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スタートアップのファイナンス

今回はスタートアップのファイナンスについて書きます。
私はスタートアップでの就業経験がないので、野球経験のない小学生のパ〇プロ必勝法、サッカー経験のない中学生のウ〇イレ談義のようなものですが、自身のアプトプット目的で書きます。誰かのお役に立てれば嬉しいです。

そもそもスタートアップとは

千差万別な定義が世間にありますが、ウェルスナビの柴山CEOが書いていた定義が個人的に一番しっくりきたので引用します。

スタートアップとは、(1)目先の利益ではなく長期的な企業価値の創造に向けて、(2)急成長を目指す、(3)創業間もない企業です。
https://newspicks.com/news/4685682?ref=search

スタートアップにとってのファイナンス①

ファイナンス=創業者以外からの資金調達とは限りません。実は第三者から資金調達をせずに、成長のための資金を得ることは可能です。つまり、自社が儲けた資金(内部留保)を再投資しつづけることで、小幅ではありますが着実に成長をしていく方法です。ブートストラップ・ファイナンスとも呼ばれます。ブートストラップ、つまり靴ひもを編み上げていくように、ワンステップずつ踏んでいくわけです。

London Business SchoolのJohn Mullins准教授は、ブートストラップ以外にもVCからの投資なしでスタートアップを成長させる方法を指南しています。

スタートアップにとってのファイナンス②

他方で、紙面をにぎわしたり、注目を浴びるスタートアップの多くは、第三者から資金調達を行っています。また、そのスタートアップの多くは、ベンチャーキャピタルなどからのエクイティファイナンスに頼ります。

では、なぜ第三者からの資金調達が必要で、さらにその多くがエクイティファイナンスによるものなのでしょうか?

なぜ第三者からの資金調達が必要か?

これは、スタートアップの収益構造と成長志向が主な理由です。

まず収益構造について説明します。
スタートアップの事業の多くは、いまの世にはない価値を提供しようとする、新しいプロダクトやビジネスモデルを採用します。そのため、試行錯誤している間に開発資金がかさんだり、いざプロダクトが完成しても売上がすぐには成長せず、目先の利益が出ないことが往々にしてあります。結果として、すぐに資金不足に陥ってしまいますので、自社以外・創業者以外から資金を調達する必要にかられます。

また冒頭の定義どおり、スタートアップは急成長を志向しています。
すぐに成長してスケールしないと、画期的なプロダクトやビジネスモデルも数年後には陳腐化しているリスクがあります。また、多くのプラットフォーマー事業に代表されるように、Winner takes allとなる事業領域もあり、急成長できないと単なる負け戦を挑む羽目になってしまうかもしれません。

なぜ第三者

なぜエクイティファイナンスが主流なのか?

これは、資金の出し手(お財布)側の都合が大きいです。スタートアップとしても、自社の事業リスクを理解せず、リスク許容度の違うお財布に手を付けると後々痛い目を見ることになります。

デットファイナンスの代表的な出し手である銀行は、私たち一般市民からの預金を企業に貸し付けることで儲けを得ています。そのため(一般市民のお金をハイリスクに晒すわけにはいかないので)銀行法による各種の制限を受け、基本的にはローリスク・ローリターンのビジネスモデルです。ほとんど倒産の可能性がない企業に融資したり、少しでも危ない企業を相手にするときは担保や保証によって少しでも「取りっぱぐれ」を防ごうとします。
スタートアップの多くは、新規性の高い事業に取り組んでおり、赤字傾向であることから、倒産のリスクは高く、銀行から無尽蔵に借りるのはハードルが高いと言わざるを得ません。レイターステージであれば、一定程度まで銀行借入を実施することはできるかもしれませんが、借りたお金は、決まった期限通りに返済する必要があるため、資金計画の自由度が落ちる点は注意が必要です。

ちなみに、日本国内の私募債マーケットは依然として小さく(個人的には、特にスタートアップ向けに対しては、大きくすべきとも思いませんが)、通常の社債は外部格付を取得しない限り、発行できないため、デットファイナンスにおける社債の説明は割愛します。

他方、スタートアップ界隈でのエクイティファイナンスの代表的な出し手であるVC(Venture Capital)は、得意なステージ(シード、アーリー、レイターなど)は分かれますが、典型的なハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルを採用しています。大半の投資先が倒産したり、不調に終わることは覚悟の上、数発のホームランさえ当てられればOKという構えです。

利息制限法もあり、デットファイナンスでは数倍以上のリターンを上げることは不可能であるため、VCは、出資(エクイティファイナンス)により、投資先のスタートアップの株主=オーナーの一員になります。つまり、VCの利益の源泉は、割安に取得した株式の価値を高め(=投資先のスタートアップの企業価値向上を手伝い)、どこかのタイミングで、高値で売り抜けることとなります。

VCはオーナーの一員でもあるため、起業家としては頼りがいのあるパートナーたりえます。特に、シリアルアントレプレナーの少ない日本においては、経験豊かなVCの協力はよきガイドとなるでしょう。いくつかの注意点はありますが...。

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なぜスタートアップは上場を目指すのか?①

上場は本来ファイナンスの手段であり、目的ではないはずなのですが、実はVCから出資を受け入れた時点で、スタートアップはほぼ自動的に上場を目指すことになります。

というのも、ほとんどのVCはファンド形式をとっており、スタートアップに投資した資金は、実はVC自体が、どこかの投資家から期限付きで運用を任された資金だからです。通常ファンドは10年程度で、預かった資金にリターンをつけて分配する責任がありますので、この期限までに、VCはスタートアップに投資したリターンを回収する必要があります。スタートアップが著しく成長し、数年の配当だけで数十倍のリターンをVCに提供できるのであれば、上場しなくても良いのですが、なかなか想定できない事象かと思います。そのため、上場することによって(=株式を誰でも売り買いできる状態にすることによって)、VCへエグジット機会を提供することになります。

なお、VCに対して、他のエグジット方法を提供できるのであれば、上場は必須ではありませんが、M&Aなどによるエグジットはベストな買い手を探す必要もあり、上場が現実的な路線となることが多いようです。

なぜ上場①

なぜスタートアップは上場を目指すのか?②

上では、スタートアップの投資家であるVCの立場から、なぜスタートアップに上場させたいのかを説明しましたが、当然スタートアップ側にも上場するメリットがあります。

資金調達の円滑化・多様化
上場会社は、取引所市場における株式の流動性を背景に、発行市場において、公募による時価発行増資、新株予約権・新株予約権付社債の発行など、直接金融の道が開かれ、資金調達能力が増大することにより、成長のための資金調達の円滑化・多様化を図ることができます。
出所:日本証券取引所グループ「上場について」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/ipo-benefits/index.html

一つの大きなメリットは、資金調達能力の拡大です。もしスタートアップが速やかにスケールしていきたい場合で、かつ上場が可能なくらいビジネス上の成功を収めた(あるいは収めつつある)のであれば、エクイティファイナンスとデットファイナンスをバランス良く機動的に用いていく必要があります。

エクイティファイナンスといっても、この段階では上に書いたVCからの出資ではなく、上場による新規公開(IPO)やその後の公募増資(PO)といった直接金融による調達が進むことになります。また上場していると、①その企業の時価総額が分かること、②その企業の株式を容易に売買できる(流動性がある)ことから、資本提携といったパートナリングも検討できるようになります。

なお、ビジネスモデルにもよりますが、上場するとデットファイナンスの選択肢も格段に広がる可能性があります。というのも、デットファイナンスの出し手としても、上場企業であれば、①比較的情報開示やガバナンスがしっかりしている、②非上場企業よりエクイティファイナンスの選択肢が多いといった長所があり、検討がしやすいからです。

なぜスタートアップは上場を目指すのか?③

他にも役員や従業員に対して、ストックオプションを付与している場合も、上場を目指す必要性がでてきます。

スタートアップで、優秀な役員や従業員を新規に採用しようとするとき、労働市場における価値が高い人材であるほど、役員報酬・給与といった待遇面がネックなる場合があります。あるいは、現役員や従業員の優れたパフォーマンスに応えたくても、昇給や賞与の元手がない場合もあります。こういったケースで有用なのが、ストックオプションです。

ただ問題は、ストックオプションを持っていたとしても、その権利行使を行ったあと、株式売却まで行えないとすると、(経営権の取得を目指していた人でない限り)むしろ士気が低下しかねません。

とりわけ、昨今のスタートアップで多く用いられる「税制適格ストックオプション」は、その権利行使が可能な期間に制限(最長で決議後10年間)があるため、この期間中に上場して、株式売却まで行えるという期待感がないと、有能な人材を引き留めるのは難しいでしょう。

まとめ

以上、簡単ですがスタートアップのファイナンスをまとめました。また機会があれば、より細かい段階ごとで解説したいです。


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