
AIが実現する創薬の未来
こんにちは。エルピクセル株式会社にて創薬AI「IMACEL」の企画に携わっています江連です。
先日、AI開発に欠かせないGPUメーカーとして世界のトップを走るNVIDIA様のイベントにご招待いただき、創薬AI「IMACEL」の事業責任者がセッションを持たせていただく機会を頂きました。
今回は、イベントで発表させていただいた講演内容をハイライトする形で、記事として皆様にお届けしたいと思います。
また、イベントで公開した動画の一部は、特別にNote上で限定で公開いたしますので、ご興味のある方はぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
AIを活用すべき創薬の課題とは
あらゆる産業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が謳われる時代になりましたが、創薬プロセスへの適用も例外ではなく、創薬AIの最前線に立つ身としても、AIを活用したDXに対する期待が大きいことを感じます。
では、創薬プロセスにおいて、AIを適用すべき課題として、どのようなものがあるのでしょうか。我々はそれぞれのステップにおいて下記のような課題があると感じています。
シーズ探索においては、新薬のシーズ発見の確率が年々低下する中、シーズが細胞に与える影響をより精緻に評価するため、バラエティのある実験を数多くこなす必要が生じています。こうした状況に対し、AIによる定量的な評価が効果を発揮すると考えています。
非臨床領域では、シーズ化合物の安全性について、国際的に定められたプロトコルに基づき、細胞や動物等を用いた評価を実施していますが、その効率性や再現性を高めるためにAIの活用が期待されています。
臨床領域では、候補薬に適した被験者をリクルーティングすることに莫大な費用がかかっています。新薬開発のプロセスにおいて、最も多大な研究開発資金が投入されているプロセスでありつまり、最もAIによる効率化が期待される分野であると言えます。
さらに、市場投入後もAI活用が求められるべき課題があります。例えば、薬剤には効果がある一方、副作用があるものも少なくありません。そこで、投薬中の患者さんの副作用を検出するAIを導入することで、副作用が生じない、あるいは最小限に抑えるような、適切な投薬の実現に近づけるのではないかと考えています。
創薬AIの活用方法(1) 〜人の作業の置き換え〜
こうした課題に対し、どのようにAIを活用することで解決することができるでしょうか。1つ目は、人が行っている作業をAIで代替するという方法です。
既存のプロセスで、人が行っている作業や判断基準を学習させたAIに代替させるというものです。特に安全性の領域など、決まったプロトコルのもと実施する必要のある実験などは、AIによって一部を自動化、サポートすることで大きな効率化を実現できると考えられます。
創薬AIの活用方法(2) 〜熟練研究者の技術継承〜
2つ目は、AIを熟練者の技術継承に活用していく方法です。創薬の現場でも、一部では研究者の高齢化が進んでおり、また研究者の技量にばらつきがあるのが課題です。
熟練者の基準をAIに学習させることで、技術の継承と同時に、定量評価によって技術のばらつきを改善し、より洗練した技術の取得につなげていくことが可能になります。
創薬AIの活用方法 (3) 〜取得データからの予測・判断〜
3つ目は、従来、人にはできなかった予測や判断をAIに任せるというものです。
例えば、特定の実験、観察において、時系列のデータを取得し、初期段階から最終的な結果が得られるまでに、対象がどのように変化したかといった情報をAIに学習させます。これにより、AIが、変化の過程で人には捉えられなかった状態や兆候を特徴量として学習し、人には判定できない基準やタイミングで予測をすることが可能になると考えられます。結果として、研究のスピード面での効率化や新たな判断基準の創出につなげることが可能になります。
実際に活用されている創薬AI
最後に、これまで述べてきた課題や活用方法について、実際にクライアント企業様と開発・実装してきた事例をご紹介します。
こちらは、シーズ化合物の安全性評価のために実施される小核試験の際に、実際に研究者の方が確認している細胞画像のイメージになります。
試験では、対象の細胞群の中に、右側に例示しているような小核有細胞がどの程度含まれるのかを評価しています。
(小核有細胞の割合が基準より多い場合には、対象の化合物の毒性が強い、ということになります)
こうした実験は、通常、研究者の目視によって実施されていますが、創薬AI「IMACEL」では、熟練者の基準を学習したAIが対象画像を解析し、画像に含まれている小核有細胞/小核無細胞の数を自動でカウント、評価のためのレポートを提供するというサービスを行っています。
AIを活用することで、人が膨大な時間をかけて行ってきた実験が効率化されるとともに、実験者間での評価のばらつきが解消され、再現性の高い評価を行うことができるとして、実際の現場でも活用され始めています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回の記事を通じて、「AIを創薬にどのように活用していくことができるのか」について、皆さんがよりイメージしやすくなっていると嬉しいです。
今回の内容を盛り込んだ動画も一部公開させていただきますので、お時間があればぜひご視聴ください。
(フルバージョンのご視聴を希望される方は、下のフォームからお申し込みください。)
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