ギターがうまくなりたい人へ[エレキギター上達と機材の関係]

※本文を読む初心者の人へ

以下の内容は、すでにある程度エレキギターが弾けるようになってそれでもなお、
「良い音を出す人と同じ(似た)ギター・セッティングのはずなのに自分が弾くと良く聞こえない」とか「完コピしたつもりなのになぜか上手く聞こえない」
などといった人に向けての内容です。
高級な機材の話がたくさん出てきますが、それらがないと上達しないという話では全くありません。
そして音楽には正解はありません。本文の内容を読んで、それが自分には必要ないと思った時には、ためらわず無視してください。

ギターは非常に難しい楽器です。各種奏法、速弾きやリズムキープなど習熟すべき基礎的なテクニックがたくさんあります。作曲や体系的なプレーをしたければ西洋音楽理論といった座学はおおいに助けになるでしょう。
しかし、技術的(あるいは理論において技巧的)に上達することと、人を感動させるような良い音を出すことは別問題です。

ギターを弾いている(またはこれから弾きたいと思っている)ということはささやかでも何か動機と目標があるはずです。「音を楽しむ」とか「自分のプレーで人を感動させる」とか、あるいは「ただ上手くなりたい」でもいいでしょう。
その目的を考えればおのずと自分に何が必要かわかると思うのです。
以下の内容がその助けになれば幸いです。

・はじめに

エレキギターの音とは何だろうか?
エレキギターは(特別な意図がなければ)アンプにつながれる。音を増幅するためである。

いまアンプにつながれたギターの弦をはじいたとしよう。弦はピックアップが作り出す磁場の中で振動し電子の振動である電流を生み出す。
生み出された微小な電流は、アンプにて増幅され、最終的にはスピーカーを振るわせることで耳に届く。
このことから、ギターが違えば、アンプが違えば、スピーカーが違えば音が変わるということは想像に難くない。

では「弦のはじきかた」についてはどうだろう。
強くはじけば音は大きく、弱くはじけば音は小さくなる、ということは直観的だ。
しかし、仮に弱くはじいた音を完全に同じ音のまま増幅できたとして、その増幅された音は強くはじいた音とまったく同じだろうか?
その答えはNoである。理屈的なことは脇においておくことにして(もちろん個別に考えればきちんとした説明ができるのだが)、実際、エレキギターの弦を思いきり指でパチンとはじいた音と、プラスチックのピックでなでるように弾いた音は異なるのである。

'(中略)これは極端に言ってしまえば、音量の大きい小さいよりも、強い弱いというエネルギー感の方が音楽的な抑揚表現において重要だということです。クラッシュ・シンバルを強く叩いた音は、どんなにボリュームを絞っても「強い音」ですし、反対にスティックのチップ(先端)で弱く叩いた音は、ボリュームを上げても「弱い音」のままで「強い音」にはなりません。ギター・サウンドの世界では「音の3要素」どころか、本当に様々な要素が絡み合って成り立っていて、その変化が“気持ち良い音” として音楽的な表現の重要な部分となっているのです。'
(BOSS公式HP、「MDP DEEP DIVE MDP技術の可能性」、2020/9/26確認)

さらに複雑で面白いことに、先の音を増幅する例で”仮に”としたように、アンプが増幅する音は、増幅する前の音と相似ではない。「歪んだエレキギターの音」というのはその良い例だろう。
しかし、ここで決して誤解してはならないのは、ここでいうアンプが増幅する音の変化とはギター弾きが想像する「歪んだ音」と「歪んでいない音」の2択ではないということである。
完全に同じ音のまま増幅するアンプは実際には存在せず。むしろ、意図的に良い音となるような工夫をこらしてアンプの回路は設計されているのである。
これが、アンプは楽器、と言われるゆえんである。(逆に、アンプを学術的な電気信号の増幅装置ととらえ、同じ音のまま増幅するのが良しとするアンプもある(例えばピュアオーディオのアンプはその傾向がある)。)

弾き方、ギター本体、アンプ(そしてスピーカーなど)はきってもきれない関係であり、それらすべてが合わさってエレキギターの音を形作る。


・音と弾き方と機材の関係

さて、良い音を出すためにはどのような弾き方と機材を選べばよいだろう。
これは難しい問題である。というのも、音楽の分野が違えば”正解”が異なるからである。
歪ませた音色でハードロックを弾くプレイヤーの弾き方や機材は、オーセンティックなジャズをプレイする人の弾き方と機材とは違ったものになる。

機材に関して言えば、積極的に歪ませたい前者は真空管アンプを好み、クリーンでピュアな音を出したい後者はソリッドステートアンプを好む人も多い。
ギターであれば前者がソリッドギター、後者がフルアコ・セミアコといった箱物というのが典型だろう。
そして弾き方に関しては、ハードロック畑のプレイヤーは強く・ダーティ(チョップを絡めたチョーキングなど)な弾き方をするのに対し、ジャズ屋はソフトで滑らかな弾き方をすることが多いだろう。
このように、もちろん卵が先か鶏が先かという問題を抱えるのであるが、それは別として、弾き方と機材は密接に関係しているのである。

それでは、弾き方と機材は密接に関係している、ということを認めることにしよう。
”良い機材”は”良い弾き方”を学習する助けになるだろうか?
あなたがもし伝統的なクラシック音楽の世界に傾倒する人間であれば、ためらわずYesというだろう。
良い機材を使えば、(意識するかしないかに関係なく)どのように弾けば良い音が鳴るのか知ることになるので上達する、というロジックである。

ギターについていえば、次のような説明ができるかもしれない。
上級者がセッティングをする際に、何の迷いもなくアンプやエフェクターのつまみを操作し、良い音を出す。
あるいはポンとギターを渡されたとして(アンプのつまみなどに一切触ることなく)、その人の良い音が出せる。
良い音を出すプレイヤーは良い音を”知って”いて、どのようにセッティングすれば、あるいはどのような弾き方をすればその音に近づくのか、そのすべを身に着けているのである。そして、そのすべを学ぶもとが良い機材(あるいは環境、他人の音でも学習の助けにはなるはずだから)ということである。


・上達のために必要な機材とは

ここから、積極的に歪ませた音で演奏するブルース・ロック系にかぎって具体的な機材の話に移ろう(あなたがもし正統派の、クラシックあるいは大衆音楽であればジャズを学ぶのであれば、先生や師匠がいるはずなのでこの章の話は無駄だろうから)。

ブルース・ロック系は一般論として、様々な良い機材に触れることが教育的と言えるだろう。
ギター本体に関して特に議論に挙がるのが、木材よりも、ピックアップに関するところである。というのもシングルコイルとハムバッカーでは良い音が全く異なり、それゆえ、良い弾き方も異なるのである。
それを理解するには、両方のギター(3シングルのストラトキャスター、2ハムのレスポールあるいはES-335がその典型)を弾くことが良いだろう。
いろいろなギターを弾く中で、どのような構造、木材(あるいは金属・プラスチックパーツ、そして塗装)が自分の好みなのか判断できるようになるだろう。
木材に関して言えば、良いとされる材が希少になっている関係でローズウッド、マホガニー、エボニー、そしてメイプル(フェンダー系のネック、レスポールのトップ材など、柔らかなメイプル材は派手な木目が出やすい)、については特に注意した方が良い。
これらの材を使用するギターは、カスタムショップ製といった高級ギターを検討した方が良いかもしれない。
機材の価格は、それがすべてではないにしろ、判断を助ける材料にはなるのである。

アンプに関しては、シンプルであればシンプルであるほど良いアンプとされる(ただし必ずしもの条件ではない、例えばDumble Overdrive Specialは極端なまでにシンプルというわけではない)。
マーシャルに関していえば、JTM45、1987x、1959SLPといったプレキシ系がそうだろう。
低ワットのアンプあるいはオールチューブの整流管をもつアンプ(JTM45)の飽和感から、ヘッドルームの大きな100 Wアンプ(1959SLP、整流部はソリッドステート)はまったくキャラクターが異なるのである。
さらには、フェンダー系、VOX系、そしてその派生として選択肢は多岐にわたる。
スピーカーに関しても、スタックとコンボ、そもそものスピーカーの種類によっても音は変化する。

このように掘り下げていけば、ピックアップの中でもどのような磁石や巻き数が良いのか(特にハムバッカーであれば非常に影響は大きい)、木材の木取は何が良いのかなど、エフェクター(特に歪に関しては真空管アンプと明確なキャラクターの違いがある)の選択、列挙すればきりがない無数の項目があなたを惑わせるだろう。
しかし、心にとめておかなければならないことは(たいていはその事実に目をつぶりたくなるのであるが)、機材を選ぶことも才能なのである。
逆説的に言えば、良い機材を選ぶことができるということは、良い音が出せるようになっているということかもしれない。

※コラム(自宅練習について)

良いギター、良いアンプ、良いスピーカーを用意できれば良いのですが、それらを準備できたからと言って、音を出せるか(特に歪ませるほど音を出せるか)とは別問題でしょう。
スタジオに毎日10時間入れる、という人であれば問題ないかもしれませんが、そうでない人のために以下いくつか選択肢を候補として挙げてみました。

1 小音量で練習する
2 アッテネーターの使用
3 リアクティブロード+キャビネットシミュレーターを利用してライン信号からヘッドホンなどでモニターする
4 (デジタル)アンプシミュレーターの使用

1は実際のところかなり練習になります。が、(当たり前ですが)十分歪みませんので、アンプの”おいしい”ところは使えません。

歪ませた音での練習は、2ー4が挙げられます。
2のアッテネーターの使用ですが、かなりうるさいので(そもそもアッテネーターはバンド演奏のバランスをとるために使用するのが普通ですし、大音量の歪みの音はスピーカーやキャビネットそして部屋の反響などの要因も含まれるので仮に音を小さくしたところでそこはシミュレートできない)、マスターボリューム付きのアンプの音が出せない環境ではまず無理でしょう。
そこで3ですが、これは近年かなり良くなり、お勧めです(特にアナログシミュレーターは非常に情報量が多いです。例えばFryetteのPL-1など。)。
4については、デジタル録音のソースとしてであれば実機と比較しても好みの問題レベルに良くなったのは事実で、音が出せない環境では良い代替案になると思います。しかし、リアルタイムで弾くには情報量が(まだ)少ないため、練習に使う観点だけでいえば最後の候補になると思います。参考としてKemper、Axe、Helixが有名どころでしょう。

最後にですが、「大音量に起因する聴力障害」にはくれぐれもお気を付けください。

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