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映画「シン・ウルトラマン」を今更観たので感想

Amazonプライムで配信中の映画「シン・ウルトラマン」を観たので感想をしたためておきます。
ネタバレには配慮していないので気になる方はご注意ください。

■映画情報

【公開】2022年
【監督】樋口真嗣
【企画・脚本】庵野秀明
【上映時間】113分

■ざっくりあらすじ

巨大生物「禍威獣(カイジュウ)」が日常的に出現するようになった日本。正体不明な脅威に対抗するため結成された禍威獣特設対策室(通称:禍特対)の前に、銀色の巨人が現れる。立ち振る舞いから謎の巨人を意思疎通が可能な知的生命体と推察した禍特対は、「ウルトラマン」と仮称し、その目的を探ろうとする。
同時に、地球には外星人がもたらしたかつてないほどの危機が迫っていた。

■ざっくり感想

かなり『忙しい』映画でした。とにかくテンポが早い。やりたいことをぎゅうぎゅうに時間内に詰め込んだ感じ。
まぁ分かるっしょ!みたいな感じでどんどん情報が出て話が進んでいくので展開も早い早い。
特に冒頭はウルトラマンを知っている人と知らない人とで、かなり理解度が違うと思います。

とにかくこれが分かっていればいいんだな、というのは割と分かりやすいので個人的にはあまり気にならなかったけど、きちんと受け止めたい人にはモヤモヤが降り積もるので、ここが賛否を呼んだ理由の一つなのかもなぁなどと思ったりしました。
 
内容そのものに関して言えば先入観や事前知識が無い状態で観たので、特に思うところはありませんでした。

最終的に、私は今作を圧倒的な力・知識・文明を持つ上位生命体であるはずのウルトラマンが、あまりに無力で脆弱で幼稚な人類を「好きになってしまう」物語だ、と理解しました。好物です。

その解釈を前提にして言えば、いまいち人類側に危機感がなかったり、軽率に悪手を重ねたりしていることも違和感なく受け止めました。
この物語においてはちょっと人間がおバカでどうしようもないくらいがむしろ良いんじゃないでしょうか。

■ウルトラマン初心者が観てどうだったか

ウルトラマン知識に乏しい状態で観ているので、スペシウム光線だー!程度の反応しかできません。
でも多分コレめちゃくちゃオタク心をくすぐりまくってるんだろうな〜〜〜〜というのだけはハッキリと分かります。
オラッ!どうだ!くすぐられるだろ!ってビームがすごい。
でも具体的にどこをくすぐられているのかは分からない。悔しい。

■よかったところ

主演の斎藤工がすごいぞ!
一見あまり緩急のない、人外感を出すための演技に見えるんですが、途中でウルトラマン変身後の姿なのに確かにシン・神永の面影を感じるシーンがあってゾクっとしました。
佇まいとか表情とかなんですかね、あれは。

ビジュアル的な点だと、ウルトラマンといえば胸のカラータイマーが有名ですが、今作のウルトラマンにはありません。
ここは過去作のファンからするとどうなのかは分かりませんが、私は無くて大正解だと思います。
今作の場合、大事なシーンやピンチを迎えた場面でピコピコ鳴っても大丈夫なテンションでは無いのと、多分画面の色味・明暗的にチラチラ光られるとかなり気になったんじゃないかなぁと。
あとは、そういう分かりやすいギミック的な要素がないことで、そういう生き物感というか、ある種の生々しさが出てより外星人感が増した気がします。

あと地味に嬉しかったのが、あまり大きな声を出すようなシーンがなかったこと。
誰かが激昂したり、興奮して怒鳴りあったりするような場面がないので、戦闘シーンがある割には静かな映画だと思います。
映画館だとSEが大きいという評判を見かけたりはしましたけど、配信では大丈夫でした。

地球(というか日本)が未知の生物の脅威に直面している割には順応して穏やかに日々を過ごしている感じがなんとなく気持ち悪くて、でも妙にリアルで非常によかったです。

■ちょっと気になったところ

なんでここにそんなに時間かけたんだ?とか、これ要る?と思うシーンや要素もそこそこありました。

例えば浅見の登場シーンは映像の意図がイマイチ分からなかったんですけど、そもそも彼女って元からチームにいたんじゃダメだったのかな〜なんて。
時間が無い中でいきなり出てきてバディがどうのチームの絆がどうのっていうのは厳しいと思います。
新しく関係を構築することで絆というものを理解するよりも、一方的に向けられる好意や信頼によって外星人が戸惑いながらも地球人の群れの在り方を理解する流れの方が、少なくとも人類側にはあまり違和感無いかなって思ったりしました。
他の人たちはともかく、初対面の浅見さんがいきなりチームに馴染みすぎててちょっと違和感が。
というかあの会話してても周りから変に思われない神永って、もはや元からウルトラマンと変わりないのでは……。

あとは、ザラブとメフィラスのくだりを少し被せるようにして並行して進めたら畳み掛ける感じが減ったんじゃないかなーとか。もう少し早くメフィラスの存在を匂わせてもよかった気がします。

というのも、この2連戦にかけた時間に対して、ゼットン戦の時間の流れが感覚的に掴めなくて。ここって相当な勢いで色々進んでますけど、実際どれくらいのスピード感の話だったんだ?って。
ゼットン起動まで時間あってよかったねという話なのか、それともゼットン起動早っ!よく間に合った!という話なのか、いまだにちょっと分かってないです。

■主題歌良すぎる

最後に、聞いていた通りエンドロールが良すぎる。
米津は言語化の天才です。

例えば歌いはじめの歌詞。

遥か空の星がひどく輝いて見えたから
僕は震えながらその光を追いかけた

「M八七」米津玄師 https://www.uta-net.com/song/318775/

映画を観る前、ウルトラマンのために書いた曲、として聴いていたときには普通にウルトラマンのことを指しているんだろうと思っていました。

視聴後、これはリピア(ウルトラマン)側から見た神永(人類)のこととも言えるんじゃないか?というのを考えました。
あのとき命をかけて子どもを守った神永が、リピアにとってはどうしようもなく愚かで、でもだからこそ「ひどく輝いて見えた」んじゃないかって。

そして歌の最後

微かに笑え あの星のように

「M八七」米津玄師 https://www.uta-net.com/song/318775/


神永のことかーーーーーッ!!!!!

あるいは最期の瞬間に子どもの無事を確認した神永が微笑んだんじゃないかくらいまで妄想しました。
妄想戦闘力53万のオタクなので。

さらに<引き合う孤独の力>とくれば、これはやはり『二十億光年の孤独』(谷川俊太郎)でしょう。

ウルトラマンは孤高の存在で、なぜなら彼は他者の力を必要としない、限りなく完全に近い上位生命体だから。
でも、だからこそ、弱い生き物がより弱い生き物を守ろうと命をかける姿に心を震わせた。
自分以外を理解したい、誰かと生きてみたいと思った時点で、ウルトラマンは孤独を知り、そして孤独を自覚してしまった。
それこそが<痛み>で、それは不合理な勇気をもたらすものです。

同じ光の星の民であっても、ゾーフィにはそこまで人類に惹かれるウルトラマンの気持ちはわからないんです。
なぜなら彼は<引き合う孤独の力>を知らないから。

まとめると、エモいねって話です。

■まとめ

映画としての出来で言えば、正直なんとかまとめた印象が強く、こだわり故なのか、少し甘さのある作品だと思います。
でもウルトラマン好きにはたまらない遊び心満載の、あらゆる意味で愛が詰まった映画です。

ちなみにシン・ウルトラマンを観たというとかなりの確率で聞かれる「シン・ゴジラとどっちがよかった?」という問いに関しての答えは、「映画として完成度が高いのはシン・ゴジラ」です。
割と感受性の扉を開いた状態で観ることをおすすめします。


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