見出し画像

第3話:おじさん2人がジュエリーに真剣になった結果、会社ができた。

こんにちは!

TANT inc.は
もがく中堅おじさんデザイナーのコンビです。
0→10で企画からプロダクトデザイン・グラフィックデザインまで一貫したクリエイティブワークを行っています。

自社開発商品 紙と金のジュエリー ikue(イクエ) https://ikue.work                >> ロゴ、商品企画、ビジュアルなどの、トータルブランディングから
制作・販売までを行っている。
TANT.inc  < HP: http://tant-inc.co.jp >

このnoteは、
もがき続ける中堅デザイナーコンビのもとで働く1匹のチワワ🐕が、
他称「熊本うさぎプロダクトデザイナー」(※以下、うさおさん)と
自称「まゆげ濃いめグラフィックデザイナー」(※以下、まゆげさん)という
2人のことを見た日常や、2人のつくるモノのこと、
2人のつなぐヒトたちのことをゆるく書いていきます。🐾

—————— 前回のあらすじ ——————

————————————————————————



ちわ:コンペで受賞しなかったら2人で一緒に会社を起こしていないし、このTANTのワークスタイルに至っていないということでしたが、
ikueはたくさんの物語を秘めてますね…!

うさまゆ:幾重にもね。

ちわ:では、第3話ではお2人がいよいよブランドとしてikueを動かし始めたところ、会社として立ち上げ始めたお話を聞いていきたいと思います!

うさお:工場探しとか、何に苦労したかとか、どんな失敗をしたかとか、よく聞かれるので話したいな。デザイナーが事前に知らずに苦労することの話とか。


賞の評価はどう嬉しかったか
獲った瞬間、次にどう繋げたいと思い描いたのか 

うさお:速攻商品化しようって思ったよね。
メーカーさんとその場ですごい硬い握手を交わし…「早速来週から動き出しましょう」みたいなね。

まゆげ:喜びも束の間って感じだったよな、賞を獲ることは自分たちの中で大前提の気持ちとしてあったから。賞を獲らなくても商品化にしようっていうことはずっと言ってたし。

うさお:確かに、まゆげから言われたの覚えてる。「このアイデアとこのデザインで1番獲らなかったらうさおのせいだよ」って。笑

まゆげ:そんなこと言ってないでしょ!笑

うさお:でも確実に獲れるねっていう、俺らの中で"自信と確信"があったから、そういう気持ちでプレゼンテーションに出てた。ただ、ライバルが一人いたね。


うさお:某広告代理店バリバリキャリアののクリエイターに勝てたことは純粋に嬉しかったよね。
まゆげ:そうね。

うさお:なんかあるよね、美大と大学のライバル意識みたいなの。

うさお:(話を戻すと)すごい嬉しかったのと同時に、評価されたってことは、その分責任があるし、賞金もあったから、頑張んなきゃっていう覚悟はできたかな。

賞金100万円をそのまま資本金にして、ikue(イクエ)のブランドだけをやる会社を立ち上げて、他の仕事は個人事業としてそれぞれやってこうっていうスタンスからTANTはスタートしたんだよね。

まゆげ:その時点ではアイデアとデザインの権利はデザイナーの方にあったんだけど、"契約の話を最初にした方が良い"ってアドバイスを受けて、
メーカー側がそれを責任持って買い取るって形で、"メーカーがブランドとして運営していく"っていう、アイデアやデザインに対して対価を支払うのが前提のコンペだったんだけど、実際に蓋を開けて見たら、メーカーさんに「そんなお金出せません」って言われたんだよね。

アイデアと権利

ちわ:えーっ!?おかしな話ですね。

うさお:俺らもえーっ!?ってなって、トラブルになったよね。

ちわ:そんな…「そんなお金出せません」って。泣

うさお:俺らも日頃のデザインワークと同じぐらいの、きちんと想いを込めてできるお金を見積もりで出したんだけど、譲歩した部分もあって、「最初は大変だと思うからこれぐらいであとは売れたら何%っていう契約をしましょう」みたいに提案をしたんだ。
でもやっぱりそういうメーカーさんはBtoBで大きい会社に頼まれてモノを作る感じで、お客さんに対して直販をしていないから、"在庫を持つビジネス"をわかっていないことがほとんどで、そういうビジネスには初期投資でこれだけお金がかかるんだってところには衝撃を受けたかもしれないね。

※「BtoB」…ビジネスtoビジネス/企業に対してのビジネス
 「BtoC…ビジネスtoコンシューマー(カスタマー)/一般消費者に対してのビジネス」


ちわ:賞を取ってここからという時に出鼻をくじかれたというか、ふりだしに戻ったんですね。

うさまゆ:商品化へのサポートが整っているコンペだったはずが、
"自分たちでやらなきゃいけない状況に立たされた"ってことだね。


画像1



- 賞をとったら始まりではなく、権利を自分でとる。

まゆげ:まずは「アイデアは譲渡します」ということを納得してもらうために契約書を書いてもらったね。それは弁護士さんに入ってもらって、それと同時期にikueの"意匠権"をとったんだ。

うさお:結構お金がかかって、助成金とか使っても1個20万ぐらいかかる。けれどその図面料とか、特許庁に出す書類とかを社労士とか専門の人にしかできないから、3案全部で60万近くかかった気がする。

そうすることで権利としては「こういう構造は使っちゃだめですと世の中に認知される」デザインって権利があるからそれを先に取っておかないと、真似された時に何も言えなくなっちゃうんだよね。

ちわ:それって「特許」とは違うんですか?


うさ意匠は単純に『形』とか『構造』に関する権利。その形がジュエリーじゃなくてインテリアになってもだめです、というような設定までできる。

ちわ:デザインの難しいところって、そのデザインが洗練されていればされているほど黄金比率というか、目指す先が似てると同じような形になってきませんか?

うさ:それはあるね。でも、全体の形の意匠も取ってるけど”部分意匠”というのも取っていて、その部分の多少の比率とかが変わっても応用されるっていう意匠を取ってる。

意匠と部分意匠

会社の時はほとんどのデザインに意匠権を取ってたんだけど、個人になったらほとんど取ってないし、取る人あまりいないよね。
でもTANTの財産としては大きいというか、万が一「ikue」というものを売却する際に、”意匠を売る”という形になると社会的に公的に認められた形・財産だから、それを価値になったりするよね。意匠って、海外のデザイナーは取ってる人がほとんどだけど、国内のデザイナーはそこに弱いところがあるんだと思う。
ヨーロッパとかでは資源がない代わりにアイデアをお金に変えたりとかきちんとしてる気がするよ。

かかったお金



画像2


どうして会社化する必要があったのか。-


まゆげ:一番は社会的信頼感っていうところじゃないかな。

うさ:覚悟の現れですよね。
さっきの意匠の話だと、意匠は個人名でしか取れないけど、会社名で取ればふたりじゃん、っていう。
助成金とかも、会社で申請するのと個人で申請するのとではだいぶ違うんですよね。

一人より会社っていうのが日本では強いかな。

あとは業者に問い合わせる際に、「デザイナーの〇〇です」って電話するのと「株式会社TANTの〇〇です」って話すのとでは扱われ方が全然違うのを俺は身に染みて感じたよ。会社化するとそこのフットワークの軽さと時間の削減ができるっていう利点があるね。



会社になって出発。工場を探す
- 天金加工ができる製本業者探し -

まゆげ:天金ができる製本業者って、日本に数社しかなくて、手当たり次第に探したんだ。

うさ:そう、初めは単純にネットで検索して、名刺のフチに金つけしているのを取り扱ってる業者を手当たり次第に当たったんだけど、
天金やってるところが少なすぎて、結局行き着く先は一緒だったんだよね。業者によっては生産体制がフレキシブルに動けないところだったりもしたし、色んな業者に連絡しても「難しい」っていうばっかりで、製本屋さんで自社でオリジナルの製品を作ってくれるところはなかなかなかった。

そんな時に大学の先輩で製本会社で働いてる人がいて、いよいよお手上げ状態っていうとこまできた時に、その製本会社に行ったんだよね。そしたら「うちではできないですけど、篠原紙工さんだったらできるんじゃないか」と紹介されたんだよね。


有限会社篠原紙工https://www.s-shiko.co.jp


- 製本会社探しでも助けられた "美大の繋がり" -


うさ:最初はお互いのリスクも考えてやりましょうってことで、開発投資や初期費用を(個人ではそこまでの体力がないから)半分半分にしたい、そして利益折半でやりましょうってお願いした。
そんな話でも初めは篠原施工さんもうちではできないって話だったんだけど、社員の女性で多摩美出身の方がいて、その方も発想的には本を作ってるだけの方ではなく、ikueに共感してくれて、社内の人が一人手を挙げてくれたから社長さんも話をもっと聞いてみましょうってなってくれて、

ちわ:ikueやお二人のヒストリーには要所要所で”美大の繋がり”が必ず出てきて、次のステップに進んでいくきっかけになっているんですね。それはikueがアートの要素を含んでいるからなのか、それともお二人が美大出身だからなのでしょうか?

うさ:美大が俺らのルーツだからなのと、ikueに売れる売れない以外の未知の可能性を感じてくれたんだと思う。

篠原施工の篠原社長は新しい発想にも柔軟な方で、"紙の触感を持った電子書籍"を作ってたりとかミュージシャンのCDジャケット作ってたりだとか。そういう会社だからこそ手を貸してくださったっていうのは大きいと思う。


ちわ:美大の横の繋がりの広さやクリエイティブ業界で活躍するご友人たちのお話も今後伺ってみたいですし、お二人が工場で見た紙の可能性の話も今後掘り下げたいですね。
さて、いよいよ工場が決まって、次は製品化の試作ですね?!

まゆげ:「フランスに向けての試作」、かな?

ちわ:フランスっていうのは、どこからきっかけが生まれたんですか?

うさ:それは俺らのミーハー心っていうのもあるし、まゆげが「本当はフランスに行きたかった」っていうご縁があるから。

まゆげ:それはコンプレックス。笑

うさ:海外の展示会に出したいっていうのがあったから、メゾンオブジェパリがそのきっかけになった。

ちわ:次回は試作の前に、海外の展示会に出してみたエピソード、ですね!


次回「第4話:デザインおじさん2人で行く、フランスの展示会
〜メゾン・
オブ・ジェ・パリの旅〜」です。お楽しみに!!

#デザイン #デザイナー #デザイン事務所 #クリエイティブ #眉毛 #熊本 #ウサギ #インタビュー



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?