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男の隠れ家に憧れる

短編集『家日和』のレビューを
投稿しました。

奥田英朗の作品は以前から好きで、
他の作品でも
似たようなことはありましたが、

読み終わって数日経っても、
余韻がまだ残っています。

『家日和』の中でも
特にお気に入りの一篇に、
うちにおいでよ」があります。

妻と別居をした30代の男性を
主人公にした物語です。

彼の妻はインテリア関連の
仕事をしており、
結婚して以降は、部屋のインテリアなどは
すべて妻が取り仕切っていたんですね。

それが別居をすることになって、
妻がほとんどの家具を
持って行ってしまい、
部屋はガランとしてしまいます。

そこで主人公は、一から部屋を
構築していくことになるんですが、
最初はよくわからないので、
適当にやっていくのです。

しかし、ある時、
部屋の奥、あるいは実家から
自分の好きな本やレコードを
取り出してきて、

それを部屋に並べはじめます。

そうすると、見違えるように、
部屋は「理想の自分の部屋」へと
生まれ変わっていくことになるのです。

主人公はそれまで仕事が終わると、
よく同僚と飲みに行ったり、
麻雀に付き合っていたんですが、

自分の部屋が大好きになり、
同僚の付き合いも断るように
変化していきます。

そのことをいぶかしく思った
同僚が主人公に問い詰めると、

「妻と別居中」であること、
今は「自分の部屋が楽しくて
しかたがない」ことを
聴かされました。

そして、仲のいい同僚は
主人公の家に
遊びに行くようになります。

それが、二人になり、
三人になったところで、

何やら主人公の部屋は
学生時代の放課後の様相を呈し、

仕事終わりに、週2、3回は
主人公の家に遊びに行くように
なるんですよね。

この当たりの描写が
ものすごくおもしろい
小説なんですよね。

同僚たちは主人公と同年代で、
主人公と同じように
所帯を構えている者ばかりでした。

彼らは妻と暮らしていた頃の
主人公と同じように、

我が家では自分の趣味を押し込めて、
奥さんや子どものことを
優先した暮らしをしています。

だからこそ、同僚たちは
主人公をうらやましがり、
そこに群れるようになったのです。

そこには自分たちが
好きなレコードや CD があり、
映画だって見放題です。

(しかも、どれも主人公が買い揃えた
 高級な AV機器で
 楽しめる環境が整っている)

この辺りの描写には、
共感しかなくて、
思わず私も同じ部屋にいるような
気分になってしまいましたね。

そして、私はこの小説を読んで、
この主人公と同じように
自分の生活をエンジョイして
いらっしゃる方を思い出しました。

この note で仲良くしてくださっている
栗英田テツヲさんです。

テツヲさんは現在、単身赴任中で、
一から自分の部屋を構築した方です。

その部屋や生活の充実ぶりが
とてもうらやましく
感じたりするんですよね。

この短編「家においでよ」を
おもしろいと思った方は、
ぜひ、テツヲさんの記事も
読んでみてください。

似たような魅力のある
記事なんです。

※ちなみに、この小説のことで
 書きたいことがまだあるのですが、
 長くなるので次の記事に改めます。

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