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i.lab社内R&D 「Voice Mask」プロジェクト:連載③ アイデアの完成度の高め方

こんにちは、i.labです。

特許取得を機に活動を再開したi.lab社内の取り組み「Voice Mask」プロジェクト。連載第3回目の今日は、新製品のアイデアを着想してから、どのようにしてその完成度を高めていくのか、プロセスに焦点を当てて話していきます。

これまでの連載記事はこちら↓

アイデアは階段状ではなく、螺旋状に完成度を高める

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これまでの新製品の開発プロセスは、上図の左のように、少しずつ具体性を高めながら品質も高め、できるだけ手直しが発生しないように小さな合意形成を繰り返していく、「階段状のプロセス」で進んでいくことが一般的でした。品質がある一定水準に達して初めて、ターゲットとなるユーザーにフォーカスグループインタビューを実施したり、マーケット需要を確認するためのアンケート調査を実施したりしてきました。

階段状のプロセスは、改善・改良型の開発には合理的なプロセスだったかもしれませんが、ユーザーが見聞きしたことがない新しい価値を提供したり、そもそもユーザーもいなかった領域を対象とする新製品創出型の開発では、できるだけ早い段階でユーザーにアイデアを提示し、フィードバックを得ながら「螺旋状」にアイデアの完成度を高めていくプロセス(上図右)が効率的です。つまり、ユーザーのニーズやフィードバックを取り入れながら、作ってはいらない部分を削ぎ落とすを繰り返してアイデアを洗練させていくわけです。システムやソフトウェア開発の分野の開発手法としてよく用いられているアジャイル開発と同義ですね。

では、螺旋状のプロセスの一周分でやることをステップを追って見ていきましょう。各ステップの具体例は次回以降の連載で、現在進行形のVoice Maskプロジェクトを例に紹介していきます。

「螺旋状のプロセス」の一周分でやること

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Step 1. 最小限のプロトタイプ作り
アイデア着想直後の場合、アイデアの品質はまだまだ十分ではないでしょう。それでもまずは、現時点で検証したいことを効率的に表現したプロトタイプを作ります。この後のユーザーへのインタビューで何を検証したいかを考えながら作ることが大切です。(本ステップの具体例は次回連載④で記載します)

Step 2. すぐに生活者へ提示
最小限のプロトタイプが完成したら、3〜5人のターゲットユーザーに対して、それぞれ最大2時間のユーザー仮説検証インタビューを実施します。ここでは、解決するべき問題や課題の検証(=機会領域の検証)、新製品の価値・シーンの検証、ユーザーの購買意欲の検証などを行います。

ちなみに、インタビュー対象者は多過ぎても情報が発散し改善の方向性を見失ってしまいますし、また少な過ぎても大切な点が絞れず改善の方向も見定められないため、3〜5人が適切です。

インタビューに最低限必要なもの
・最小限のプロトタイプ
・パワポ5〜10枚程度で整理したアイデア紹介資料(製品イメージや利用シーン、コピーなど)
・インタビューの質問項目(事前に立てた仮説に沿って質問を考えます)

Step 3. フィードバックを分析
インタビューで得たそれぞれのユーザーの発言情報や観察情報から、現時点のアイデアの内容や今後の品質向上の方向性に対して「重要な事実情報」を抽出します。その後、その重要事実が意味すること、つまり「示唆」について議論を深めていきます。

一般的に、物事の本質や骨子を「幹」と呼び、細かい部分を「枝葉」と呼ぶことがありますが、i.labではアイデアについても幹と枝葉の言葉を用いて、その内容を分析し、品質を向上しています。示唆について議論を深める際には、何が幹で、何が枝葉なのかを見極めながら議論していきます。

言葉の解説
アイデアの「幹」
:アイデアの中核を成す特徴。今後も不変なものとして大切にしたい点。
アイデアの「マイナスの枝葉」:弱めるべき、剪定すべきアイデアの特徴。ユーザーにとって面倒で取り除きたい行動、製品の不要な機能・装飾など。
アイデアの「プラスの枝葉」:強調すべき、追加すべきアイデアの特徴。

Step 4. アイデアのバージョンアップ
Step 3の分析結果を基に、アイデアの提供価値や利用シーン、ターゲットユーザー、製品の機能・装飾をバージョンアップします。バージョンアップ後は、すぐにアイデアのサマリー資料(=次のユーザーインタビューで利用する紹介資料)を作成し、次に検証することの仮説出しを行います。

このStep1〜4をPMF(プロダクトマーケットフィット)が達成されるまで繰り返していきます。

言葉の解説
PMFとは、提供する製品がユーザーの課題を解決できる適切な市場で受け入れられている状態のことを指します。

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いかがでしたでしょうか?本エントリーでは、i.labのコンサルティングプロジェクトでも用いている、新製品のアイデアの完成度を高めるプロセスについて紹介しました。次回は、現在進行中のVoice Maskプロジェクトにおける上記Step1. 必要最小限のプロトタイプ作りについて、これまで具体的に行ってきた内容をお話しします。更新をお楽しみに!

Voice Maskを一緒に具現化してくれる仲間を募集中!

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i.labでは、Voice Maskの実現に向けて一緒に協業していただける技術者や研究者、企業を募集しています。ご興味がある方は以下までお問い合わせください!

問い合わせ先
メール:info<at>ilab-inc.jp
担当者:i.lab ビジネスデザイナー 鈴木斉