrum Ventures | スクラムベンチャーズ 

既存の環境で組織間協業をいかに創れるか、ユーザー起点の問いに導けるか、引き続きUXデザインの重要な役割になってきます。


2. ユーザー自身も気づかない根源的ニーズを洗い出す

よくある既存のユーザー調査では、アンケートやインタビューでユーザーの声を拾って、纏めていきます。

ただこれだと、各ユーザーが表面的に"言っていること(Saying)"を整理したに過ぎません。

モノやサービスに溢れ、特に困っていることがない、気づいていない消費者が多い中で、"言っていること(Saying)"の整理だけは、根源的なニーズに気付きにくくなっています。

そこでもう一歩深いユーザー理解に導くのが、UXコンサルが発揮すべき価値の2つ目です。


もう一歩深いユーザー理解は、

"言っていること(Saying)"に加えて、

"やっていること(Doing)"

"感じていること(Feeling)"

"考えていること(Thinking)"

を徹底的に洗い出すことが基礎となります。

 

では、どのように洗い出すのか?というと、「観察」です(以下参考)。

「行動観察」で利用者の隠れたニーズを発見!LIXIL「ひろまるコンロ」:大阪ガス通信

これは新しいコンロ開発時に「観察」を活かした好例です。

10人の自宅を訪問し、3時間ずつ調理風景を観察。

そこで、「コンロ上に置いた複数の鍋を入れ替えながら窮屈に調理をしている」等の気付きを得ます。そして、広々とした天板の上の仮置きスペースにやかんが置けるなどの特徴を持ったコンロを開発していきました。

よく調理をする方からすれば、「あー、そうそう!あるある!」だと思います。ただ、このようなあるあるは、アンケートを取っても出てくるとは限りません。

最初は不便を感じていても、日々の慣れによって不便さの存在を忘れてしまいます。誰かから言われれば、再認識されますが、言われないと出てこないのです。

観察は時間・労力がかかるアクションですが、それでも観察の意義をお客様にお伝えし、本質的なニーズ理解への先導する、これがUXコンサルが提供すべき価値の2つ目です。


3. デザインの価値を言語化し、伝えるべき人に伝わるようにする

3点目は、デザイン価値の言語化です。

良いデザインには違和感がなく、当たり前に感じられるものです。

例えば、券売機の切符ではなくSuicaを使った時のストレスフリーな体験は、今の私たちにとっては当たり前すぎる違和感ないものになっています。 

なので、喧々諤々議論してデザインした良いUXを企業マネジメント層に説明しても、何の工夫も無ければ「そんな当たり前のことを考えるのに時間を使ってるのか?」となりかねません。


ここに、ピュアなUXデザイナーではなく、コンサルタントの視点を持つからこその価値の出しどころがあります。

当たり前のこと(良いデザイン)の妥当性・独自性を論理的に整理し、ストーリーを交えて説明して、納得を引き出すのです。 

例えば「メールアプリの新規作成ボタンは、どの画面であっても常に左下に出るようにしています。これによって、ユーザーは思い立った時にサッとメール作成を始められるのです。」(※これは分かりやすくUIデザインの例)のように、理路整然と他者に伝えられるかが重要なのです。


「"デザイン"というと何となくの雰囲気しか語ってない気がする」、こんな感想を持っている人が多いのも事実かと思います。そんな人にも、デザインの価値が分かりやすく伝わるようにする、これが3つ目の価値です。

このブログでも、デザイン価値の言語化をやっていければと考えています。


まとめ

UXデザイン領域を専門とするコンサルタントは、

1. ユーザー起点で考え、既存のしがらみを乗り越える

2. ユーザー自身も気づかない根源的ニーズを洗い出す

3. デザインの価値を言語化し、伝えるべき人に伝わるようにする

というような価値を提供して、対価を頂いています。私にとっては心から天職と思える仕事です。

もし、これに胸躍る方がいらっしゃれば、ぜひUXデザイン×コンサルタントの道を考えてみてください。

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