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i.lab社内R&D 「Voice Mask」プロジェクト:連載8 ユーザーインタビュー ①

こんにちは、i.labです。

特許取得を機に活動を再開したi.lab社内の取り組み「Voice Mask」プロジェクト。連載第8回目の今日は、1人目のユーザーインタビューのレポートです。

前回(連載7:インタビュー方法)の記事はこちら↓

インタビューの概要

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遠藤敦子さん

❶遠藤さんについて

1人目のインタビューは、SCSK株式会社 産業事業グループ部署 事業開発セクション(取材時)で、管理職として日々事業開発に奮闘する遠藤敦子さんです。i.labでは、これまでSCSKさんといくつかのプロジェクトをご一緒させていただきました。その際の印象から、今回の対象者として最適なのではと考えインタビューの依頼をしました。

❷ 遠藤さんの属性、選定した理由

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インタビュー対象者を探すにあたり3つの属性を設定しました。遠藤さんは属性2に該当します。
中学生と小学生の二人の娘さんを持ち、ご主人と共に働く共働き世帯の遠藤さん家。コロナ禍の最近は、ほぼ100%在宅ワークをしているそうです。自粛期間中には、夫婦の在宅勤務と娘さんのオンライン授業も重なり、家族4人が同時にリモートワーク&学習する状況も容易に想定できたため、まさに属性2の生活者として、リモートワークの実情や課題・ニーズについての理解を深められるのでは、と期待してお声がけしました。

❸インタビュー場所

インタビューは、i.labのオフィスで実施しました。i.labからはメインインタビュワー(対象者との会話をメインで行う人。あらかじめ用意した質問の投げかけから、回答に応じた深堀質問、時間配分を担当する)と記録係兼サブインタビュアーの2名体制で参加しました。

インタビュー内容

では、ここからは実際のインタビューの内容をご紹介します。

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—— 現在の業務内容について教えてください。

遠藤さん: SCSKというシステムインテグレーター企業の産業事業グループ部署の事業開発セクションに所属しています。事業開発セクションでは、企業の上層部から経営の効率化などを目的に行う「守りのIT」に加え、企業が何か新しいことをやっていく時にITという武器を提供する「攻めのIT」を行なっています。また、長期目線で我々自身が事業主体となってITを使って世の中をよくするためのサービス・事業開発の活動も行なっています。

 企画フェーズでは内部でブレストや打ち合わせをすることが多いですが、ニーズ検証フェーズではフィールドワークに出たり、企業や個人の想定ユーザーにインタビューを実施します。今は管理職なので活動の中心はメンバーに任せており、社内チームメンバーとの確認やレビュー、上に報告のようなコミュニケーション業務が多いです。

—— コロナ禍のワークスタイルについて教えてください。

遠藤さん: 少し前までは週に1回オフィスに行っていましたが、最近はほぼ100%在宅ワークですね。1日の8割くらいはずっとミーティングをしていて、本数は5-6本くらいですね。自分のチームのものが半分、社内の関係部門と社外を足して半分ぐらいです。仕事柄ブレストすることが多いのですが、オンラインだとそれが難しいなとも思います。その場で反応を見てパッとホワイトボードに書いて確認していたようなことが今はできないのが大変ですね。伝わったかどうかを再度確認するミーティングが追加されたりして、一個のことを形作るのに以前よりも時間がかかるようになりました。

—— 在宅ワークはご自宅のどこでやられていますか。

遠藤さん: 今は横浜の戸塚で、もともと夫の実家だった戸建てをリフォームした二世帯住宅に暮らしています。下に義母、上に私と夫と子供2人で5年前から住んでいます。お義母さんの住む1階が2LDK、2階も2LDKですね。子どもたちは2人で一部屋です。在宅ワークは私はダイニング、夫が寝室でやっています。寝室の方が静かで、ダイニングだと子供がお菓子を取りにきたりするのが嫌です。最初は夫と私二人ともダイニングで、テーブルに向かい合ってやっていて、スペースは広くて良かったのですが、お互いの会議中うるさいのが気になり、折りたたみの机と椅子を寝室用に買って分かれてやるようになりました。夫はミーティングが1日の2-3時間くらいで聞いてるだけのことも多いため、最初はミーティングが多い私が寝室を使っていました。結局、寝室の椅子が使い心地が悪く、また夫はダイニングではやりたくないということで交換しました。

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その場でご自宅の間取りを描いてもらった

—— ご主人との間で、ミーティング中のルールや遠慮していることはありますか。

遠藤さん: 寝室が暑いのでドアを開けていたら、夫に「一日中話していてうるさい」と言われたのでドアを閉めるようにしました。逆にリビングの冷蔵庫の開け閉めは静かにしてもらっています。お互い気になって、集中が妨げられるんですよね。

仕事上の話で子どもには聞かせたくない話もあります。部下との面談や、他の部門とうまく行っていないやり取りについて指示している時はポジティブな話ではないことがあるんですが、子供は親が仕事でうまく行っていない様子を聞きたくないだろうなと思って。現に不穏な空気が漂うと子供は察して出ていきますし、逆に部下を褒めてるときは普通に座っていますね。

音を立てない方が良い時や、内容が深刻で自分の出番が多いミーティングがあるときは、事前に夫に言って寝室を使わせてもらいます。リビングは冷蔵庫や食洗機の音が結構鳴るので、私がよく喋るときは子どもにも話しておきます。「始まる前に飲み物取りに来たりしておいて」とか。

—— お子さんの授業はオンラインで実施されていますか。

遠藤さん: 授業がオンラインになったことは実際にはまだ一度もないんです。上の子の塾では、昨日(取材日は2021年9月)からしばらくZoomになりました。塾ではあまり発言をすることはなく、画像も音もミュートにするように言われているみたいです。(中略)下の子は勉強やピアノの練習、読書をするために子ども部屋を使っているんですが、多い時は家で3人がオンライン通話しているため、声が出せなくなってしまうのはちょっとかわいそうだと感じています。

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—— コロナ禍初期に、リビングで遠藤さんとご主人の2人が同時にオンラインミーティングをしていた時に何か気になることはありましたか。

遠藤さん: めちゃめちゃありました(笑)。同時に話した時に相手の声がお互い入ってしまって、単純にうるさくて聞こえないんです。社外の人に聞こえるのも厳密にはダメですし。お互い事情はわかるので喧嘩になることはなかったですし、同時にやるときは一時的に子ども部屋を使ったりもしましたが、子供も休校になっていた時期だったので「なんとかしないとまずいね」という話になりました。2-3日でニトリに寝室用の机と椅子を買いに行きました。

—— オンラインミーティングに対して気を使っていることはありますか。

遠藤さん: ありますね。ミーティング相手に「今日子どもがいてうるさくてすみません」とか、「畑で何か耕しててうるさいです」とか言ったりはします。(中略)私は効率を大事にしていて、仕事とプライベートにあまり境目がないので、1日にすべきことを洗い出して効率よく組み合わせるんですが、リモートワークになったことでさらに隙間にミーティングを詰め込めるようになったんです。そうするとメンバーがカレンダーを見たときにいつがオンでオフかわからない、ものすごく予定が詰まっている人に見えてしまうようなんです。

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ここで一旦区切り、アイデアの説明に入りました。アイデア紹介資料をお見せしながら、モックを試していただきました。

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—— アイデアの説明を聞いてみたあとの率直な感想を聞かせてください。

遠藤さん:新幹線でミーティングできるのはとてもいいですね。出先でミーティングのためにカラオケに入ったりしたこともあるので、出先で急いで場所を探す必要がないのもいいなと思います。あとは、たまに会社に出社した時の大部屋問題を解決できるところ。最近はみんな出社してもオンラインミーティングに参加するのですが、逐一10人用の会議室を借りていてはキリがないので、それぞれ席で参加していることがあって、それがうるさいんですよ。ハウリングもあるあるですね。

—— 実際にプロトタイプを手に取ってみた感想はいかがですか。

遠藤さん: おしゃれ。色合いが好きです。余分なものがついていない感じ。なんか赤い線が付いているとか、余計なものがついていないのに好感が持てますね。艶消しのマット感もおしゃれで素敵だなと思います。てかてかしてるのかっこ悪いじゃないですか。カフェとかの公共空間で使うのに恥ずかしくないデザインだなと思います。普段のヘッドセットは恥ずかしいという程ではないですが、かっこ良くはないですね。私のヘッドフォンと大きさは同じくらいですが、耳のところが細いのもいい。普段のbluetoothのものはずっと付けてると疲れるので、長く付けてても疲れないのは大事ですね。もっと折りたたんで小さくなるといいのに。

—— サイズ感や形状について思うところはありますか。

遠藤さん: 私のように一日のほとんどをミーティングに使う人だと、ジャストフィットすることが一番大事ですね。ズレない、痛くない、重くないこと。今のbluetoothのものは締め付けがきつくて頭が痛くなってしまうので、耳の部分にフィットして、雑音が入ってこないと良いです。見た目がかっこいいのは良いなと思います。あと畳んだ時の理想としては、CDくらいの大きさのケースに入れられると嬉しいです。今のヘッドフォンはケースが巾着みたいでダサいので入れていないんです。

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—— 説明の中で理解できなかったことはありますか。

遠藤さん: 仕組み上、外には漏れないけど通話相手にはクリア聞こえると言う認識でいいですか?相手にはクリアに聞こえていて、「遠藤さんまたマイク変えた?聞こえないよ」と言われなければいい。在宅ワークの場合、Voice Maskによって音の問題を解決できても、作業する上で快適にはならないので、やはり外のスペース借りたくなると思います。でも個室だと高いんですよね。そうなったときに、オープンスペース借りるだけでその問題を解決できるなと思いました。

—— 自分の声がどの程度消音される必要があると思いますか。

遠藤さん: 在宅ワークであれば内容がポジティブなのかネガティブなのか雑談なのかも識別されないくらい、「ママなんかしゃべってるな」くらいの消音具合ならいいかなと思います。そして、自分の家の音が通話相手に聞こえづらいというのも、「これを使うからもう気にしなくていいよ」と家族に言えるので良いと思います。ただ、満員電車の中の場合は完全に無音じゃないとダメですね。よくイヤホンのシャカシャカ音でトラブルになるくらいじゃないですか。

—— 他に第一印象として感じたことはありますか。

遠藤さん: 私は効率化人間なので、もっとやりたいことを詰め込めるようになりそうだと思いました。オンラインミーティングをする場所や時間の制限がなくなって、この時間にはミーティング入れられないと思っていたところに入れられるようになるなと。例えば、今は私が移動している時間は他の人がミーティングを入れられないわけですよね。もしくは、仕事だと私が課長なので時間を合わせてもらえますが、ワークデザインラボという副業の方ではみんなの都合の良い時間で決まるんです。そうするとミーティング時間に電車で移動中のことなんかもあり、聞くだけミーティングになってしまうことが多々あります。今は言いたいことがあると電車の中で頑張ってチャットしているんですが、これがあればそれにも参加できるようになりますね。電車での通勤中、出張の新幹線の中、時間と場所に縛られないオンラインミーティングが実現できるなと思いました。今までは出張があるときは日中のミーティングに出られるよう定時後に出張先に移動していましたが、日中にミーティングにも参加できて、移動もできたり、これがあると一日の中でやれることがもっと増えそうです。満員電車でも使えるくらいの性能を期待しています。口元も見えないということなのでパクパク話している感じのところが見えないと良いですね。

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—— ご自宅での使用を想定した際にウェアラブルである必要性はありますか。

遠藤さん: どんなに装着性が良くても疲れると思うので、家なら置き型とかの方が快適だと思います。外に出ることが増えたらヘッドセットもありかなと思いますが、今は家にいることが多くてミーティング中の家の雑音問題を解決したいので、どちらかしか販売されないなら今は据え置きが欲しいです。据え置きでも持ち運ぶと思います。両耳が塞がってしまう場合、誰かに呼ばれた時に気づけないのが気になります。

—— 技術的に声を完全に消音することは難しそうなのですが、「声は消せないけど家の雑音だけ消せる」だけでも価値になりますか。

遠藤さん: 価値になると思います。うちよりももっと小さい子がいる家は深刻で、よく子どもに「静かに歩け」と言っている話を聞きます。最近は都内だと保育園を休んでほしいと言われているみたいなので、「すみません子どもが家にいるんです」と皆言っていますね。この場合、子どもの声が自分に聞こえる必要はあるので据え置きになるかなと思います。

—— 自分がVoice Maskの開発者だとしたら、据え置き型とヘッドセット型のどちらを開発・販売しますか。

遠藤さん: コロナがもう少し落ち着いたら、移動中のミーティングをターゲットにしてヘッドセットを開発します。今なら据え置き型を開発すると思います。在宅ワークの状況を考えて、「家族の生活と仕事が同じ空間でシームレスにつながる、分けなくてもいい」というPRをすると思います。子どもも親にも静かにしてもらっているので、「家族に遠慮させない」ということがポイントかなと思います。3万円くらいなら買うと思います。もう少し高かったら悩んで決める感じ。

競合は「部屋を増やすこと」なのかもしれないですね。既に家を持ってしまっていて、それができない人にとって必要なもの。同僚の一人は玄関の近くのクローゼットのようなところで仕事をしていて、インターホンや犬の鳴き声などが聞こえてきてしまいます。「これから家を建てる人は良いよね」と言っていました。

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(インタビュー終了)

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インタビューの重要事実情報

以上がインタビューの内容でした。このあとは、インタビュー内容を分析するフェーズになります。

これらのインタビューでの発言(事実情報)の中から、アイデアの完成度を高める上で特に重要そうな発言(重要事実情報)を抜き出し、改善のための示唆を導き出していきます。

遠藤さんのインタビューから、i.labが抽出した重要事実は以下です。

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いかがでしたでしょうか?本エントリーでは、1人目のインタビューについてお話しました。次回の更新もぜひお楽しみに!

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問い合わせ先
メール:h-suzuki<at>ilab-inc.jp
担当者:i.lab ビジネスデザイナー 鈴木斉