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立派な親じゃなくていい -理想を追い求めることが、親子の幸せに結びつくとは限らない-

10月17日に発売になる、教育改革を行う麹町中の工藤校長の3冊目の著書、「麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること」の企画、編集協力に携わらせていただきました!

この本は、「麹町中のように教育体制が整っている学校に入れない私の子どもは不幸」という思いだった私が、

工藤校長の一言で目覚めたのをきっかけに、親が今いる環境のなかで子どもの自律のためにできることをまとめたいと思い、手掛けた一冊です。

麹町中の取り組みを知ると、それがとても理想的なものに見えてしまい、自分の環境を否定してしまう。(私がそうでした)

人のせいにしない子どもを育てる、という工藤校長の考えに賛同しながら、自分の環境を否定する(人のせいにする)という矛盾に陥ってしまう。(私がそうでした)

でも大事なのは、先生も保護者もすべての大人が当事者になり、誰かのせいにするのをやめて、周りを信頼し、小さなことからでも取り組んでいくことなのではないか。

今回は私がそう思うに至った経緯と、出版に至った経緯、大事にしたことなどを書きたいと思います。

衝撃的な出会いと「麹町中」まっしぐらモード

 

私が初めて麹町中の工藤校長を知ったのは、去年の夏のこと。
NHKおはよう日本で、その取り組みが紹介されていました。


宿題、定期テスト、固定担任制度の廃止。服装、頭髪指導はしない。そのすべてが子どもを自律させるために行われていること。

私は長いこと、学校のありかたに疑問がありました。

学校で座っていられなかったり、いい点数がとれないことって問題なのだろうか?むしろそういう子を大人が否定していたら、子どもは自分を信じられない子になるのではないか、と。

なので工藤校長の考えに電気が走りました。鳥肌が立ちました。

そして、そのとき私の頭の中にあったのは

なんて理想的な学校なんだ!
うちの子もぜひ、麹町中に!!!

という思い。

すぐにFacebookで工藤校長に友達申請し、その1ヶ月後に麹町中で行われるPTA主催の講演会があると知り、すぐに応募。

そして当日まで麹町中に通うにはどうしたらいいのかを考えては、立ちはだかる壁の高さに気が付き(千代田区家賃高すぎ問題)、「無理か…」と落ち込む日々でした。

「麹町中だからできるのでは?」の嵐

そして迎えた講演会当日。

麹町中にで行われていることが、どのような理由で行われているかを細かく工藤校長から説明を受け、目からすべてのうろこが落ちたのではないかというほどの衝撃を受けました。

学校では目的と手段のはき違えがおきてしまっている。学校は本来、子どもを自律させることが目的の場所で、勉強ができるようになるのも、学校に通うのも手段に過ぎないのに、それが目的になってしまっている

※ウェッジさんの工藤校長の連載はこの日の講演会をまとめたものではありませんが、工藤校長の改革、考え方がよくわかる記事ですので貼っておきます。神・連・載です!

■「みんな仲良く」「心をひとつに」などと学校では言われるが、みんなが仲良くすることは難しい、心はひとつにはならないことを教え、そのうえで自分と異なる価値観の人とどう協力していくかを自ら考え実行していくことのほうが大切

などなど。すべてが、納・得・感!!

最後に質問コーナーがあったのですが、その質問のほとんどが
「麹町中の土地柄もあってできることでは…?」
「うちは田舎のほうなので無理だと思う…」
というような意見。

そのとき、工藤校長は

「麹町中でしかできないことも確かにありますが、みなさんの地域でもできることはたくさんあります。まずはみなが当事者意識をもって、対話をしていくことが大事

!!!

そして、こう続けたのです。

「麹町中が理想の姿だと思って、そうなれない自分の学校はだめだと思うようなら、麹町中の存在なんて必要ないと思うんですよ。勝手に理想を掲げて勝手に不幸にならないでくださいね」

!!!!!!!
まさに私のこと!!

確かに子どもの教育環境をよくすることは大事。選べるなら選んだほうがいいと思います。

でも、自分の今いる環境のなかで当事者意識を持ち、動いていくことも大いに価値があるのではないかと思うようになったのです。

そう、私は何かを悪者にしかけていました。

この講演会には大空小学校の元校長、木村泰子さんもいらっしゃって、子どもたちの可能性を感じられるエピソードをお聞きし、それはもう頭がしびれるような一日になりました。

※このとき聞いたエピソードは、本書のなかに収めていますので、ぜひ読んでいただきたいです!

今いる場所を否定せず、できることをやる

「今の環境を否定せず、自分が置かれた環境でできることをやろう」

一気に視界がクリアになった私は、まずは娘が通う学校の現状を知ろうと翌年にPTAに入ることを決めました。

この時点で娘が通う学校に対して特に問題意識はなかったのですが、保護者も子どもも自律した学校のために、何かできたらと。

と、ここでもう一つ、私のなかでひとつの想いがむくむくと湧き上がります。

ライターとして書籍の編集協力などを何度かしている私は、工藤校長の書籍の担当をしたいと思うようになるのです。

過去の私のように、学校や社会が変わってくれることばかりを求めて、自分が動いても意味はないと思っている親御さんがいるなら、麹町中でなくてもできる、子どもが自律するためのヒントを集めた本を作りたいと

自分に自信がない私はなかなか工藤校長に連絡できず散々モジモジしましたが、友人ライターの後押しがあり工藤校長に連絡ができました。

そしてお返事は「もう数冊話しが進んでいますが、内容が被らなければいいですよ」

私はこの時、人生で初めて「うれしくて叫ぶ」というのと、「うれしくて飛び跳ねる」というのをやりました。

叫ぶのも飛び跳ねるのも、魂が震えるほどの喜びに勝手にでてきてしまうもののようです。

やりたいことがあったら、ちゃんと手をあげていくこと。その大切さも知りました。

「木を見て、森も見る」視野の広さ

初めての打ちあわせは、出版社を決めずにまずは一人で麹町中へ。

一介のライターに過ぎない私に2時間かけて様々なことを話してくれました。

その時感じたのは、(私なんかが語るのもおこがましいのですが)工藤校長が学校全体の改革、さらには日本の学校全体を見ながら、それと同時に学校にいる一人一人の子どもたちのことも見ているということです。

心理セラピーの手法も学んできたということで、「こういう子どもたちにはこう接する、だめならこう」というように、長年の経験から個別の対応に対して豊富な知識をお持ちでした。

たとえば、問題行動を起こす子どもたちに、自ら未来を選択させるタイムマシンクエスチョンのやり方。

子どもを学校に呼び出すのは、子どもを叱るためでも、家庭での指導をお願いするためでもない。親と学校が信頼しあっている姿を子どもに見せ、効果的にお灸をすえること。など。

目の前の子どもたちと接してきた結果が、今の改革につながっている、つまり改革は結果に過ぎないのだろうと思いました。

工藤校長は「木を見て、森も見る」、まさにそんな方です。

立派な親じゃなくていい

その後、かんき出版さんとご縁があり、編集の鎌田さんのお力添えで、見事出版が決まりました。

取材は本当に毎回楽しい時間で、工藤校長がこれまで人生をかけて積み上げてきてくれたものを惜しげもなく書籍に出してくれることに感謝しかなく

原稿を作るプレッシャーは感じつつも、「時間よ、止まれ」といつも思っていました。

工藤校長から受け取ったものはたくさんたくさんあり、そのすべてを余すことなく本書に込めることができたと思います。

初めての取材では「一番大切なことは、親子関係が幸せであることだと思う」と仰った工藤校長。

学校でも、子育てでもその根本は同じで、「勝手に理想を掲げて、勝手に不幸にならないで」。子育てをしている親御さんたちの心が軽くなるような本を作りたい、という思いがありました。

その思いが「はじめに」のなかによく表れているので、その文章を引用して終わります。

この本を手にすることで、今ある環境のなかで、親子関係を幸せに感じられるきっかけになれば、こんなにうれしいことはありません。

いじめや不登校など、親御さんが悩まれるであろうポイントについても細かく語っていただきました。

私は親としてはまだまだまだまだですが、「立派な親じゃなくていい」工藤校長の言葉を胸に進んでいこうと思っています。

はじめに(一部抜粋)

私も教師である一方で、実生活では2人の息子の父親です。長男も次男も成人し、独立して家を出ました。


学校改革をおこなった麹町中の校長、というメディアでの私のイメージから、厳格な父親であると想像されることも多いのですが、実は、家での私はまったく違います。

子どもたちに向かって厳しく真面目に何かを説いた記憶はほとんどありませんし、子どもと一緒にバカげたことをやって笑い合うような日々を過ごしました。

そして、私もみなさんと同じように、悩みながら子育てをした親の一人です。本書を制作するにあたり、自分の子育てを振り返ってみましたが、それが合っていたのか間違っていたのか、まったくわかりません。

教師として生徒たちに接するときにはプロ意識がありますから、みなさんに自信を持って語れることもありますが、一方で父親としてどうだったかと言われると、苦笑するばかりです。

ただ、私は教員生活のなかで多くの子どもたちと一緒に過ごしてきましたから、そのなかでの知見はみなさんの子育ての参考になるかもしれません。

また、長く子どもたちを見てきた経験から、時代の大きな転換点を迎えている現代において、「学校の本当の目的」と同様に、「子育ての本当の目的」を考え直さなくてはならない時期が来ていると思っているのも事実です。


本書では、みなさんとともに「子育ての本当の目的」を考えてみたいと思います。どこから読んでもいい構成にしてありますので、もくじのなかで気になるところから読み進めていただいても構いません。

なお、はじめに強くお伝えしておきたいことは、本書は子育てのハウツー本ではないということです。


ダメ父親の私が言うことですから、反面教師として読んでいただいて結構です。実践できずに「自分はだめな親だ」と落ち込んだり蔑んだりすることは、絶対にしないでいただきたいのです。子育てで一番大事なのは、親子が幸せな関係であることです。立派な親でなくてもいいのです。


「あなたを誰より大事に思っているのは、私だよ」と心のなかで思えていたら、それだけでいいとすら思います。


本書が不安を抱えて育児に奮闘するみなさんの心を、少しでも軽くするものであることを願います。

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『麹町中校長が教える子どもが生きる力をつけるために親ができること』目次


01 子どもはもともとは主体的な生き物
02 手をかけないほど、子どもは自律する
03 不幸になるなら「理想の子育て論」はいらない
04 子どもは思うようには育たない
05 どんな環境でも挑戦できる強い脳はつくれる
06 親はいい加減くらいでちょうどいい
07 親密な親子関係が幸せとは限らない
08 子どもの問題は大人が勝手につくっている
09 あえて言葉にしないほうが、うまくいくこともある
10 親が社会を否定してはいけない
11 本当の厳しさとは「信用」
12 ゆとりのない経験こそが、ゆとりの心を育てる
13 1等賞は称えない
14 なんでもかんでも叱らない
15 叱るときは「子ども基準」で考える
16 言葉や態度にしなければ、想いは伝わらない
17 子どもを変える「タイムマシン・クエスチョン」
18 差別する心は消せなくても、差別しない行動はできる
19 嘘も大切なコミュニケーションスキル
20 偽善者でいいんだ
21 ゲームに夢中なときだって、生きる道を見つけるチャンス
22 食べ物の好き嫌いがあったっていい
23 汚い言葉遣いから、「言葉がどう伝わるか」を考えさせる
24 友達が多いか少ないかは、たいした問題じゃない
25 「習いたがる子」をつくらないことが、子育ての本質
26 家庭学習の習慣は、子どもの時間を奪うだけ
27 特性に縛られすぎてはいけない
28 読み書きが苦手でも、活躍する道は必ずある
29 学べる場所は、学校だけじゃない
30 「読解力」より「伝える力」を磨こう
31 受験に失敗したときこそ淡々と過ごす
32 学校からの呼び出しは、子どもを「叱る」ためじゃない
33 約9割の子どもがいじめ加担者
34 いじめは客観的事実で解決に導く
35 本来、子どもは未熟なもの
36 遠慮なく学校、教育委員会と連絡を取ろう
37 全員が当事者になることで教育が変わる

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