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ドラマからみた中国(12):「鬓边不是海棠红(Winter Begonia)」にみる京劇と老北京&抗日劇(+ベトナムテレビドラマ事情)

新型コロナウイルス禍でのステイホームの長い日々を過ごしていた3,4月、そんな中で久々にまとまった中国ドラマを見たので今回はこちらをご紹介。京劇役者とそれを支える人々たち、その中で生まれる男の友情を描く、中国現代史ドラマ「鬓边不是海棠红(Winter Begonia)」です。(以下、ネタバレはほぼありません。)

美しい京劇の世界と100年近く前の北京の風情

このドラマの見どころは、何と言っても美しく、しかし壮絶でもある京劇の世界です。舞台は1930年代の北京(当時は「北平」と呼ばれていました)、市民の娯楽として人気を誇る京劇。ただその在り方が古くからの「徒弟制」や子供の頃から「卖身契」と呼ばれる身売り書に京劇団に所属する終身制の世界から、現代芸術へと徐々に転換を図る変化の時代であることも描かれていました。芸能の世界に生きる人たち、ただ必ずしも芸術家としては社会的地位を得られてはいないヤクザな世界、両者の中で揺れ動く人たちの姿がとても面白いです。

そして背景となる「北平」の時代観、細かい歴史考証はわかりませんが、かなりお金をかけてリアルな「老北京」を再現しているなあととても興味津々。言葉遣いは時代の差、京劇の世界という特殊さもあり大分難しく、久々に中国語辞書引き引き、学びながら楽しめたのも収穫でした。これで京劇がわかれば最高でしょうねえ、興味が湧いてきました。Youtubeにも京劇等の中国伝統演劇チャンネルがあるので、勉強してみようかな?

現代史ドラマなのでやっぱり出てくる「抗日」要素

ストーリーを楽しみながらたどり着いた34話、三分の二程過ぎたところ(こちら全49話、中国ドラマはエピソード数多い!)で「いよいよ来たー」という抗日ストーリーの登場です。そこでは、たどたどしい日本語とわざとたどたどしくした中国語で話す中国人俳優演じる日本軍人・日本兵役が、北京の街と京劇の世界をぶち壊す役割として登場します。

詳細は上記同様避けますが、ある意味こちらも京劇というドラマ全体のトーンを良く活かした形で、日本軍が非常にイヤらしく、北京市民の娯楽を踏みにじっていく感じが、ある意味「よくできているなあ」と言う感じ。やたら戦闘シーンがあって「バカヤロー!」とか無暗に叫ぶ日本人兵士ばかり出るような、昔の抗日劇の方がなんぼも突っ込みどころがあって、ある意味コミカルでさらっと受け流しやすかったです。

ただ、そこでも主人公・商細蕊を友人として助ける日本人のストーリーがかなり核心に近い形で出てきたり、「日本全てが悪ではない」という風には仕上がっていて、それなりに抗日ドラマに慣れているからか(苦笑)、それ程不愉快には感じませんでした。ただ、中国人俳優さんたちが「日本人の中国語」で話すシーンがかなり多いのですが、それがどうも愛情公寓の「関谷神奇」(「愛情公寓」に関してはこちら昔のブログ記事をご参照)に聞こえてしまい、どうもコミカルに聞こえてしまうのは、中国人にはどう聞こえるのでしょうか?

中国(歴史物)ドラマ大好きなベトナム人

実は今回このドラマを見たきっかけですが、ベトナムでも「Bên Tóc Mai Không Phải Hải Đường Hồng」としてネット上で見られていたらしく、それをうちのベトナム人妻から聞いて、久々にチャレンジしてみるかと思ったのです。中国でも公開直後なのに、既にベトナム語字幕に付いてこちらで観られるようになっていました。

ちなみにこちらvieon.vnというサイト、多くのドラマが字幕、吹き替えされていて見放題、特に韓国と中国のドラマで埋め尽くされています。現代ドラマでは韓国、歴史ドラマは中国が優勢なようです。昨年は、これも中国でも大ヒットした、西太合の人生を描いたドラマ「延禧攻略(越語:Diên Hi Công Lược」もかなり多く観られていたようです。

巨額予算も投じられる中国歴史ドラマは日本でも大分存在感を見せていると思いますが、ベトナムでもそれは然り。対中感情色々ありますが、三国志も含め、中国の歴史に関心ある人はベトナムにも結構います。とはいえ、ベトナムの歴史ドラマも結構宮廷ドラマなんか作れるストーリー沢山あるのではないかなあと、個人的には思っています。まだ中国のものに比べるとハマり切れるものが出てこないベトナムのドラマ、是非今後は期待したいところですし、自分もアンテナを張ってみたいと思います。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。