調査

現場からみた「調査」

広告代理店に勤めていると、よく調査を行う。様々な調査を行うが、基本的には何か伝えたいことの裏づけの定量として調査を行う。
例えば、新商品のやわらか食パンのプロモーションがあったとして、10代~40代の男女に朝食に関する調査を行い、「20代~30代の子供がいる女性が週にパンを購入する頻度が高い!」みたいなものを導き、じゃあサンプリングキャンペーンは若い世代が多い市町村のスーパーでやろう!みたいなもの決めたりする。(あくまで上記は例なので、なんの裏付けもないが。
そんな調査だが、現場ではどのように使われているだろうか。

1.調査結果の数字はいじってますか?

ここは正直気になるところだろう。あくまで、私が見てきた領域内で、という話だが、答えとしてはNoだ。現場でも決して調査結果の数字はいじらない。確かに、少しいじったほうが、提案する文脈に確証がでる場合がある。
ただし、事実を捻じ曲げて行ったプロモーションは決して良いものにはならない。それはどこの広告代理店も知っているし、どこの広告代理店も調査結果はいじっていないだろう。おそらく。

2.調査から出されたインサイト

プロモーションのターゲットを定める際に、ターゲットの心情「インサイト」を導き出すケースが多い。
冒頭の例に沿うと、20代の子供がいる女性が何を思っているか、何を考えているかというものを導き、欲しているものや行動を理解することはプロモーション戦略上非常に重要となる。そのため、調査のなかにも「どういうときにパンを食べたくなりますか」や「朝食にパンを食べ始めたきっかけを教えてください」などの設問を盛り込んだりして、消費者の心情を解析したりする。しかし、調査からでてきた内容を纏めて、「20代の子供がいる女性は朝食を早く簡単に済ませたいというインサイトがある!」と発表した時点で、そのインサイトは平均的になり、平均的なインサイトからは効果的なアイデアは導かれない。「そーだよねー」という声が会議室に響くのである。

3.そうだよねーのインサイトと調査

そもそもインサイトとは消費者本人すら自覚していないような欲求や思考を指す。そんなものを「以下から選べ」形式の調査で導けるわけがないのだ。
広告代理店が良く使う、「消費者に対する調査を行い、インサイトを導きました。」は意味がないとは言わないが、意味がないのだ。
インサイトを導くには消費者一人一人に耳を傾け、しっかりとその心情を紐解く繊細な作業が必要だ。

4.現場からみた調査

調査から導き出すべきはおおよその方向性であって、プロモーションの回答としてはならない。調査参加者が選ぶ回答の選択肢はそもそも設問側が決めているため、バイアスがかかっている。広告代理店のほとんどは調査結果に対しての不正は決してしていないだろう。が、彼らも彼らで望むべき回答結果を持っているため、知らぬ間に調査の設問や回答にその"インサイト"が落ちていく。そこから導き出されたものは、果たして調査結果なのかどうなのか...
私も広告代理店の人間として、よりよいプロモーションを行うためにも、調査には細心の注意を行っていこう。

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