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音楽レビュー『Freedom Exercise』Josh Johnson(2020)「セッション」というよりは多重録音による「編集」


出会いは Spotify からのオススメ

ジョシュ・ジョンソンは、
アメリカのジャズミュージシャンで、
アルトサックス、キーボード奏者です。

Spotify でオススメされて
はじめて知ったアーティストでしたが、

経歴を見ると、
私の好きなジャズアンビエント系の
アーティストと共演していました。

何気に Spotify のオススメは
よくできていますね。

私の好みをよくわかっている感じがします。

「セッション」というよりは
多重録音による「編集」

本盤はジョシュ・ジョンソンの
ソロデビューアルバムで、

彼の本領ともいえる
アルトサックス、
シンセサイザーの音色の魅力が
たっぷり味わえる内容です。

ジャズというと、
長尺のジャムセッションが
連想されますが、

本盤は全10曲、収録時間が36分、
ジャズにしては1曲が短めで、
かなり聴きやすいアルバムです。

スタジオでのセッション
というよりは、録音した音源を
徹底的にスタジオで編集したような
聴きごたえで、

この辺も王道のジャズとは
異なっています。

「セッション」よりも「編集」
という意味ではまったく同じ
ではないですが、

マイルス・デイヴィスの
『On The Corner』('72)を
彷彿させる部分もあります。

『On The Corner』Miles Davis('72)

『On The Corner』
ファンク色が強い
'70年代マイルスによる名盤。
ハービー・ハンコック、
チック・コリア、
ジョン・マクラフリンなどが参加。

王道のジャズとは異なる、
古い音楽の要素も
感じるところがありました。

例えば、はじめてこのアルバムを
聴いた時、私は若い頃に聴いた
ソフト・マシーンという
バンドのサウンドを思い出しました。

『Third』Soft Machine('70)

ソフト・マシーンは、
'60~'70年代に活躍した
プログレのバンドですが、

メンバーにサックス奏者が
いることからもわかるように
ジャズの要素が強く、
「ジャズロック」とも言われました。

そういうプログレっぽい音が
本盤には詰まっているんですね。

また、シンセもかなり入っていて、
テクノっぽい楽曲もいくつか
収録されています。

温かいサックスの音色が光る
『Simple Song』

全体的にメロウ(※)な楽曲が
多いのが本盤の大きな特徴です。

(※メロウ:テンポが緩く、
 柔らかい心地よさのある音楽を
 指す場合が多い)

そんな中で特に魅力的なのは、
⑨『Simple Song』ですね。

温かい音色のサックスが魅力的で、
このアルバムの中では、
一番聴きやすい楽曲だと思います。

また、サックスの音色を
重ねている楽曲もいくつかあるんですが、
(③、⑤)

これも複数の奏者が
同時に演奏したのではなく、

ジョシュ・ジョンソン自身が
異なる音階で演奏したものを
編集で重ねたものと思われます。

細かいことなので、
あまり聴き慣れない方には
気づかれないかもしれませんが、

こういう細かい部分の
作り方の違いで、
味わいが変わってくるんですよね。

フリージャズやプログレのような
ハードな音も中にはありますが、
さりげない楽曲も多いので、

日常生活のあらゆるシーンで流しても
邪魔にならず、
それとなく気分を持ち上げてくれる
BGM としても最適だと思います。


【作品情報】
リリース:2020年
アーティスト:ジョシュ・ジョンソン
レーベル:Northern Spy Records

【アーティストについて】
アメリカのジャズミュージシャン
(アルトサックス、キーボード奏者)
'20年、本盤でソロデビュー。

【同じアーティストの作品】

『SWEET STUFF』(2017)
※ダニエル・ロテムとのデュオ
『Unusual Object』(2024)
『Small Medium Large』(2024)
※アンナ・バタース、ジェレマイア・チュウ、
ブッカー・スタードラム、
グレゴリー・ユールマンとのクインテット

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