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【ウェビナーレポート】ビジネスを変革させる「本質的なDX」をいかにデザインするか

Hello, people.

先日、ILY,ではDX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマにした無料ウェビナー「DXに興味のあるBtoB企業必見!本質的なDXで始めるビジネス変革」を開催しました。

そもそもDXとは、単にデジタル化やデータ活用を推進するだけではなく、それらによってビジネス全体を変革することを意味します。したがって「デジタル化やデータ活用によって事業をどう変えていきたいのか」というビジョン・戦略の策定や、変革の推進の土台となる組織・企業文化の醸成も、DXの構成要素であるといえるでしょう。

今回のウェビナーでは約2時間にわたり、こうした本質的なDXを企業がいかにデザインするべきか、事例を交えながら考えました。前半は2名のゲストスピーカーによる講演、後半はゲストスピーカーとILY,代表辻原によるパネルディスカッションを実施。約60人の参加者が集まり、双方向のコミュニケーションも活発に行われました。
その様子をレポートしていきたいと思います。

登壇者プロフィール

葉葺 真一 さま (インフォコム株式会社 スマートビジネス部長)

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業務として世界防災フォーラム/防災ダボス会議に参加する中、グローバルでのSDGsの重要性を強く認識。企業だけでなく、家族、コミュニティも繋がれSDGsの「見せる化」を実現する「Lookat(るかっと)」の立ち上げに参画中。「2030 SDGs」公認ファシリテーター、ワークショップデザイナー(29期)、レゴ®シリアスプレイ®ファシリテーター。

坪井 俊輔 さま(SAgri株式会社 Founder & Global CEO)

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横浜国立大学理工学部に入学後、大学在学中の2016年6月に株式会社うちゅうを設立。民間初、宇宙教育を起点とした教育事業の開発・運営に関わると共に、農業分野にテクノロジーをもって世界の食料問題を解決すべく、人工衛星の観測データを基に農地管理や収穫予測を行う農地管理アプリ「SAgri(サグリ)」を開発。SAgri株式会社を設立し、代表取締役に就任。MakersUniversity 1期生、DMMアカデミー 1期生であり、TSG2016 セミファイナリスト、経済産業省飛躍NextEnterprise 最年少採択として選ばれる。また、日本アントレプレナー大賞を受賞。世界経済フォーラム(ダボス会議)が組織する Global Shapers Communityの横浜ハブに所属する Global Shaper であり、Get in the Ring Osaka ,Singularity 2019 GIC共に優勝。

辻原 咲紀(ILY, inc CEO / Business Designer)

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新卒でデザインプロダクトメーカーに就職、営業・マーケティング・商品企画・デザインの領域を横断し担当。インハウスでの広告制作やブランディング・アートディレクションに携わり独立。ベンチャー企業への技術提供・企業立ち上げなどを経て、0→1、1→100まで幅広いデザインに従事。2016年にデザインのコンサルティング&クリエイティブエージェンシーのILY.incを設立。経営・事業開発・コミュニケーションなど領域を横断した様々なデザインに取り組む。広島市立大学非常勤講師。

【ゲスト講演1】SDGs活動をITで見える化する、ビジネスとヒトのDX(インフォコム株式会社 葉葺 真一 さま)

ITビジネスを幅広く展開するインフォコムさまは、今期からSDGsを見える化するプラットフォーム「Lookat(ルカット)」の開発プロジェクトをスタートしています。

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主なサービスのひとつが、企業がSDGs活動を数値化・ビジュアル化して管理できる「Lookat socialmeter」。ユーザー企業がSDGsの活動に取り組む際に、17のゴールやその下のターゲットの中から達成したい目標を選び、具体的な KPIの設定や、ダッシュボードによるKPIの達成状況の確認が可能です。

だshボード

さらに、ユーザー企業の従業員が自社のSDGsの取り組みについて家族とコミュニケーションできる「Lookat family」や、各企業が公開するSDGsへの取り組み状況を通じて、一般消費者がSDGsを学べるメディア「Lookat world」、Lookatプラットフォームの収益の一部を活用して、SDGs実現に向けた企業や団体の活動を支援する「Lookat ourchoice」なども展開予定です。

Lookatは、SDGsのDXであると同時に、SDGsの価値観とITでビジネスや人のマインドを変革するDXであるといえます。
「これからの時代において、企業はSDGs自体を経営・事業戦略に据えることでビジネスを拡大することが可能です。また、企業で働く人やその家族も、SDGsのマインドセットを身に付けることでより自分らしく生きられるようになります」
と葉葺さん。現代に生きる人たちはもちろん、未来の社会にもSDGsの価値を遺していく基盤として、Lookatを創り上げたいと語りました。

【ゲスト講演2】衛星データとAI活用で、世界の行政・農業現場にインパクトを(SAgri株式会社 坪井 俊輔さま)

農業分野に衛星データや AI などのテクノロジーを活用し、行政や農業現場の課題を解決する事業を展開するSAgriさま。現在は、国や都道府県、市町村の行政と連携してプロダクトやサービスを開発し、各地で実証実験を行っています。

例えば、衛星データから耕作放棄地を自動で検出する「ACTABA」は、従来、各市町村の農業委員会の職員が直接現地へ足を運び、目視で行っていた耕作放棄地確認を効率化できるアプリケーションで、耕作放棄地問題の解消に貢献しています。

農地

また、より長期的な取り組みとして、農林水産省によるデータ駆動型土づくり基盤構築事業に参画。衛星データとAIを活用して広域な農地の土壌の状態を予測し、土壌分析を効率化・低コスト化する取り組みを進めています。これにより、より多くの農家が分析結果をもとに土づくりを行え、収量を向上させられるようになるのが目標です。さらに、同省が推進するデジタル地図構築のプロジェクトにも参画し、省内に散在する情報をポリゴン*に統合したり、ポリゴンの更新をAIの活用で自動化したりする取り組みも行っています。

農業

「最終的には、気象や土壌、植生、市場などさまざまなデータを集積・統合したポリゴンをデータ基盤として確立させ、行政の業務や農業現場のスマート農業に活用できるような仕組みを構築したい」
という坪井さん。また、現在インド4州でもポリゴンの実証を行うなど、国内にとどまらない、世界の行政・農業現場のDX実現を目指していると語りました。

*ポリゴン:衛星データなどをもとに作成された農地の区画情報。

【ゲスト×ILY,辻原パネルディスカション】DXは誰のため?ビジョン設計からビジネス戦略の構築まで

後半のパネルディスカッションのテーマは「DXの目的と未来へのビジョン」。まず、インフォコムさまとSAgriさまがそれぞれ展開する施策のビジョンと戦略をご紹介いただきました。

葉葺さんがLookatで目指しているのは「一人ひとりがSDGsを自分事化して想いを行動に移し、実際に世の中を動かせる仕組み」の構築です。その背景には、葉葺さんがリスクマネジメント事業に携わっていた際に感じたもどかしさがあるといいます。防災については『仙台宣言』を始め、国際的な対策方針が掲げられていますが、それを実現するための仕組みが整っていません。そのため、対策がなかなか進んでおらず、未だに災害が起こるたびに被災地の人たちが大変な思いをしたり、被災地域とそれ以外の地域で格差が生じてしまったりしている状況があります。
SDGsでも、これと同様のことが起り得ると葉葺さん。こうした課題の解決に必要なのが、ITという手段です。具体的には、SDGsを見える化することで個人が興味を抱き、「何とかしなければ!」という衝動から行動を起こして、さらに内省し、想いを共有できるサイクルをLookatに構築。さらに、その流れの中で人や情報、お金がLookatプラットフォームに集まり、社会を動かす活動が生まれるようなビジネスモデルを設計しているといいます。

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こうしたLookatのビジョンを社内外へ共有する際には、緻密に構築したビジネスモデルなど「ロジック」部分と、実体験に基づいた「パッション」部分をバランスよくアピールすることを大切にしているそうです。

坪井さんはSAgriのビジョンを「発展途上国をはじめとする世界の農業が抱える問題を、根本的に解決すること」だと語ります。そう考えるきっかけになったのは、SAgri設立前から坪井さんが経営する株式会社うちゅうの宇宙教育事業の中で、発展途上国・ルワンダを訪れたことだといいます。教育を通じてルワンダの子どもたちに将来の夢を抱いてもらうことができたとしても、同国の経済・社会状況が変わらなければ、彼/彼女たちは家業である農業を手伝わなければならず、将来の夢を叶えることはできない。そうした実情を目の当たりにして、社会の仕組みを根底から変える必要性を痛感したそうです。
「衛星データを使ったプロダクト・サービスを提供できれば世界中に展開できるし、行政にアプローチすれば経済的に貧しい人たちにもサービスを届けられると考え、このビジネスモデルに行き着いたんです」と坪井さんはいいます。

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一方で、過去には社内からも「なぜ、困っている農業従事者に直接アプローチしないのか」という反論があり、困難に直面したこともあったそうです。こうした伝わりにくい側面もあるビジョンをチームに共有する際には、メンバーに丁寧に向き合い、時に坪井さん自身に不足する要素も明示しながら「ビジョンを実現するために、いかにメンバーの力が必要か」という点を率直に伝えるようにしているといいます。

辻原は二人の話から、DX施策について社内で経営層を説得したり、施策を推進するチームを形成したりする際には、強く共感してもらえるようなビジョンを設計する重要性を強調。特に、二人の取り組みのように規模が大きい施策の場合、一見して実感を抱きにくい側面があるため、伝え方の工夫も重要になってくると話しました。

さらに、葉葺さんと坪井さんが掲げるビジョンを踏まえ、辻原は「DXは誰が変革するためのものなのか」と問題提起。それに対して、ゲストスピーカーの二人は口をそろえて「人が変革するためのDX」と主張します。

LookatはtoBのビジネスですが「ユーザー企業の従業員にフォーカスしたコンセプト・設計になっているのがポイント」だと葉葺さんはいいます。従業員の方々のマインドセットや行動が変わることで、彼/彼女たちの幸福度が上がれば、仕事へのモチベーションも上がり、ビジネスにも好影響を及ぼすという考え方がベースになっています。また、SAgriさまの事業もtoGではあるものの、最終的に目指すのは「農業従事者や発展途上国の子どもたちが自己実現できる世界観の実現」だと坪井さん。行政が変革し、社会のシステムが変われば、人の価値形成が変革できると強く語りました。

この議論から、辻原はDXの目的、あるいは「DXの主語」(by葉葺さん)について言及。経済産業省によるDXの定義では「企業が」変革することであると明記されていますが「ビジネスの変革によって、その企業で働く従業員やその家族、企業の商品・サービスを利用する消費者など、そのビジネスがかかわる人々の生活を変革するところまでが、DXだといえるのかもしれません」と話して、パネルディスカションを結びました。

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DXのビジョンや戦略から「誰のための変革なのか」といったことを考えさせられた、今回のDXウェビナー。表層的な施策だけに終始せず「自分たちの会社はどう変わるべきか、そのことで人々の生活をどう変えたいのか」といったビジョンからDXを設計し、実践できる企業こそが、これからの時代を生き残っていけるのかもしれません。

今回のレポート記事は、2時間にわたるウェビナーをダイジェストしたものです。全編をご覧いただきたい方は、こちらからアーカイブ動画をご覧いただけます。

Thank you, we love you.

私たちILY,は、ロゴ制作やビジュアルデザインなどの”見た目のデザイン”にとどまらず、MVV策定や事業・サービスのコンセプト設計などの”コトのデザイン”もご提供しております。お気軽にご相談ください。


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