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ベトナムにおける新型コロナウイルス流行状況(2020年2月9日現在)

ベトナムでの新型コロナウイルス感染の発生状況については、一つ前のnote記事でも書きました。このハノイで考えたことnoteは色々なことを書きたいとは思っていますが、今はやはりこの話題について触れないわけには行けないだろうと、勉強しながら書いていきます。

と言っても、筆者は医者ではありませんので純医学的なことを書くことはありません。あくまで公開情報として出てきていることから言えることを書いていきたいと思います。そこで、「いや、ベトナム政府は色々隠しているんじゃない?」という疑念は、それはベトナムの人も含めてあるとは思います。とは言いつつも、それら情報は計り知れるものではないので、ともかくも現在ある情報から言えることをまとめていきたいと思います。変化が日々ある状況なので、ともかく今日段階での情報をまとめつつ(特に注記無い限り、各種数値は2月9日深夜現在のものです)。

ベトナムでの感染確認者数は14名、北部Vinh Phuc省に集中

この記事現在、ベトナムで確認されている新型コロナウイルスへの感染者は14名です。以下VN Expressのグラフィックがわかり易いですが、多くが北部、特にVinh Phuc省に集中しています(9名)。保健省の指示により、北部の患者は基本的に国立熱帯病病院のDongAnh新病院(記事冒頭の写真が同病院)に集められています。

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多くの感染者が発生しているVinhPhuc省は、同地の企業がたまたま武漢に工場スタッフを研修で派遣しており、1/17の南方航空フライトでハノイに戻った人たちから感染者が出ています。9名中5名がが武漢に滞在歴のある感染者です。その後、感染が確認された人の周辺から新たな感染者が確認されていますが、ちょうど戻った後がテト正月(旧正月)にあたり、その頃症状がない中で多くの人に接してしまった中で感染したことが予想されます。

そのため、現在ベトナム政府はビンフック省を重点的に警戒しているようです。日系企業の工場も多くあるこの地域、更に感染者が増えて中国に倣った移動制限措置などが課されれば、また違った大きな社会経済的インパクトを与えかねません。今のところ、ハノイには上述病院に患者こそいますが、ハノイ市民の中での感染者は確認されていません。

感染者の年齢は比較的若く、重症化した患者はいない

ベトナムにおける14名の感染者の内、60歳以上はホーチミンで治療されている中国人父子のお父さん(息子さんは既に退院)、アメリカから戻っていたベトナム越僑の方(71歳との報道)。他は皆60歳以下、特に武漢に行っていた方は多くが研修を受けていた世代ということで若い年齢層です。それが幸いしてか、今のところベトナムにおける患者で重症化した方はいないとのことです。

中国では若い世代の死亡例も出てきているので、若い世代ももちろん油断はできないですが、今後高齢の感染者を如何に防いでいくかは特に大事になってくると思われます。

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中国からの帰国者が増え、検査体制が確立された際にどう変化するか?

そうは言っても、ベトナムにおける感染者の増加は、今のところなだらか。上記チャートは黒が感染者、赤が隔離者、青が治癒者の数を表していますが、おおよそ一日一人程度の感染者確認に止まっています。隔離患者もここ一週間ほどは数がそれほど変わっていません。(ちなみに症状が無いものの、感染者と接触があった等々の理由で隔離されている人は、ベトナム保健省HPによると517人いるとのこと。)

現在ベトナム政府は、湖北省や武漢市にいるベトナム人の帰国に対する施策を取っています。中国への支援物資を送るフライトに、湖北省在住のベトナム人を乗せて帰ろうというニュースもあるので、早ければ2月10日にも武漢からの帰国者が徐々に入ってくるのかもしれません。

そして、これがより決定的なことかもしれませんが、今後検査体制はより確立されることが期待されます。ベトナム国内でも治療に加え、各種の研究努力が進んでおり、北部ではハノイにある国立衛生疫学研究所(NIHE)などを中心に研究成果が発表されてきています。より迅速に結果のわかる検査キットの開発も進められています。

そうなった際に、これまでのような緩やかな患者数の増加となるのか、或いはよりしっかりと把握できるということでは、見過ごされてノーマークになるよりは「良い意味で」感染者数が増えるかもしれません。

帰国者の増加、検査体制の強化、この二つの要因で今後感染者数が増えてくるか、その中で重症化する患者が出てこないかどうか、そういった点が注目されると思います。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。