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書籍レビュー『BOOKMARK 翻訳者による海外文学ブックガイド』金原瑞人、三辺律子・編(2019)旬の海外作品をお届け


海外の小説は難しい

最近、小説のレビューが書けていません。

最後に書いたのは、2月、
池波正太郎の『剣客商売』ですね。

それ以降も小説を
読んでいないわけではないんです。

必ず、何かしらの本は
読んでいるのですが、

私としては、
ちゃんと感想を伝えられる作品、

特にオススメしたい
作品のことを書きたいので、

なかなか難しいんですね。

小説のレビューも
心掛けていることがありまして、

なるべく、日本の作品を紹介したあとは、
海外の作品を紹介したい、
と思って作品を選んでいます。
(映画や音楽のレビューも同じ)

そうすると、次に紹介するのは、
海外の小説ということになるんですが、

昨年くらいから、
私が選ぶ海外の小説は、
ことごとく内容が難しく、

正直なところ、
意味がわからない作品が多いんです。

それは、もちろん、
私の読解力が低いせいでも
あるんでしょうが、

結構、有名な作品でも
読んでいて内容が頭に
入ってこないことがあります。

それでも、買ったからには、
最後まで読みます。

頑張って読みます。

でも、しっかりとした
感想を書けるほど、
内容を理解していないので、

レビューは書かずに、
また次の本を読む
というサイクルが続いているんですね。

(そんなサイクルが続いて、
 早5か月(^^;)

これは流石にまずいと思い、

「おもしろい海外の小説を
 紹介している本はないか」
と探していた時に、
見つけたのが本書だったんです。

翻訳者から見た作品

本書はもともと
フリーペーパーとして
発行されていた冊子を
1冊にまとめたものです。

内容は海外小説のブックガイドで、
各作品の翻訳者が
自身で翻訳された作品の
レビューを書いています。

ブックガイドは数あれど、
翻訳者に焦点を当てた本
というのは、きわめて珍しいですね。

翻訳したご本人が書いているので、
説得力がありますし、

どういうところに苦労したとか、
そういう話が聴けるのも
本書のおもしろいところです。

自身が時間をかけて翻訳された
作品のことですから、
作者の気持ちを代弁するような
熱のこもったレビューも多く、

読んでいる側にも
その熱が伝わってくるような
感覚があります。

旬の海外作品を知るのにも最適

本書にはフリーペーパー
として発行された
『BOOKMARK』の
1~12号の内容が収められています。

各号ごとに、テーマを決めて、
複数のレビュアーが
十数冊の本を紹介する
というスタイルです。

そのテーマの提示のされ方も
おもしろいんですよね。

例えば、創刊号は、
「これがお勧め、いま最強の17冊」
と題して、旬の作家さんを
取り上げています。

この他にも
「映画化した作品」
「ファンタジー」
「英語圏以外の作品」
「歴史」「SF」
「ホラー&ミステリー」
などなど、魅力的な特集が
たくさんありました。

各号の巻頭に、
翻訳者のエッセイが挟まれ、

本編の方は1ページに
一つのレビューというスタイルで、

レイアウトも非常に読みやすい作りです。

表紙にあるようなタッチのイラストも
各章の間に挿絵として入っており、
このイラストも印象的でした。

(イラストは、オザワミカ
 というイラストレーターによるもの)

何げないイラストではありますが、
合間にホッと一息つけるような
なんとも愛おしいページですね。

海外文学というと、
どちらかと言えば、
古典が注目されがちで、

その手のブックガイドは
多い印象があります。

ですが、正直なところ、
日本のものにしろ、
海外のものにしろ、

古典というのは、
意外と初心者には
ハードルが高いんですよね。

中には、古典でも
読みやすい作品はありますが、
それはごく一部の作品だと思います。

特に私自身が、
海外の新しい小説を
ほとんど知らないので、

こういう本はすごく助かります。

もちろん、ここで紹介されている本も
実際に手に取って読んでみないことには、
自分に合うかどうかはわかりません。

ですが、少なくとも、私にとっては、
「読んだことのない読みたい本がある」
というのが、
ものすごく大事なことです。

なぜならば、今読んでいる本が
「難しい」と感じても、
また違う作品を
手に取ることができるからです。

なんせ、本書では204冊もの作品が
紹介されていますから、

この中に1冊くらいは、
私に合う作品もあるでしょう。

これから気になった作品を
読むのが楽しみです。


【作品情報】
発行年:2019年
編者:金原瑞人、三辺律子
出版社:CCCメディアハウス

【編者について】
金原瑞人
’54年、岡山県生まれ。
法政大学教授、翻訳家。
’80年代から新聞、書籍、雑誌で、
書評を執筆。
手掛けた翻訳書は550冊以上。

三辺律子
東京都生まれ。翻訳家。
おもな訳書
『龍のすむ家』『エヴリデイ』
『オリシャ戦記 血と骨の子』

【編者が手掛けた訳書】

【本書の中で紹介されている訳書】


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