デザインしたUXが実現するのはどんな時?
「最高の形でデザインされたUXは、必ず誰かの役に立つか?」
こう聞かれたらあなたはなんと答えますか?私は迷わず、「No」です。なぜなら、そのデザインされたUXは実現化し、世の中にリリースされなければ、誰の役にも立たないからです。実現しなければ無価値です。
では、「デザインしたUXは、どんな条件が揃うと実現するのか?社会に根付くのか?」
この質問に端的に答えるならば、私はこう答えます。
①デザインした良い体験(Design)に、
②実現可能にする技術(Engineering)
③ビジネスとして回る仕組み(Business)
の要素が組み合わさった時が、デザインした体験が実現し、社会に根付くときですと。
これを簡単に図解します。
Designの観点からどんなにあるべき姿、理想の姿を追い求めても、それを実現する技術が無ければ絵に描いた餅です。
もし技術的に実現可能でも、それを成り立たせるためのビジネスの仕組み(マーケティングをして知ってもらったり、コスト<収入の構造など)が無ければ、持続せず一瞬の花火に終わってしまいます。
一方、技術的に可能で、ビジネスプランもピカピカに書けていたとしても、人々に良い体験を与えるもので無ければ、結局誰も振り向きません。
例えばとある家電製品があったら、、
発売直前はきっと話題沸騰(世界初、AIなんとか搭載!、革新的ビジネスモデルで他業界からも注目!etc)です。
でも、発売直後からクレームの嵐(期待していたのに、生活が一切便利にならない、逆にイライラが増えたetc)で消えていくでしょう。
販売直前最高潮タイプです。
以前触れたSuicaの例だと企画の時に3つの観点がバランスよく考えられていたはずです。
Design観点では、券売機の列に並ぶイライラがなく、毎回お金を出さなくても良い状態があればストレスフリーだ、それこそ理想の体験だというような議論があったでしょう。
Engineering観点では、理想の体験を実現するためには、ICカードに残高情報を入れておいて、そのカードを改札機にタッチして決済、という方法があるよと導いたでしょう。
Business観点では、多くのお客さんに認識してもらうために広告をしたり、コスト<収入になりつつお客さんの負担感が出ないように、金額設定、カードの生産コスト削減、他企業とのタイアップなどが考慮されています。
そして、3つの観点が絶妙にバランスされた商品、サービスが考え抜かれた時、デザインした体験は現実のものとなり、社会に根付くのです。
ちなみに、これらは1回考えたら、「ハイ終わり」というものではありません。
構想を練って世に出すまで、3つの観点を行ったり来たりしながら、「人々に喜ばれ、実現可能で、持続可能な」ものに洗練させていく必要があります。
さらに言えば、実際に世に出した後でさえも、常に何かしらの改善が必要になります。
どういうことか?
Suicaを持ちはじめて、以前より格段に便利になったはずなのに、しばらくすると人々は、新たな不満を持ち始めるのです。
「カードを財布から出すのも面倒くさい。」「カードをチャージするために、券売機に並ぶのがイライラする。」
これらの不満(健在・潜在共に)を放置していたら、競合他社にすぐ追い抜かれてしまいます。
そこで、UXの再デザインを始めるのです。
「カバンの中のものではなく、別なもっと手軽なものでピッとできると最高?」「何かの方法で自動チャージできたら良いのでは?」
そして、Engineeringが、Businessがと続いていくのです。。。
なお、この3要素はDesignはCreativeとされたり、EngineeringはTechnologyとされたりと表記が微妙に違うことがあります。大筋同じことを言っていますが、私はCreativeより広域な意味を持つDesignを、Technologyより現実的な実装の意味合いを持つEgineeringを使っています。
今日は、UXデザインはいつ実現するか?さらに社会に根付くのか?、という問いについて考えました。
ちなみにですが、私自身が自分のことをデザイナーではなく、コンサルタントと名乗る理由はここにあります。常にDesign+Engineering+Businessをバランスさせ、社会にインパクトを与えるところまでを自分のミッションとして、お客様と日々協業しています。この辺はまたどこかの機会に書きたいと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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