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『こころの処方箋/河合隼雄著』の安心感

ただ本棚にあるだけで安心感をくれる本があります。最も印象的なのは「心のなかの勝負は51対49のことが多い」というところです。
実例として登校拒否の高校生が出てきます。

臨床心理学者の河合隼雄先生による本で、初版は1998年だそうです。20年以上前の本ですが、青山ブックセンターでは先日も平積みされていました。

あるとき、無理に連れてこられた高校生で、椅子を後ろに向け、私に背を向けて座った子がいた。(p.70)

カウンセラーって大変な仕事だな・・と純粋に感じました。しかし、次の文を読んで驚きます。

このようなときは、われわれはむしろ、やりやすい子が来たと思う。こんな子は会うや否や、「お前なんかに話をするものか」と対話を開始してくれている。(p.71)

これも対話なのか・・!

この高校生は、完全に背を向けているので全身で拒絶していると思ったのですが、そうではないのです(まさに初学者の理解ですね)。心の奥底では「ひょっとしたらこのカウンセラーという人が自分の苦しみを分かってくれるかもしれない」という相反する気持ちを抱えているといいます。それが、51対49という僅かな差だということです。

最初に読んだのがいつだったかさっぱり覚えていないのですが、もしかしたら、タイトルの「こころの処方箋」という文字を読んで字のごとく、そのとき何かに悩んでいたのかもしれません。

本書は55章で構成されていて、それぞれ1章完結で悩みや心の傷に効く「処方箋」が書かれている・・

と紹介したいのですが、この本には悩みに対する明確な答えはあまり書かれていないように思います。そもそも、1章のタイトルが「人の心などわかるはずがない」ですから(笑)。ただ、わかるはずがないということの真意は、「あなたのこころのなにがわからないかがわからない」というような深いところを目指す、前向きなことばだと感じました。

半世紀以上にわたって人のこころに深く関わり、多くのカウンセリングを経験してもなお、そう簡単にはわからないものなのだ――。それは一つの救いであるようにも感じました。そこで、この年末に読み返してみて、新たな発見があったので紹介したいと思いました。

著者の河合隼雄先生は、日本で初めて臨床心理学という心理学の一分野の創設に関わったとても権威ある先生です。(箱庭療法を日本に持ち込んだのも河合先生です)

心理職や学生向けの専門書も多数書かれていて、そのどれもが本当に面白いんですよね。
河合先生のやさしい口調そのままに、穏やかな文体で書かれているのも魅力のひとつかもしれません。

冒頭の高校生の例を自分に当てはめると、じょじょに心が軽くなったんです。日々の生活のなかでYESかNOかを決めないといけない場面ってありますよね。それが他の人を巻き込む場合はなおのこと、少し重荷に感じるタイプでした。

他人からみた自分は表面上YESといっている。だけど、本心では51対49で限りなくNOに近いんだぞ、と自分だけが知っているのは大事です。「自分のこころのことを、自分が一番よく知っていなければいけない。」これも河合先生の別の著書を読んで知りました。
2020年は、自分との対話の時間をより持てればいいなと思います。

#青山ブックセンター #ABCで出会った本 #青山ブックコミュニティ

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