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法律まで変えてしまった、前例のない酒造り

米=イネの種子からもみがらを取り去ったもの。小麦と共に世界の二大主要食糧。普通、搗(つ)いて白米として用いる。精白する前のを「玄米」という。粳(うるち)は飯とし、また、酒を作る。糯米(もちごめ)はもちとする。

稲=米を取る、いね科の一年生植物。

普段、何気なく使っていた「米」と「稲」という言葉。なぜこの言葉を調べてみようと思ったかというと、「とおの屋 要」から新たにリリースされる米糠を使ったお酒の呼び方をどう呼べばいいのか気になったからです。

これまでにも何度か「とおの屋 要」の佐々木さんの米作りやどぶろく造りのことについてこちらにも書きましたが、この5月に、今までの佐々木さんの仕事をまとめた本と、驚くような造りをした米糠を使ったお酒が発売されることになりました。

なぜ米糠を使ったお酒を造ろうと思ったのかというと、健全な田んぼで健全に育てたお米をすべて使いたかったから。
佐々木さんは今までずっと、多種多様な生き物がバランス良く生きることができる健全な田んぼを目指して、無農薬無施肥でお米を作っていましたが、こんなに苦労して健全ないいお米を作っているのにも関わらず、精米してしまうと低精米であっても20~30%のお米を削ってしまうことになります。

それに疑問を抱いた佐々木さんは、お米を丸々使ってお酒を造れるような方法はないかと考えました。
と言っても、今まで他の蔵から出されている玄米を使ったお酒は、独特の糠の匂いがあり、かなり好みが分かれる味。
佐々木さんも玄米で造ってはみましたが、玄米の麹や蒸米はなかなか発酵がうまく進まず、考えているような味のお酒にならなかったそうです。

そこでふと、「玄米のままが駄目なら、一旦削って白米にして麹や蒸米を作り、後から削った時に出る米糠を加えれば、お米を全て使えるのではないか」と思い付きます。
思い付いたからと言って簡単にお酒ができる訳ではありませんが、それでも苦労して何とかあとは搾るだけ、というところまでお酒を完成させ、私たちとも打ち合わせし、そんなに苦労して造ったお酒をできるだけ沢山の方に知ってもらいたい!という気持ちで、色々なイベントを考えていました。

今回リリースする米糠のお酒のボトル。見た目も今までの日本酒とは異なります。

ある日社内で打ち合わせをしている最中、急に佐々木さんから電話が掛かってきて、何事かと思ったら、「前例がないので税務署から認可が下りない」とのこと。きちんと段階を踏んで都度税務署に確認を取りながら、「その他の醸造酒」という酒類になるということで米糠での酒造りを進めていたそうですが、どこかからかこのお酒に対して指摘が入り、一旦ストップせざるを得なくなってしまいました。
その指摘によると、米糠も米の一部だから「その他の雑酒」ではないとのこと。清酒扱いになると、どぶろく製造免許と、去年新たに取った「その他の醸造酒」の製造免許しか持っていないとおの屋要では、このお酒を搾って商品にすることができません。
酒税は重要な国の収入なのでずっと税務署管轄ですが、このような素晴らしい革新的な取り組みが認められないような法律では、お酒造りに未来はありません。
自分のやっていることを信じて進むことにした佐々木さんは、何と税務署の人たちを巻き込んで新たな法律を作って、今回の米糠のお酒のリリースにこぎつけました。

この米糠のお酒の話を最初に聞いた時、佐々木さんの思いや取り組みの素晴らしさを聞いて少しでも多くの人に伝える手伝いをしたいと思いましたが、そんな生易しいことではなく、更に大変な思いをしてお酒を商品化するところまで実現した佐々木さんの信念に、私たちもそれに見合うだけのことを一緒にやっていきたいと覚悟のようなものが芽生えました。

IMADEYAでは、今回の本とお酒のリリースに合わせて、佐々木さんの思いを感じることができる記念イベントを開催することになりました。
https://www.imaday.jp/c/sake-set/sake-set-03/sake-set-03-03/gd16742

そのまま飲んでも美味しいお酒ですが、このお酒が完成するまでの道のりを聞きながら飲むと、もっと美味しくなるのはもちろん、佐々木さんの信念がこちらにまで染み込んでくるような気持になります。
しかも、佐々木さんと仲の良い渋谷の「酒井商会」の店主・酒井英彰さんが特別ゲストとして、遠野の食材をつかったおつまみを作ってくださるというスペシャルな内容。
お酒を飲むだけでなく、なぜこのお酒で生まれたのかなぜこの造り方でないといけなかったのか、といことまで体感できるイベントです。

世界でも前例のない米糠を使ったお酒、ぜひ誰よりも早く体験してみてください。
https://www.imaday.jp/c/producer/producer-01/producer-01-03/producer-01-03-04

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