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男はすべてマザコン。でも女はそうではないかもしれない。

ずっと引っかかっていることがある。

息子は母親に、特別な感情を持つ。
娘は父親に、特別な感情を持つ。

疑問だ。
そんなこと言ってるのは、男性心理学者ばかりではないか。
生物学的には、どうなんだろうか。

女子は、思春期に父親の匂いが苦手になる。もちろん、それでもずっと父親が好きで、「お父さんみたいな人と結婚したい」と言い続けている女子もいるけれど、どう考えても、息子から母親への感情より、娘から父親への感情のほうが「疑似恋愛的」である確率が低い気がしてならない。

私は小さいころから冷静に「お父さんて、かっこよくないな」と思っていた。見た目もかっこよくないし、性格も好きじゃない。すぐイライラする。学歴自慢ばかりで、人の文句ばかり。器が小さい。人としての魅力を感じない。話の前置きが長い。

異性として、父を素敵だと思ったことがない。

父は色が白い。私は、地黒の人が好きだ(夫も地黒だ)。
父はタレ目だ。私は、ツリ目の男に惹かれる。
父はくせ毛だ。私は、直毛の男に惹かれる。

頭が良くて、スポーツができて、理系男子。というところだけが、自分の好みと共通しているが、それでも、性格などは、残念ながら子どもから見ても「大人気ない」ことだらけで、父のような男性がいいななんて思ったことはもちろん、「お父さんと結婚する!」なんて、一度も頭に思い浮かんだことすらない。ドラマでしか聞いたことがないセリフだ。

だから、マザコンな男性のことはもちろん、父親大好きな女性のことも理解も共感もできないのだ。これはいたしかたないところで、わからないものはわからないのだ。

父は露骨に女の子らしい姉が好きだったし、父が「女の子らしい女の子」が好きなのは知っていた。私は女の子らしい女の子ではなくて、女の子らしい女の子になりたいとも思っていなかった。

私は「父と仲良くなりたい」「愛されたい」とは思ったが、それは「人として」ということである。自身がかなりトランスジェンダーな少年少女だったので、「仲間に入れてほしい」に近い。

この「愛されたい」も、「わかってほしい」「優しくされたい」という感じであり、「ハグされたい」「かわいがられたい」とは思ったことがない。一度もハグされたことがないけれど、そういうことに対して欲求がなかった。欲求がないので、不満もなかった。よその父親を見て「いいなぁ」と思ったこともない。「○○ちゃんのパパみたいなパパがよかった」とか言う子がいたけれど、それすら思わない。なんだろうな。やはり「女性性」の開花が遅かったからだろうか。

もしかしたら、母親がボスタイプで仕切る人だったので、父性を父ではなく母に見ていたのかもしれない。母が「理想の家族」であるべく仕切れば仕切るほどに、子どもの目には「コントロールしているのは母である」ということが顕著に見えてしまうものだ。

私は、父といっしょに釣りをしたり、日曜大工をしたりするのが楽しかった。HSPなので、父が「別に本当は子どもとしたいわけじゃない」という気持ちを押し殺しているのが、わかる。傷つく。それでもそばにいようとした(書いていて涙が出てきた)。父から好かれていないからこそ、好かれようとしていた。私だけが体罰を受けていたから、私なりに必死で努力した。

私なりに、父を愛していたと思う。
それなりに好きだったし、好かれたかった。

だけど、いつどう見ても、なぜか私は父親に「男性」を意識することができなかった。魅力もわからなかった。

目も鼻も口も、父に似ているのは客観的に見てわかる。
でも「お父さんと似てるね」と言われるのが嫌いだった。
私は昔も今も「美しい男」が好きで、父は美しくなかった。

書いていて今度は、我ながら吹き出しそうになった。父への感情は非常に複雑なものだけれど、大人になってからは「美人になったなぁ」とよく目を細めていたので、過去のことは水に流せないけれど、父を許してもいたと思う。

そして、父はもうこの世にいない。
母もいない。

亡くなってもなお、私は父のなかに「男としての魅力」を見つけられない。一生かけて見つけられなかったのだから、おそらくもう見つかることもないだろう(汗)。

小さいころから「意思の疎通」が難しい人だったし、母の前では良い人ぶってるけれど、親子二人で出かけたときにだけ、たまに車を運転していて暴言を吐いたりするのも嫌いだった。しかも相手に直接言わず、車がすれ違ってから暴言を吐く。そのエネルギーを受け取るのは私だけだ。小学生の私はげんなりしていた。

だいたい、父が「服用意してくれるか」「お風呂入れてくれるか」「お茶入れてくれるか」と伝えて、母が「はい」と、いそいそと動く夫婦関係を見ていて、「絶対にこんな夫婦にはなりたくない!」と小学校低学年の時から思っていた。夫唱婦随に見せかけて、影で仕切っているのは母であることなんて、子どもにもわかる。茶番を見せられているようで「ヘンなの」と思っていた。夫唱婦随よりも、対等であることを私は男女関係に求めた。そして、いまは夫婦でいつも手を繋いで歩いている。

先日、心理学実験3のスクーリングのレポートを提出し終えた。半年後、一応、大学卒業と認定心理士だ。私はそこからいくつか、さらに心理学で学びたいことがある。

そのひとつが「異性の親に対する愛情」についてだ。

これだけ丁寧に内省してきて、どうしても発見できなかった、父への疑似恋愛感情……。生物学的にはどうなのか。女性心理学者はどう思っているのか。一辺倒の男性視点での心理学のジョーシキを覆せるような研究をしてみたい。

ちなみに「女性性をまだ解放していない」のではないかと心配してくれる人がいるが、かなりモテたのでそれはない。私は普通に男性が好きだし、心から相手を好きになったことも、人生において夫を含めて三度はある。男性にはたくさん優しくしてもらってきたし、いまも男性に優しくしてもらっている。だから、男性全般への恨みもない。

ただただ、「異性の親への疑似恋愛感情」について、理解ができないだけなのだ。


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