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【とほほ】パソコンの沼とマイケルとジョン💻

「うそでしょ?」

パソコンにあったメールのアドレス帳が、突然消えた。

金曜日までは普通に使えていた。
土曜の朝、
メールを送ろうとメールの〈新しいメール〉〈宛先〉をクリック。

無。なんもない。真っ白!!

 

待て待て、慌てちゃだめ。

えっと、えっと。
ソフトウエア会社のホームページだよね、まず。


電話やメールで問い合わせるサービスは、――ない。

ないの??

基本、AIで検索する方式だけのよう。

あっ、有料で電話対応してくれるサービスはある。
年間約一万二千円。うーん。
そんなに頻繁に問い合わせなんてしないだろうし……。

そうだ、
トラブルの解決策をネットにあげてくれている人って、絶対いるはず。

「メール アドレス帳 消えた」で検索。

やっぱり。

同じようなことに遭遇している人がいた。
そしてその解決策を答えてくれている人もいる。

ちょっと安心。

と思っていたが、どれも自分の事案と微妙に違う。
探しまくるがあてはまるものがない。

ソフトウエア会社の〈よくある質問〉的なところにも何度も行きつく。
ぐるぐる、ぐるぐる。
ネット内を探しまくる作業がひたすら続く。

そして、見つけた!
チャットでの問い合わせ。
しかも、ソフトウエア会社の。

なんだ、あるんだ。よかった。

でも、これもAIかもしれない。

とにかくやってみよう。
で、こちらの状況を書き込んだ。
突然メールのアドレス帳が消えたと。


「それはお困りでしょう。私はあなたの状況を理解します」

おお、AIじゃなかった。生身の人間。たぶん。

チャットで対応してくれている人の名前はMichaelマイケル。
へえ、外国の人なんだね。

「私にはあなたを助けるいくつかの手段があります」

自動翻訳機を使っているからか日本語が若干ぎこちない。

マイケルはまずこちらの状況を説明してくれという。
なぜこうなってしまったのか私にも分からない。
でも、一生懸命頭を巡らせる。
考えられる原因と、解決するために今までしていたことを伝えた。

普通に使えていた金曜日からなにか更新をしたのかと訊かれた。
「自動更新したかもしれません。しかし、憶えていません」
翻訳しやすいようになるべく簡潔に打ち込む。

「私にはあなたを助けるいくつかの手段があります」
マイケルは先ほどと同じことを言った。

それから、マイケルに言われるままにいろいろ試みた。


「アドレス帳は復活しましたか?」
「いえ、復活していません」

ひとつが完了するたびにその繰り返しだった。
何度かそのやりとりの後、マイケルは次の指示をだす前に、チャットが切断した時のためにと十ケタの数字を記録しておくようにと言った。


なにかやるんだね。大きいこと。


そして、次の作業で、パソコンがシャットダウンした。
再び立ち上がったパソコンの画面には、ぐるぐると回る例のマークと進行状況十二パーセントの文字。
パソコンの前でじっと待ちつづけたが、なかなか進まない。

その間に、干してあった洗濯物を取り込もう。
洗濯物を畳み、収納に仕舞う。確認。

まだ、進行状況は三十二パーセント。

まだかかるな、これは。

ベッドのシーツをメイキングしてピローカバーを取り付ける。確認。

まだ三十九パーセント。

こりゃ、一時間以上かかる。

数時間後、やっといつもの画面になった。
当然、チャット画面はない。
えーっと、さっきはどうやってたどり着いたんだっけ。

で、また探すことになった。あほぽんな私。


ふう、見つけました、チャットの入口。

どうすればいいかわからないので、入力スペースにマイケルとやり取りしてたと記し、控えておいた十ケタの数字を入力。

待つ。


再びチャットが立ち上がった。今までのやり取りも記されている。
でも、マイケルじゃない。

名前はJohnジョン。

「私は、経緯を理解しています」

私は、アドレス帳を確認したが消えたままだと告げた。

「報告をありがとう」




ん? 

そのあと、無反応。
あれ? 待っていてもいいのかな?

んーっ。



「これから、どうすればいいでしょう」
こらえきれずに聞いてみる。

そのあと、ジョンにも様々な指示を受けた。
その都度やってみる。

でも、まったくだめ。



「私は、あなたを応援しています」

えー、ジョン、
それってまさかとは思うけど、お別れの言葉?

最後らしきミッション。


Enterキーを打つのを一瞬ためらったが、仕方ない。

Enter、ポチッ。
 
そして、また画面が消えて、ぐるぐるマークと進行状況の文字。

約一時間後に立ち上がったパソコンでアドレス帳を確認。

やはり、ない……。
 


もう、これは沼だわ。


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