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CTOの仕事は”作らない”意思決定だったのかもしれない

新規事業領域でプロダクトマネージャーをやっています平川といいます。2018年に博報堂のベンチャー制度を通じて起業した会社を残念ながら2019年11月で畳むことになりましたので、振り返り的意味を込めたnoteです。

はじめに

簡単に自己紹介すると、2015年にエンジニアとしてキャリアを始め、フロントエンド領域で実務を重ねていました。クライアントのブランド・ECサイト・キャンペーンサイトなどの実装や、全体のテクニカルディレクションをしていました。広告制作よりもクライアントの新規事業立ち上げなどWebサイトよりもサービスの開発に携わることが多かったです。

2017年の秋頃に、博報堂の2人と博報堂DYグループ横断型社内ベンチャー制度AD+VENTUREに「個人店とお店好きが繋がるCtoCの事業」を企画しエントリー、様々な審査のすえ、採択され2018年frascoという会社を起業し、取締役CTOとして事業を開始しました。
立ち上げ当時の記事(https://www.hakuhodo.co.jp/magazine/50494/)

frascoでは街のローカルショップが提供するワークショップなどをお店好きの方がサブスクで享受できるサービスを立ち上げ、何度かピポットを繰り返した後、最終的にその街に住む人がオススメする様々な個人店を取り扱った「ローカルによるローカルのための街歩きガイド Stock.Shop」というメディアへと帰着しました。

最終的に月間15万MAUのサービスまで成長しましたが、制度上の事業移管の壁を超えられず11月20日で畳むこととなりました。

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(こういうサービスです。都内のイケてるお店死ぬほど把握した)

サービスをクローズする案内をしたときは、我が子が地球の裏側に嫁に行った気持ちでした。悔しかった。各方面から残念、無くさないでの声も沢山来て涙しました。使っていただいた皆さん、そしてなにより僕らの思想に協力し、参加してくれたお店の方々本当にありがとうございました。

このnoteでは、広告会社から初めて事業開発、経営に約2年取り組んだ振り返りを目的としています。社内ベンチャーに関心のある方やエンジニアで起業しようと思っている方に参考になれば幸いです。(ベンチャー村では、当たり前だろみたいな話もあると思いますが優しくしてください。)

ちなみにfrascoではCTOとして、PdM的役割からクライアントサイド〜インフラサイドの開発やテックリード的なことまで、プロダクトに関する全てが僕の責務でした。(だからCTOというよりもCPOに近いのかもしれない)

初期のMVPはコード書くべきじゃなかった。

振り返ると初期のMVP(Minimum Viable Product)が余計な機能が有りすぎて、顧客の本当の課題を解決できていなかったと思っています。

初期からいきなり作りだしたのも反省。今振り返ると、PDFで説明するくらいで良かったと思うし、コードを1行も書かず仮説検証すべきだった。

創業有る有るかもしれないんですが、議論していいねー!よし作ろう!みたいな。完全仲間内で盛り上がって作り始めたのが大失敗だったと反省してます。確か一人でフロントバック合わせてだいたい3週間くらいで作った気がします。もったいない。いきなりコード書かない超重要です。

既存のサービス使って、色んな実証実験はできると思うんですよね。twitterにPDFを上げて需要検証することも、有料記事の需要検証をnoteでしたりとか創意工夫で仮説検証を繰り返すのが大事。

ヒアリングはとにかく命。コード書くより人に会う

お世話になったApp Sociallyの高橋さんにもすごく言われたのですが、「なぜユーザーが熱狂するのか?それをとにかくヒアリングして見極めろと」。それまでは全ての開発の動きを止めろとアドバイスを頂きました。

ちなみにApp Sociallyの実証実験もPDFのみで200名にヒアリングしてます。このブログとても役に立つのでオススメです。

システムにする前に、ポンチ絵でひたすらヒアリングして何がペイン(課題)で、どのソリューションが刺さるのかを見極める。そして大事なことだと思うのですが、ヒアリングはPdM的役割の人だけで行くことは辞めたほうが良い。デザイナー・エンジニア、プロダクトに関わる全ての人で行くべきです。(僕らはよく3人で行ってました。)

(スタートアップのバイブル。ヒアリングに関してはこの本がすべて)

機能を増やし続けてカオスになった

リリース後は会員の方へヒアリングを重ねてました。(もっと会うべきだったかもと思いますが、多い週で5名くらいに会っていました。)

ヒアリングで出てきた意見の中から、こういうのがあったら良いのでは?こんな機能があったらもっと人が呼べるんじゃないか?みたいな仮説を基に機能をどんどん作ったんですが、逆にカオスになったんですよね。これは一体何のサービスなんだ?と。

小さく小さくサイクルを回せるようにポンチ絵もしくは、ユーザーの一部分だけ使ってもらい反応を見るとかして効果測定すべきだった。

大事なのはヒアリングの声を鵜呑みにするのではなくこの機能は何のKPIに直結して、なぜ必要なのかとことん掘ること。エンジニア的発想だと作ることがゴールになりがちなのですが、アウトカム(成果)だけに絞る。成果にならない機能は心を鬼にして壊す。

PdMの名著でも有る”inspired"にもアウトプットではなく、アウトカムに注力せよと。これは頭に入れておくべきだと思います。

AARRRやKPIツリーは速やかに定義せよ

事業開発を初めて、色んなことを学んだのですが特にグロースハック周りの知識が増えました。(広告業界とは考え方が本当に違うな、大草原や...!と思った記憶があります。新卒で広告業界入ったときも大海原や...!と思った)

ちなみにAARRRは以下の5つの切り口に沿って成長戦略を考えるモデルです。ちなみに読み方は”アー!”です。

Acquisition:新規ユーザー獲得
Activation:利用開始
Retention:継続利用
Referral:紹介
Revenue:収益化

各方面様々なアプローチが有ると思うのですが、初期は何よりもRetentionの意識を持つことが重要だと思っています。広告だとこの媒体にいくら予算を出せば○○くらいのリーチは獲得できるみたいなところに主軸を置くのですが、事業はRetention命。

何度も使ってくれることには必ず意味があるはずで、それをヒアリングで突きつけていくことが大事です。○○というアクションをしたら1週間後の戻り率が△△%上がったとか、データ的なアプローチが大事ということを学びました。グロースハックやべー!って思ったのもこの頃w

KPIツリーは、事業の指標を因数分解していくのですが、これをチームの中で定義し各施策や機能がどの指標を引き上げるものか図るために必要です。

初期に作った戦略や指標がずっと更新されないことは無いと思いますが、感情的に機能を作っちゃったりするときもあったので、常に横において振り返られるようにしておくべきだなと思います。

お金を払ってでも使いたいプロダクトを作る

人を集めてから有料化の仮説検証をしようと思っていたんですが、甘かった。結局どれだけ人が集まれば有料化できるのかも不透明だったし、何より初期から”お金を払ってでも使いたい人がいるプロダクトなのか?”の検証が欠けていたのでとても苦労することに。

初期はコードを書くべきではないと冒頭書きましたが、MVPの段階で”自分たちのプロダクトは、お金を払いたいソリューションになっている”か?
そこの検証にもっと時間とリソースを割くべきだったと思っています。

この前行ったnoteの定性と定量の甘い関係の話で、”売上はミッションを達成するためのツールであって目的ではない”と学びましたが、最低限売れるものをコードを書かずに見つける(当たり前ですが大事)

事業に必要な技術基盤と体制を検討する

いわゆる”納品マインド”をなくして、事業を運営するために必要な”体制”を作る大事さ。広告会社であれば、クライアントからオリエンを受けて、戦略が出来、企画が練られ、必死に製作し納品、公開!なのですが、事業開発は、公開してからがスタート。仮説を立てて、ミニマムに作り、テストし、評価し...のPDCAサイクルをどれだけ速く、数多く学べるかが命。

mixpanelみたいな行動を追えるログツールの存在とかも途中で知って後からアーキテクチャに組み込んだりとか、後からこれはやり直さなくては...みたいな技術負債も多かったので、初期から理解しておくべきだったなと。

外部から人材を引っ張ってくるのに、技術の壁とかで取りにくかったり、予算がオーバーしたりとかするのでそのへんのさじ加減も大事だなと。(エンジニアとしてはつい使いたい技術を追いがちだと思うんですが、ビジネスとしてスケールさせるための技術選定を意識することも忘れちゃいけない。それが普遍的な技術だとしても。)

CTOの仕事とはなにか

まだまだ駆け出しのキャリアで偉そうなこと言うのも恐縮ですが、初期のスタートアップ(特にプロダクト担当が一人みたいな状況)では
”お金を払ってでも使いたい、課題に刺さるソリューションが見つかるまでは作らない意思決定”と、”作り出す際に、全体を見通してビジネスをスケールさせる技術基盤を構築する”の2点が大事なのかと思ってます。

さいごに

終わってみたら山の数くらいの反省はありますが、チャレンジしたことに後悔は無い。会社は続けないと何も意味がないことを痛感しました。

3人(途中から代表が産休に入ったので2人)で朝から夜まで議論して事業に向き合ったことは自分の中でとても財産になったと思います。こういった貴重な体験を社会人の4年目で経験できたことは本当に感謝。(関わってくれたアイスタ、博報堂、事務局、ガイド、パトロン含め多くの方にお礼を言いたい。ありがとうございました。)

この後はまだ公には出来ないですが新事業の立ち上げとかします。エンジニアとして頑張るというよりは、事業を立案して伸ばしていくプロダクトマネージャー的ポジションで頑張っていく予定です。

今回学んだ多くのことを次のビジネスに活かして次こそは当てたいと思っているので、これからもネット業界・スタートアップ界隈の皆様よろしくお願いします。

ご支援ありがとうございます!これからもがんばります!