米国のセンサーに関する原産国判断(第2部:監視カメラ、同カメラキット・小売用セット
今回は、前回に引き続きセンサー特集の第2部として監視カメラ及び同カメラキットについて取り上げます。
監視カメラ (屋外・屋内用) ➀(2024年5月21日、N第339727号事案)
【製造工程】
検討対象の物品は、屋内外で使用するセキュリティカメラであるドーム型及び魚眼レンズ・セキュリティカメラである。最大4K解像度の画像を撮影でき、通常は壁、ポール、天井、その他の構造物に設置される。対象となるすべてのカメラには、データ暗号化、オンボードストレージ、モーションセンサーが搭載されている。
提供された情報によると、すべてのプリント基板アッセンブリー (PCBA) の生産とデバイスのファームウェアのロードは台湾で行われている。さらに、ドーム型カメラについては、メイン処理ボード、イメージセンサーボード、IR LEDボード、及びマイクボードはすべて台湾で製造されている。魚眼セキュリティカメラについては、メイン処理ボード、イメージセンサーボード、IR LEDボード、及び周囲光センサーボードはすべて台湾で製造されている。これらのPCBAの製造には、複雑な表面実装技術 (SMT) 処理を伴う。この表面実装技術プロセスには、ベアPCBへの多数の個々のコンポーネントの配置及びはんだ付けが含まれ、これにより、コンポーネントが大幅に変換された機能的なPCBAが製造される。最終工程である組立工程、テスト、及び梱包は、ベトナム又はタイで行われる。
監視カメラ (屋外・屋内用) ②(2022年10月12日、N第328146号事案)
【製造工程】
検討対象となっているのは、パノラマ 5100i 屋内カメラ及びパノラマ 5100i IR 屋内・屋外カメラとして識別される2台のセキュリティカメラである。双方のカメラは内部のSDカードにビデオを録画することができる。さらに、対象のカメラは、遠隔監視又はクラウド経由での保存用録画のために、カメラ外部の場所にビデオ画像を送信することができる。
パノラマ5100i屋内カメラには、処理メインボード、イメージセンサーボード、マイクボードの3つのプリント基板アッセンブリー (PCBA) が含まれている。パノラマ5100i IR屋内・屋外カメラには、処理ボード、イメージセンサーボード、マイクボード、HDMIボード、IR LEDボード、POGOピンボードの6つのPCBAが含まれている。いずれのシナリオにおいても、処理ボードは台湾で製造され、イメージセンサーは中国で組み立てられ、その他のプリント基板はタイで製造される。処理ボードとイメージセンサーボードはタイに輸入され、最終組立てとソフトウェア・プログラミングが行われた後、完成したカメラは米国に輸入される。
提供された情報によると、処理ボードがなければ、カメラは画像や音声を捉えることができず、画像や音声データをデジタル信号に処理することも、カメラからのデータを送信することもできない。また、処理ボードはカメラにとって重要なデータセキュリティ機能も果たしている。処理ボードの表面実装技術 (SMT) プロセスは、香港から調達したベアプリント回路基板 (PCB) を台湾で使用し、中国や米国などさまざまな国から調達した900以上の電子部品を実装する。
イメージセンサーは、処理基板からの指示により機能する。イメージセンサーは、光波を信号に変換し、画像情報を伝送するカメラのインターフェースとして機能する。イメージセンサーは、処理基板によって実行される画像情報の保存や処理を行うことはできない。イメージセンサーは、米国又は日本で設計及び製造され、レンズは台湾で製造される。提供された情報によると、イメージセンサーのPCBAは中国から調達されており、120以上の電子部品がSMTプロセスによりベアPCBに実装されている。また、中国でCMOSイメージセンサーがPCBAに取り付けられ、レンズがレンズホルダーに組み立てられ、その後イメージセンサーボードに接着される。
マイク基板はサブPCBAとも呼ばれ、機能させるには処理基板に接続する必要がある。この基板はタイで製造されており、SMTプロセスによりベアPCBに電子部品が取り付けられている。マイク基板は3つのデジタルマイクを制御し、カメラが周囲の音を受信できるようにする。
HDMIコネクタ基板はサブPCBAと呼ばれ、機能させるには処理用PCBAに接続する必要がある。タイで製造され、3つの部品がSMTプロセスによりベアPCBに実装されている。HDMIコネクタは、HDMIコネクタが取り付けられた単なるPCBである。これにより、カメラユーザーは簡単にHDMIケーブルをカメラに接続することができる。
IR LED基板は、機能させるためには処理基板に接続する必要があり、サブPCBAとも呼ばれる。この基板はタイで製造されており、3つのIR LEDコンポーネントがSMTプロセスによって3つのベアPCBに実装されている。このPCBAは、屋外カメラが夜間に機能するためにイメージセンサーに十分な光を供給する内蔵照明イルミネーターである。
POGOピンボードは機能させるために処理ボードに接続する必要があり、タイで製造されている。このボードには、SMTプロセスにより12個の電子部品がベアPCBに実装されている。POGOピンボードは機械的な接触により、処理ボードから屋外カメラのIR LEDボード及びマイクボードに信号/電力を伝達する。
そして、すべての PCBA は、ハウジング・アッセンブリーに追加する前に、フレキシブルコネクタで取り付け、プラグを差し込んだり接着したりして、米国への輸入に適した完成品である屋内及び屋外カメラを製造する。
監視カメラ (屋外用) ③(2020年3月4日、N第309927号事案)
【製造工程】
検討対象の物品は、LITE-ON 屋外用ドーム型カメラ(モデル番号 SBA20)である。本事案のカメラは家庭用ビデオ監視に使用される。これらの耐候性カメラは、Wi-Fi 経由でネットワークに接続され、ステレオジャック・コネクタ経由で電源供給される。さらに、本事案の IP/ネットワークカメラは、ビデオ画像をクラウド・ストレージに送信することができる。また、これらのカメラは、ビデオ及び静止画を内部のSD カードに取込み、記録することができる。
本事案の屋外用カメラには、表面実装技術 (SMT) により台湾で製造された4つのプリント基板が搭載されている。SMTとは、プリント基板 (PCB) の表面に直接、各種部品を取り付け、はんだ付けする技術である。また、ソフトウェアは台湾で構築され、4つの基板すべてにプログラムされている。
4つのプリント基板アッセンブリー (PCBA) は、メインボード、IRボード、センサーボード、Wi-Fiボードである。メインボードは、信号処理を制御し、ビデオ監視アプリケーション用のメモリを保持し、ICへの電力入力を処理する主要なシステムICである。IRボードは、デバイスのナイトモードとLED照明を提供する。センサーボードは、画像をキャプチャし、IRカットフィルタスイッチを制御する。Wi-Fiボードは、デバイスのRF機能を管理し、データ送受信を制御する。
さらに、台湾の工場では、レンズとイメージセンサーをセンサーボードに取り付ける。また、台湾の工場では、PCB間のコネクタを取り付け、レンズを適切な位置に合わせ、組立・プログラム済みのカメラモジュールの機能テストを行い、最終組み立てを行う中国に梱包して送る。
中国では、カメラモジュールが外側のハウジングに収められ、外部DCケーブルに接続される。アンテナが接続され、ハウジングに取り付けられる。前面カバーがカメラに接着され、密封される。製品情報がレーザー彫刻機でハウジングに追加される。カメラと附属品は小売販売用のギフトボックスに梱包される。
監視カメラ (家庭用) 小売用セット ④(2020年1月28日、N308695)
類似教示事案(2020年1月28日、N308696)
類似教示事案(2020年1月28日、N308694)
類似教示事案(2020年1月28日、N308693)
【製造工程】
検討対象の物品は、カメラ (型番CS-9022及びCS-9032)、アクセスポイント (AC)(型番WAP-N33)、及びSDカードで構成される家庭用監視カメラキットであり、商品番号KX-HN1007Wとして一括して輸入されている。本事案のカメラは画像を撮影し、それを電子信号に変換してビデオ画像としてカメラの外にある場所に送信し、遠隔監視や遠隔録画を行う。提供された情報によると、本事案のカメラには内部録画機能はない。本事案のAPは無線ネットワークであり、マイクロSDカードにビデオを録画する補助的な機能がある。
カメラモデルCS-9022には3種類のプリント基板アッセンブリー (PCBA) がある。メインボードはセンサーボードから画像データを受信し、Wi-Fiで画像データを送信する。センサーボードにはイメージセンサーが搭載されており、画像データをメインボードに送信する。PIRボードはカメラに何かが近づいたことを感知し、メインボードに信号を送信する。
カメラモデルCS-9032には5つのPCBAが搭載されている。システムのメインボードは、Wi-Fi、オーディオ、ビデオ、電源、制御、及び処理機能を提供する。IR-LEDボードは、人間の検知に使用される。イメージセンサーボードは、画像やオーディオの取込み、光の検出などを行う。充電ボードは、バッテリーの充電制御とシステムの電源オン/オフ制御を提供する。電源ボードは、DC電源を入力する。
対象のAP (WAP-N33) には、Wi-Fi 2.4G帯で動作するPCBAが1つ搭載されている。
小売用にセット包装された状態で輸入された場合、対象の家庭用監視カメラキットはHS通則の「小売用に包装されたセット」の定義を満たす。通則 (GRI) 3(b) に従い、分類は、セット全体に重要な特性を与える部品、又は複数の部品によって決定される。米国税関は、カメラが本事案のセットの重要な特性を与えると認める。
提供された情報によると、以下の製造工程は台湾で行われている。
各PCBAの製造には、以下の工程が含まれる。集積回路 (IC) のコピーとプログラミング (ファームウェアのダウンロードを含む)、表面実装技術 (SMT)、配線 (PCBの切断)、デュアル・インラインパッケージ (DIP)、F1 (PCBA基板の機能テスト、及びPCBAの梱包)。異なるPCBAのSMT (表面実装技術) 及びルーティング (PCB切断) の製造工程には、レール上のPCBパネルローダー、PCBパネルのはんだペースト印刷、PCBコンポーネントのリフロー実装、PCBパネルのルーティングが含まれる。DIPの製造工程には、PCBパネルを固定具に固定し、DIPコンポーネントをPCB表面に配置し、リフローを行い、PCBの穴を通してピンを取り付け、コンポーネントをPCBボードに配置することが含まれる。
以下は中国で行われる。
モデルCS-9022及びCS-9032の場合、生産工程にはPCBAボードの開梱、センサーボード・レンズ・アッセンブリー、レンズフォーカス・テスト、デバイス事前組立て、デバイス組立て、F4 (デバイス機能テスト)、パッケージテスト、デバイス梱包が含まれる。レンズ・アッセンブリー工程には、センサーICのクリーニングとレンズ・アッセンブリーが含まれる。次に、事前組立工程では、メインボード、磁石/裏蓋、スピーカー、IOプレート、IOカバー、U/S/Pボード、センサーボード、LEDボードなどの事前組立てを行う。組立工程では、裏蓋組み立て、バッテリー及びOリングカバー組立て、バッテリー金属フレーム組立て、IRカバー組立てにアセテートテープを貼り付ける。
APに関しては、生産工程は、PCBA基板の梱包開け、デバイス事前組立て、デバイス組立て、F4 (デバイス機能テスト)、パッケージ機能テスト、梱包である。事前組立工程には、PCB基板ヒートシンク組立てとアンテナ/フロントカバー事前組立てが含まれる。処理には、フロントカバーとバックカバーの組立てとラベル付けが含まれる。
監視カメラ (家庭用・屋外用) ⑤(2020年1月24日、N308692)
【製造工程】
対象物品は、屋外用ホームモニタリングカメラ、モデル番号CS-9032である。このカメラは、ビデオを撮影し、遠隔地での視聴又は録画用にカメラ外の場所に送信する。このカメラは、画像を内部に恒久的に記録することはできない。
カメラモデルCS-9032には5つのプリント基板アッセンブリー (PCBA) が搭載されている。システムメインボードはWi-Fi、オーディオ、ビデオ、電源、制御、及び処理機能を提供する。PIR及びIR-LEDボードは人感検知に使用される。イメージセンサーボードは画像とオーディオを捉え、光を検知する。充電ボードはバッテリーの充電制御とシステムの電源オン/オフ制御を行い、電源ボードはDC電源を入力する。
提供された情報によると、台湾では以下の製造工程が行われた。IC(集積回路)のコピーとプログラミング(ファームウェアのダウンロードを含む)、表面実装技術 (SMT)、ルーティング (PCBの切断、DIP (デュアルインラインパッケージ)、F1 (PCBA基板の機能テスト)、PCBAのパッケージング。異なるPCBAの表面実装技術及びルーティング (PCB切断) の生産工程には、レール上のPCBパネルローダー、PCBパネルのはんだペースト印刷、PCBコンポーネントの取付け、リフロー、PCBパネルのルーティングが含まれる。DIPの生産工程には、PCBパネルの固定具への取り付け、PCB表面へのDIPコンポーネントの配置、リフロー、PCB穴へのピンの取り付け、PCBボードへのコンポーネントの配置が含まれる。
中国では、PCBA基板の開梱、センサーボード・レンズ・アッセンブリー、レンズのフォーカステスト、デバイス事前組立て、デバイス組立て、F4 (デバイス機能テスト)、パッケージテスト、デバイス梱包が行われる。レンズ・アッセンブリー工程には、センサーICのクリーニングとレンズ・アッセンブリーが含まれる。事前組立工程には、メインボード、磁石/裏蓋、スピーカー、IOプレート、IOカバー、U/S/Pボード、センサーボード、LEDボードなどの事前組立てが含まれる。組立工程は、裏蓋アッセンブリー、バッテリー及びOリングカバー・アッセンブリー、バッテリー金属フレーム・アッセンブリー、及びIRカバー・アッセンブリーへのアセテートテープの貼付から構成される。
監視カメラ (家庭内ペット観察用) ⑥(2019年12月19日、N308320)
【製造工程】
検討対象の物品は、ドッグカメラであり、これはWi-Fi対応のアプリベースの犬監視カメラで、テーブル、棚、机、カウンター又はその他の高い場所に置かれることを想定している。このカメラは「リアルタイム」の動画を撮影し、その動画をクラウド(ユーザーの自宅のWi-Fiルーター経由)に送信する。
以下の組み立て作業はタイで行われる。
表面実装技術 (SMT) を用いて、多数の個々の部品をベアプリント基板に組み立てるメインPCBAの製造を行う。これらの部品には、トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、ダイオード、コイル、コネクタ、スイッチ、集積回路 (例えば、中央処理装置や、データ処理、電力制御などを行う特定のタスク用IC)、水晶発振器、Wi-Fi及びBluetoothアンテナ、トランシーバー、イメージセンサーなどがある。さらに、タイで行われるSMTプロセスには、基板の搬入/搬出機、はんだペースト印刷機、はんだペースト検査装置、自動部品実装装置、はんだリフロー炉など、高価で高度な機械が使用される。
次に、タイでは、中国製のレンズモジュールが「クラス1000のクリーンルーム」でタイ製のメインPCBAの画像処理装置に組み立てられる。その後、タイ人技術者がレンズモジュールをメインPCBA上のイメージセンサーに合わせ、ネジ、ロック、接着剤、紫外線硬化装置を使用してメインPCBAにレンズモジュールを取り付ける。
その後、タイで、タイ製メインPCBA-レンズ・サブアッセンブリーを中国製サブアッセンブリー (フロントカバー・サブアッセンブリー、フィード・サブアッセンブリー、トス・サブアッセンブリー、ピボット・サブアッセンブリー) と組み合わせて最終製品が製造される。このプロセスには、ドッグカメラのファームウェアをハードウェアにダウンロードする作業も含まれる。最後に、ドッグカメラは広範な製品テストとキャリブレーション、ステップクリーニング、検査、梱包プロセスも経る。
監視カメラ (家庭用ドアベルカメラ) ⑦(2020年2月14日、N309220)
【製造工程】
検討対象の物品はドアベルカメラであり、ビデオ監視に使用される。カメラは互換性のあるアプリケーションにビデオ画像を送信する。さらに、カメラはビデオ及び静止画を内部SDカードに捉え及び記録することができる。
本事案のドアベルカメラには、メインボード、IOボード、IRボード、電源ボードの4つのプリント基板アッセンブリー (PCBA) が含まれている。メインボードはメインシステムICであり、ビデオ/オーディオ、Wi-Fiなど、すべてのデバイス機能を制御する。IRボードはデバイスのナイトモードに使用される。IOボードはAC電源入力を設置する。パワーボードは、すべての機能ICとNFC TAG ICに使用するAC12~24VをDC5Vに変換する。
ドアベルカメラの主要な構成要素は、ビデオキャプチャを提供し、互換性のあるアプリケーションにビデオを送信するカメラと、可聴信号を提供するドアベルモジュールである。そのため、ドアベルカメラは2つ以上の補完的な機能を行う複合機であり、したがって、米国関税率表第16部の部注3 (多機能機械及び複合機械) が適用される。米国税関は、ドアベルカメラがこの機器の主要な機能を果たしていると認める。
提供された情報によると、プリント基板は台湾で表面実装技術 (SMT) を用いて組み立てられている。SMTには、プリント基板 (PCB) の表面に直接、各種の部品を取り付け、はんだ付けする作業が含まれる。台湾の工場では、PCBに数個のデュアルインラインパッケージ (DIP) 部品を取り付け、はんだ付けも行っている。DIPプロセスには、基板のセット、フラックススプレー、手作業によるはんだ付け、目視検査、アンロードが含まれる。イメージセンサーとイメージプロセッサは、台湾製のカメラモジュールに組み込まれている。さらに、台湾の工場では、プリント回路基板アッセンブリー (PCBA) のインサーキットテストを行い、その後、最終組立のために中国に送る。
中国の工場では、プリント基板アッセンブリー (PCBA)、NFCタグIC、レンズモジュール、スピーカー及びマイク、WLAN USBモジュール、アンテナ、ハウジングを完成したドアベルカメラに組み立てる。その後、中国の工場でファームウェアをダウンロードし、機能テストを行う。
原産国判断
監視カメラ (屋外・屋内用) ➀(2024年5月21日、N339727)
改正1930年関税法第304条の原産国表示に係る法的根拠 (合衆国法典第19編第1304条)、原産国を定義する連邦規則集第19編134.1条(b)を引用し、「実質的変更」が名称・特性・用途の変更であることに言及し、実質的変更は証拠の総合的な判断によるべきことを示し、以下のとおり決定した。
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