第2話「素材を味方につけた、−アイデアが生まれた瞬間−」
こんにちは!
TANT inc.は
もがく中堅おじさんデザイナーのコンビです。
0→10で企画からプロダクトデザイン・グラフィックデザインまで一貫したクリエイティブワークを行っています。
自社開発商品 紙と金のジュエリー ikue(イクエ) https://ikue.work >> ロゴ、商品企画、ビジュアルなどの、トータルブランディングから
制作・販売までを行っている。
TANT.inc < HP: http://tant-inc.co.jp >
このnoteは、
もがき続ける中堅デザイナーコンビのもとで働く1匹のチワワ🐕が、
他称「熊本うさぎプロダクトデザイナー」(※以下、うさおさん)と
自称「まゆげ濃いめグラフィックデザイナー」(※以下、まゆげさん)という
2人のことを見た日常や、2人のつくるモノのこと、
2人のつなぐヒトたちのことをゆるく書いていきます。🐾
—————— 前回のあらすじ ——————
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ikue(イクエ) はじまりのアイデアが生まれるまで
〜ビジネス提案としての題材の決め方〜
ちわ:”素材”という話が出てきたんですが、ikue(イクエ)の「紙とジュエリー」はとても意外な組み合わせですよね。紙という素材にお客様の感動がある印象なんですけど、紙でジュエリーしようっていう考えに至るまでの時間は結構かかったんですか?
うさお:・・・めちゃくちゃ短かった正直。
ちわ:!!!え!!!そうなんですか?!笑
2016年度東京ビジネスデザインアワード アーガイブ
https://www.tokyo-design.ne.jp/archive/2016/
<二人の選んだ題材:聖書を劣化から守る三方金・三方銀付加工>
うさお:3週間前にこのコンペの話がきて、
「この中のメーカーさんからどこかを選んで(デザインを用いたビジネスの)アイデアを出しなさい」っていう内容で。
題材はいくつか選べたのね、製本会社だったり、6社ぐらいメーカーさんがいたんだけど、
コンペの提出まであと1週間みたいな時にジュエリーを作るって決まってそこからは本当に1週間ぐらいしかなかったな。
まゆげ:そうだね。三軒茶屋で打ち合わせしたの覚えてるわ。
うさお:で、僕は一番惹かれた製本会社しか見学に行けなかったの。そこは聖書を作ってる会社だったんだけど、
そこでどんなことをしているのか想像できなかったから、どういうところなんだろうって。
ちわ:確かに、聖書というと神秘的というか、専門的で気軽には近寄りがたいところがありますよね。
うさお:あとは、他の参加者が選びそうにないなって思ったんだよね。
コンペの題材の中でも、他の会社は身近に存在する樹脂や木材や金属やテクノロジーよりの技術の会社でわかりやすいところだったから。
ちわ:ザ・トラディショナル(伝統的)ですもんね。あまり大衆向けではなさそうですし。
うさお:そうそう、聖書は出来上がっちゃってるから、そこから何を作るのって話になりがちでアイデアは出にくいだろうなと思って。
でも「本」とか「紙」って立体と平面の両側面を持つものじゃん?本とか紙とかを(グラフィックデザイナーの)まゆげとやるならまさに"立体"と"平面"で、コラボレーションとしてはベストだ!ってなったんだよね。
でもその時はまだ具体的じゃなくて、その技術を「家具にしよう」とか考えてた。積層させたりして。
ちわ:最初は "大きく" しようとしてたんですね・・!?
うさお・まゆげ:まさにそう。
ちわ:そこでも、お二人のクリエイティブの役割分担の0〜10の可能性が感じられて、改めて製本会社に決めたっていうことですね。
あえて難しい題材を選択したように感じるんですが、デザイナーとは、やはり難しい選択をするものなんでしょうか?
うさお:戦略にもよるよね。コンペに勝つってことを考えると、ライバルが少なそうなとか、プレゼンテーションが上手だとか、造形力に長けているとかで、それぞれにあったテーマを選ぶんだと思う。デザイナーの質によると思う。
あとは「ビジネス提案」のコンペだってところが重要で、
”自分はモノが作れます”ってなった時に、
どこで売る〜どういうふうな売り方をする、というところまでが提案だったのね。
(( 口数が少ないですが、この間にもまゆげさんはうなづいています ))
うさお:ブランディングとか世界観の作りとかは、まゆげに任せることができるじゃん。これまでの仕事上。だからこそ一週間でできたんだと思う。普通できないよね、一週間でって。
まゆげ:他のコンペ参加者の人たちは大抵一人で、ものづくり専門の人だから
本番の会場では、グラフィックの見せ方も重要だったし(2人の力を合わせたものだと)しっかりとブランドを伝えれた部分はあったかもしれない。
うさお:そうだね、審査員から見ても、「ここに頼めばこうやってやってくれるかも」みたいな先のビジョンまで見えやすかったと思う。
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製本技術×「ジュエリー」になったきっかけ
〜 はじめは大きいものを作ろうとしていた 〜
うさお:本や紙に付加価値をつけるってことで、まずシンプルにサイズの固定概念を崩すために、でっかいもの作ろうとしてたけど、刻んでいったら、ちっちゃくて綺麗だから、
ジュエリーにしようってなった。笑
ちわ:ちっちゃくて綺麗・・!笑
まゆげ:ジュエリーにしようって言ったのはうさおだよ。
うさお:何もない中からじゃなくて、手を動かしながら、
「お、うお?!!これどう!!??」みたいに作りながら決まったんだよね。
ちわ:すごいアナログなんですね。
うさお:でもものづくりのデザイナーって、根源はDIYは道具を作ることが好きだったりするから
かっこつけると「発明」みたいなもので、
今までの記憶の中でやってることっていうことは、新しいものはできないけど、
「手を動かして作る」って、今までできていない偶然があるから新しいものができやすいんだよね。
でも、グラフィックも同じこと言えるよね??イラレ(デザインソフト)とか動かしてて偶然があったりとか。
間違った操作がかっこよくなっちゃったりとか。
まゆげ:うん。偶発性を狙ったトライアルも実際自分でやってたこともあるしね。
<また別にピックアップします!お楽しみに…>
ちわ:偶然の産物と言いますか、発明という・・・
うさお:うん。発明っていうとかっこよすぎるけど。かっこつけすぎて大げさにゆうとってちゃんと書いておいて。笑
ちわ:はい。笑
〜 手を動かし続けて、素材が味方についた 〜
ちわ:でも何か、「素材が味方についた」みたいなことなんですかね。
うさお:そうだね、素材が歩み寄って来てくれたというか、いつもではないけど諦めなければこういうことあるよね、クリエイティブの中でも。
まゆげ:最初はやっぱりずっと積層系で考えてたから、それである時うさおが小さくしてって「綺麗だよね」って。キラッと。
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〜手作業の驚きの話(コルクワインキャリー)〜
うさお:素材が味方についた話をすると、
今、コルクの素材でワインキャリーを作ってるんだけど、折りたたんで収納・持ち運びに悩んでいたんだけど、
別の目的で開けた穴にボタンがちょうど重なって、「これは・・!コンパクト!!!」って。
<< TOKYO CORK PROJECT >>
https://tokyocorkproject.jp
ちわ:なるほどー!世の中には「これよく考えられてるな〜」っていう商品がありますけど、そういうのも
手を動かして生まれたりしてるんですかね?
うさぎ:うん、あるある。だから”試作”ってすごい大事!
そこからまたブラッシュアップにブラッシュアップを重ねて行ったり。
でも最近はそれを結構ないがしろにして、頭だけでデザインしていることが増えているから、自分も反省。
ちわ:それでもこのikue(イクエ)に関しては試作に試作を重ねたんですよね?
うさぎ:1週間っていう時間のなかで仕事が終わった後に睡眠を削って、試作を重ねた。
まゆげ:一つ前に借りてたオフィスに紙の断裁機とかが置いてあって、
そういう環境だったからこそたくさん試作ができたんだよね。
うさぎ:積層も全部自分たちでスプレーのりで色んな紙を60枚ぐらいバーっと合わせて切って、まだ、これを作ろうっていう目的もなく、「とりあえずかっこいい素敵なブロックができました。これで何を作りましょう?」みたいなのが試作の始まりだった。
自らお金をかけて、昼は自分の仕事をやりつつ、夜に試作。だから一人だとモチベーションが続かなかったよね。
まゆげ:材料費とかで2,30万ぐらいかかったよな。予算の面でも2人でできたことは良かった。
ちわ:初期のikue(イクエ)って、今とはまた全然違うんですよね?
うさまゆ:コンペの資料はまだ実物作れないから合成とかしてたね。それが2016年の秋のことで。
それから2018年のMAISON&OBJET(パリ)に初出展して、
同年7,8月のInterior Lifestyle(日本)で販売開始した流れかな。
→2018年のMAISON&OBJET(パリ)に初出展
ちわ:もう5年近い歴史があるんですね。
うさまゆ:ぎゃーー!!?(もうそんなに経つ?!)
ちわ:コンペの審査員さん達からはどういう評価だったんですか?
まゆげ:プレゼンしたのはうさお!
うさお:プレゼンが緊張したから、当時事務所があった自由が丘の人たちを呼んで応援しに来てもらった。
だから家族がいるみたいにホッとできたし。強めの酒は飲んで行ったけど。笑
日頃の仕事より緊張したよ。プレゼンは全部俺だったからミスしたら申し訳ないなとか、
この何ヶ月やってことがポシャったら…って思ったり。
でもあのプレゼンの時、まゆげのプロフィール写真出したら最初にウケたんだよね。笑
<<実際の写真>>
まゆげ:うん。笑 俺のキメキメの写真。
うさお:そこでみんな笑ってくれてすごくやりやすくなった。
ちわ:デザイナーにもユーモアって大事ですね。笑 色んなエピソードがあるんですね。
まゆげ:開始1時間ぐらい前に「やべえジャケットない!」っつって買いに行ったのも、いい思い出ね。
ちわ:このコンペは、どれほど権威のある賞なんですか?
うさお:確率的には当時1/300だったかな。
まゆげ:最優秀賞っていうとね。
ちわ:とんでもないすごい賞ってことですね…!失礼しました、勉強します…!
うさお:社会人になって仕事しながらコンペって、若い頃はやりたいと思っても結局出せてなかったんだよね、
コンペの為にゼロからアイデアを生み出すって、大変だから。
学生時代の頃はやってたけど。
ちわ:その、美大学生の頃のコンペや作品作り、二人の出会いのヒストリーはまた別の記事で紹介したいですね。
ちわ:このコンペでは
一人だと実現しにくいことが、二人で力を合わせることによって、
まさに平面から立体に組み上がっていくみたいに、実現可能になったってことでしょうか?
うさまゆ:それはかなり大きかった。
ちわ:苦しみは分け合って、喜びは2倍、まさに二人三脚ですね。
この2人で作っていたところから、またたくさんの人が関わってくる話、楽しみにしています!
今回もikue(イクエ)誕生秘話をたくさん聴かせていただきました。
次回は、いよいよ、製品化が決まってからの工場探しや、2人がTANTを会社化したお話を伺って行きます!
次回「第3話:おじさん2人がジュエリーに真剣になった結果、会社ができた」
お楽しみに!!
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