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食べものの話

    好きな食べものには二種類あって。舌で好きなものと、頭で好きなもの。まあ、舌で感じた味覚のデータを脳に送りこんで味をおぼえるわけだから、厳密にいえばどちらも同じようなものかもしれないけど。私にとって前者にあたるのは坦々麺やチョコレートパフェなど、後者はレモンケーキや珈琲ゼリーやエディブルフラワーが該当します。モンブランがちょうど中間くらい。

    なにが違うの?と思うでしょうか。いちばんの違いは、食べたあとの罪悪感にあります。舌で好きなものは食べたあと、「ああなんて幸せ」と思うと同時に、「食べてしまった」という気持ちにもなる。でも、頭で好きなものは「食べてよかった」と幸福感のみが残る。きっと、単純に味が好きなものと、それを食べている状況が好きなものとの違いです。

    たとえば私はレモン味(甘いやつ)の食べものを食べたとき、宇宙を思い出す癖があります。なんの因果かはわからないけど、あのすーっとした心地よさを味わうと、私が密かに宇宙に対してもっている、静かで澄んでいてつめたい空間、というイメージが頭に浮かぶのです。珈琲ゼリーはものによっては苦くて眉をひそめてしまいますが、もちもちしていて時々甘くて、すべてを好きにはなれない感じが恋みたいで好き、ロマンチストなので。エディブルフラワーはほとんど味がしないけど、香りがいいのとお花が私のからだの一部になってくれたらうれしいという理由でたまに食べたくなっちゃう。

    とまあこんな感じで、私の美しいもの好きは味覚にまで影響しています。味以外でも食べものを好きになれるようになって、人生ちょっと豊かになりました。レモン味なんて、小さい頃は絶対に食べたくなかったもの、他のフルーツはなんだって大好きなのに。頭で好きなものにだってカロリーはあるのだから、気をつけなきゃいけないよ、珈琲ゼリーを食べて満足している私に戒めです。

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